『羊頭狗肉 のんだくれ時評65選』
[著]坪内祐三
[著] 福田和也
[発行]扶桑社
中国・昆明駅無差別テロ '14年3月1日に雲南省昆明市の駅広場や乗車券売り場で発生した事件。刃物を持った集団が次々と一般市民を襲撃し29人が死亡、143人が負傷する大惨事となった。中国政府はウイグル地区の独立派による犯行との声明を出した。
坪内 さっきまでアカデミー賞授賞式の生中継を観てたんだけど、衝撃的だったのはキム・ノヴァクがまだ元気だったこと。1933年生まれなんだね。彼女が主演だった『ピクニック』('55年)を子供の頃にテレビの『日曜洋画劇場』で観て、当時既に成熟した女性だったんだけど、まだ20歳そこそこだったのか、と。
福田 あれ、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』は賞獲った?
坪内 獲らなかった。
福田 そうか――でも、あれは大傑作ですよ。ワタクシ、2回観ちゃった。ついにスコセッシが復活したね。あと『ダラス・バイヤーズクラブ』はどう? HIVで余命30日と宣告された男が、アメリカでは認可されてない治療薬を探してメキシコに行って、無認可の薬を密輸する「ダラス・バイヤーズクラブ」を設立するって話。あれも、とってもいい映画だったけど。
坪内 それに主演してたマシュー・マコノヒーが主演男優賞を獲ったよ。マシュー・マコノヒーって、余命30日の男を演じるために20㎏くらい減量したじゃない? そういうわかりやすい役作りのほうが評価されやすいんだよね。ディカプリオも『J・エドガー』('11年)のとき体重を増やしたりしたんだけど、それでもアカデミー賞を獲れなかった。今回も受賞できなかった。ディカプリオって何やってもディカプリオなんだよ。でも、いいんだよね。『華麗なるギャツビー』も、映画自体は酷い出来だったけど、ディカプリオはよかった。
福田 ギャツビーは酷かった。ディカプリオが可哀想だったね。作品賞は何だった?
坪内 作品賞は『それでも夜は明ける』。受賞が決まった瞬間、興奮して舞台に上がったオジサンがいたのね。このなぎら健壱に似た人は誰だろうと思ったら、製作者でもあるブラッド・ピットだったわけ。すごいよ、あれは完全になぎら健壱だった。