日本ではあまり言及されませんが、「中華民族」という民族はどこにも存在しません。中国は漢民族と五五の少数民族からなる「中華民族」が、古代から分割不能な国民であるとの公式見解をとっています。しかしこれは、多民族国家であるアメリカ国民を「アメリカ民族」と定義するようなもので、「中国に少数民族問題は存在しない」という立場からの虚構であり幻想にすぎません。
学術的にいえば、民族には絶対的な枠組みや定義というものはありません。例えば古代から一三世紀ごろまでなら、同じ価値観を持っていれば、宗教や言語、人種は問いません。例えば、匈奴の時代から満洲の時代までは、だいたい大きな一括りになっています。同じ価値観、生活様式なら、宗教や言語が違っても、みんな匈奴、みんな蒙古、みんな満洲という民族になるわけです。