『泣いて、病んで、でも笑って』
[著]今井メロ
[発行]_双葉社
ホストクラブに通い詰めたおよそ一年間の最後のほう、私はひとりのホスト君をよく指名するようになった。
ホストが甘い言葉を囁くのは接客の一環だとか、どうせ騙されるに決まってるとか、よく言われるけれど、私だってそれくらいのことはわかっていた。
「どうせ遊びだってわかってるよ」
ホスト君から、「好きだよ」なんて言われても、「所詮は疑似恋愛」と自分が傷つかないように、私は予防線を張っていた。