『カジノ解体新書 (森巣博 ギャンブル叢書1)』
[著]森巣博
[発行]扶桑社
カジノを含む統合リゾート(IR)型施設を解禁するための法案の成立が遅れている。
昨2014年の臨時国会では廃案となってしまったし、また2015年1月から始まった通常国会では、再上程は予定されているものの、その成立が危ぶまれているそうだ(ロイター/2014年11月5日)。
いわゆる先進国(OECD加盟国)のなかで、ゲーム賭博が合法化されていないのは、アイルランドと日本のみ。
ただしノルウェイには、いかなる種類のゲーム賭博も合法だが、それを商業施設で開帳してはならない、とするちょっと特殊な禁止法がある。
なぜアイルランドと日本では、ゲーム賭博が非合法とされてきたのか?
アイルランドの場合は、競馬産業保護のため、という国民的合意が成立している。旧宗主国である英国を、高額賞金の懸った競馬レースで打ち負かすのだ。そのために、ゲーム賭博は禁止して、合法ギャンブルは競馬中心のレース産業のみに集中させた。
アイルランドは人口500万人にも満たない小国である。それにもかかわらず、サラブレッド生産駒数は、ヨーロッパで第1位。英国ダービーを6回も制したヴィンセント・オブライエンを筆頭に、数多くの名調教師を生んだのは、たまたま幸運だったからではない。そういう国家的政策に裏付けられていたからである。
アイルランド国民が持つ植民地時代の歴史的怨念が、ゲーム賭博を合法化することを妨げているのかもしれないな。
すると、ゲーム賭博は違法で、かつその禁止理由がよくわからない先進国は、堂々日本のみ。
いや、先進国間だけで比較するのは、片落ちかもしれない。
現在、国連加盟約200か国のうち130か国以上で、ゲーム賭博は合法化されている。ところが、日本ではゲーム賭博の場、すなわちカジノは、刑法で厳しく取り締まられる。
再び、なぜか? なぜなんだ?
日本国民はバカだから、か。
昨今の政治的経済的、そして文化的社会的状況を鑑みれば、それもあながち否定できない説かもしれないのだけれど(笑)。
しかしわたしは、そう思わない。ええ、思いませんとも。
カジノを合法化している130か国以上の国民たちと同程度には、日本国には頭のいい人も悪い人もいる、と考える。
であるなら、日本でカジノが合法化されてこなかったのは、他になんらかの理由があったからではなかろうか?
第1部は、カジノとは何か、それを禁止する、あるいは解禁するとはどういうことなのか、いや、そもそも賭博とは何か、をきわめて私的・体験的に検証しようとする試みである。