読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン
0
-1
kiji
0
1
1081663
0
コマ大数学科特別集中講座
2
0
0
0
0
0
0
エンタメ
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
まえがき

『コマ大数学科特別集中講座』
[著]ビートたけし [著] 竹内薫 [発行]扶桑社


読了目安時間:5分
この記事が役に立った
0
| |
文字サイズ




 おいらが数学好きだって言うと、昔ならきっと笑われてたよ。ギャグじゃねえかって。

 それが業界で長くやってきて、教育委員会なんてタイトルのついたバラエティなんかやったり、自分の番組で数学を取り上げてるうちに、いつしか「数学好きのビートたけし」ってのが知られるようになった。

 別に数学好きだから特に知的だとか頭がいいっていうのはないと思うんだ。おいらの場合、ヒマなときに数学の問題を解いたりして遊ぶのが好きだっつうだけで、ただのヒマツブシなんだな。別に何かを生み出してるわけじゃない。まぁ、それで『コマ大数学科』なんて番組を作っちゃったってのが、ほかの人間と違うところっていえば言えるかな。

 おいらはガキのころから算数とか理科が好きだったね。よく夜空の星を見上げたりして、宇宙のことなんかを考えてた。宇宙や天文学が好きだなんていうと、全ての科学は疑問から生まれるなんてわけでもないんだけれども……。あの星は何万光年離れた場所にある、とか「ホントかな。誰も行ったことねえだろ」なんて疑いながら眺めてるんだ。

 たとえば10万光年っていうと、光の速度で10万年の距離だ。光の速度は音速の約90万倍、マッハ90万だよ。宇宙なんかの真空を進む光の速度は毎秒約30万キロメートル。そんなスピードでも10万年かかる。

 宇宙のスケールで考えると、おいらたちの脳の中のことなんてのは一瞬一瞬の過去のできごとなわけだ。自分の頭の中がホントに現実に起きてることかなんてのも疑問に思ったりして。そう考えると全てがインチキ臭いんだけど、数学をやってると少しは安心できるのと同時に自分の存在の疑わしさも感じてくるね。

 光速が出てきたから少し脱線するとさ、アインシュタインの相対性理論のEmなんて式を見てると、おいらはもう素晴らしくて涙が出るね。これは「エネルギーEは質量mと光速cの二乗の積によって求められる」という式なんだな。

 どんな公式だって、自分でやってみて美しい式は必ず感動する。そうした美しい公式は、いい絵みたいに人を感動させるんだな。

 疑わしいって話にもどると、たとえば日本の海岸線の長さってのが有名なんだけど、どこまで細かく調べていくかによって海岸線の長さってのは変わっていく。オオザッパな地図だと省略しちゃうから、極端なものだと単なる方形が組み合わされたものになってる。そんな地図だと短いんだけど、当然、海岸線ってのは複雑に入り組んでるんで、計る物差しをじゃんじゃん細かくしていくと海岸線もじゃんじゃん長くなっていくわけだ。

 つまり、なにかを計るとき、その物差しによって値が変わってくる。こうしたことを数学ではフラクタル理論とか言うんだけど、おいらはバイクで事故ったあとに『フラクタル』ってタイトルの映画を撮ろうと思ったことがある。

 それはどんなストーリーかっていうと、ある男があるきっかけで事件を起こすんだけど、それは夢で、夢から醒めたら再びそのきっかけが起きて事件を起こす。そいで、また目覚めたら夢で、そこからまたもう一度同じ事件を起こす……。細かいものが集まって一つの映画になるというね。

 科学ってのは、けっこういい加減だったり誤魔化したり、ホントはよくわかんないことをもっともらしく理論にしてることが多い。だけど、数学の場合はさっきの相対性理論の式じゃないんだけど、わりとキレイで美しい世界に帰結するんだな。

 この本の中でも、こうした美しい公式とか定理ってのが、もともと宇宙に存在していて人間がそれを「発見」したのか、それとも単に人間が「発明」したのかって話が出てくる。

 おいらはよくわかんねえんだけど、映画を撮っていると偶然うまく撮れたりすることがあったりして、どこかに自分の意思とは無関係の存在を感じちゃうんだな。

 たとえば、おいらの場合、いろんな事件とか事故を起こしてきたんだけど、いつの間にか業界に復帰して仕事してたりする。おいらの意思というよりは、誰かにそうさせられているように感じることがあったりして……。漫才をやってても、メチャクチャおもしろいことをしゃべったあとで舞台から下りて、さっきのは果たして自分の頭で考えて自分の口から言葉が出てきたものかどうかって実感がなかったこともよくあるんでね。

 それがいったい何なのか、よくわかんないんだけど、数学をやってると「これは人間じゃない誰かが、あらかじめ用意しておいたもんじゃないか」って思わざるを得ない公式や定理ってのが出てくるんだな。

 おいらはラマヌジャンみたいな天才数学者じゃないんで、新しい公式を発見するのか発明するのかわからないけど、そんなことはできない。ただ、おもしろくて楽しいから問題を解いてる。問題を解いてる間は、少なくとも無心で一生懸命だ。
『コマ大数学科』は、数学好きの連中がおもしろがって見てることもあるんだろうけど、そんな真剣な人間の姿をおもしろがって見てるやつもいるんじゃねえかって思うんだよね。
ビートたけし
この記事は役に立ちましたか?

役に立った
0
残り:0文字/本文:2042文字
      この記事を収録している本
      レビューを書くレビューを書く
      この本の目次