読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン

犬耳書店はRenta!へ統合いたします

(2021/9/29 UP)

犬耳書店は、姉妹店のRenta!(レンタ)へ統合いたします。
詳しくはこちらでご確認いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

0
-1
kiji
0
1
1076111
0
泣いて、病んで、でも笑って
2
0
6
0
0
0
0
ルポ・エッセイ
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
あの日の悪夢

『泣いて、病んで、でも笑って』
[著]今井メロ [発行]_双葉社


読了目安時間:3分
この記事が役に立った
6
| |
文字サイズ

「いやっ―――――――――――――――!!


 私は思い切り叫んで逃げようとしたけれど、体を押さえつけられて自由がきかない。

「やめて――っ!!

「助けて――っ!!


 必死に叫んでいるつもりなのに、私の声は恐怖に引きつって言葉にならない。金縛りにあったときのように、「う、う、う……」といううめき声にしかならなかった。


 何度も殴られ、蹴られ、私の意識は遠のきつつあった。


 ぐったりして何も抵抗できない。その私の上に、何度か男が覆いかぶさってきたことをぼんやりと覚えている。


「ちょっと話があるんやけど」


 トレーニングをこっそり抜け出して、家の近所の駄菓子屋にジュースか何かを買いにいったとき、高校生らしき三人組の男子から声を掛けられた。まだオリンピックを目指し、父のもとでトレーニングに明け暮れていた、十七歳のある日のことだ。

「うわっ、あいつらや」


 三人の顔には見覚えがあった。どこの誰かは知らないが、その二、三日前、私はそいつらに街でなぜかメンチを切られていたのだ。

「何?」


 あまり関わりたくないと思いながらも聞き返すと、彼らは、私に告白したい男の子がいて近くの小学校で待っているから、と言った。


 ――告白したいって、いったい誰やろ?


 ちょっとだけ期待してしまった私は、彼らのあとをついていった……。


 ボコッ!


 学校の敷地に入るなり、三人のうちの誰かにいきなり頭を殴られた。驚きと恐怖でひるんだ隙に、ズルズルと体を引きずられ、どこかに連れ込まれてしまった。


 そこから先の記憶は、ない。



 気がつくと、私は、膨らんだポリ袋が並ぶ小屋の中に横たわっていた。そこは校庭の片隅のゴミ置き場だった。この場所で悪夢が起こったのかどうかはわからない。ただ、ゴミの()えた匂いとは別に、ツンと鼻をつくようなにおいがした記憶がある。あとから思うと、あれは精液のにおいだったのかもしれない……。


 そのときの私は(はん)()状態だった。あの日はトレーニングウェアを身につけていたのだけれど、トップスのほうはそのまま、ボトムスは下着とともに半分脱げかかっている。乱暴されて伸びたトップスのお腹のあたりには靴の足跡がついていた。

「なんで……」


 深いため息をついたあと、ふと我に帰った私は、急いで立ち上がって服を整えた。空を見ると、夕闇が迫っていた。

「早く帰らないと怒られる」


 こんなときでさえ、私はトレーニングのことを考えたのだった。



この記事は役に立ちましたか?

役に立った
6
残り:0文字/本文:1006文字
この記事を買った人はこれも買っています
      この記事を収録している本
      この本で最も売れている記事
      レビューを書くレビューを書く

      レビューを書いてポイントゲット!【詳細はこちら】

      この本の目次