ルポルタージュへの妄執の始まりは十余年前であった。新宿の紀伊國屋書店を漫然とうろついていた私の目に一冊の本がふと目にとまった。
竹中労『決定版 ルポライター事始』
確か、いつか読んだはずだが。曖昧な記憶を辿りながらページをめくった私は、その最初の数行に度肝を抜かれた。
モトシンカカランヌー、……という言葉が沖縄にある。
資本のいらない商売、娼婦・やくざ・泥棒のことだ。顔をしかめるむきもあるだろうが、売文という職業もその同類だと、私は思っている。
定価760円+税の文庫本をレジに持っていった私は、そのまま会社へは戻らず、その日一日をかけて何度も読み返した。