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泣いて、病んで、でも笑って
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ルポ・エッセイ
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超絶ラップの真実

『泣いて、病んで、でも笑って』
[著]今井メロ [発行]_双葉社


読了目安時間:3分
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 二〇〇六年一月一〇日、トリノオリンピックの壮行セレモニーが六本木ヒルズで行なわれた。その場で私がラップを披露したことを覚えている人も多いんじゃないかと思う。



 1、2、3、4 ガンガン ズンズン グイグイ上昇


 5、6、7、8 毎回 ビッグキック Check Yeah


 夢に描いたショータイム デカイ理想は夢じゃない


 スタート前の深呼吸 パイプショーでmaking making dream


 跳ね上がれ舞い上がれ 魔法のジュータン ボードに変えて


 フロント・バッグとかっ飛ばす インディ・メソッド・720


 戦場・炎上・技・特上 燃えた瞳が物語る


 強い味方がmellowな売り 夢に向かってフルパワー


 あの頃夢見描いた世界は 今この手の中に


 夢・感動・ファンタジー My dream トリノオリンピック



『夢』と題された、この曲を大勢の人の前で振り付けを交えて熱唱した当時一八歳の私の姿は、マスコミでも大きく取り上げられた。NHKのニュースにまで映像が流され、「オリンピックへの思いを自作のラップに込めた今井メロ選手」という紹介のされ方をした。別のところでは、「歌唱力バツグン」とお()めの言葉ももらったし、なんだかよくわからないけど、「超絶ラップ」だの「メロラップ」だのと言われて話題になっていたようだ。

「今井メロっていったい何者!?


 スポーツに興味のない人でも、壮行セレモニーでラップを歌う私の姿をテレビで観て、不思議に思ったんじゃないのかな……。


 その意味では、周囲の大人たちの思惑(・・・・・・・)は当たったのだ。あの場でラップを披露したことで、私の、メディアへの露出も増えて注目度が高まったのだから。



 実は、あのパフォーマンスは私の意思なんかじゃなかった。


 もちろん、ラップの歌詞は自作じゃないし、自分でチョイスしたものでもない。


 その前年に大阪市内のライブハウスで一度披露した曲を、「壮行セレモニーでも歌えば?」と周囲の大人たちから言われて従っただけなのだ。「歌詞が寒い」と書いた週刊誌もあるけど、私は歌詞の意味なんか、何も考えていなかった。


 無理矢理やらされたのか? うーん、そうだとは言えない。

「歌えば、ルイ・ヴィトンのバッグと五〇万円あげる」


 スポンサー関係の人など、私を取り巻く周囲の大人たちから、目の前にニンジン(・・・・)をぶら下げられ、それ欲しさに私は提案を受け入れたのだ。


 今にして思うと、ホントに単純、あの頃の私は子供だった……。

「この場でいきなりラップなんて、なんだかなぁ……」


 そんな思いはあったけど、イヤイヤ歌ったというわけでもない。かといって、心底ノリノリだったわけでもない。特別な感情はなかった。淡々としていた、という表現がしっくりくるかもしれない。


 歌い終えたあとは、「これでヴィトンのバッグは私のもの」というくらいの気持ちしかなかった。だから、ラップを披露したことに対する世の中の過剰な反応が私の目には不思議に映ったほどだ。


 ちなみに、そのとき貰ったヴィトンのバッグは、今、私の手元にはない。

「え――っ!! 何これ?」


 貰ったバッグをひと目見て、私は衝撃を受けた。ヴィトンというからにはモノグラムを想像していたのに、オッサンっぽいっていうの? 十代の女の子が持つにはあまりにもカワイくない地味なバッグだった。少なくとも、私には絶対持てないと思った。

「これ、()らんわ」


 ろくに見ることもなく、母にあげてしまった。



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