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忠臣蔵にみる偽装離婚――大石良雄と妻りく

『日本夫婦げんか考』
[著]永井路子 [発行]ゴマブックス


読了目安時間:12分
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浮気の果ての一方的離婚?



 夫が酒を飲む。浮気をする。


 妻が何度文句を言っても聞きいれない。それどころか、

「うるせいやい、とっとと出てゆけ」


 お前の顔なんかみるのもいやだ、というようなことになり、ひともんちゃく起きる


 ――というのは、今もよくある事である。


 が、このセリフ、じつをいうと、今はめったに吐いてはならないらしい。うかつに囗をすべらせると、家庭裁判所にもちこまれてうるさい事になり、別れるにしても、かなりの慰藉料をふんだくられたりする。


 いや、慰藉料どころか、今の女性はかなり強くなったから、

「よくも言ったわね。ようし、それなら」


 などと寝首をかかれる恐れもなきにしもあらずである。


 そこへゆくと、昔の男は気楽なものだったらしい。飮む、打つ、買う――したい放題のことをしておいて、妻が文句でもつけようものなら、

「文句があるなら出てゆけ!」


 三下り半をつきつければ事がすんだといわれている。ちなみに、三下り半というのは、「今般そなたと離婚するから」といった文句を三行半に書いたからこういうのだそうである。


 ずいぶん女を馬鹿にした話だが、しかし、江戸時代については、それが一つの「常識」のようになっている。そして、この「常識」の上に立って、ドラマや物語を展開させているのである。


 例えば、有名な赤穂義士の一人、大石内蔵助良雄の場合がそれだ。良雄の主君。浅野内匠頭が、江戸城で吉良上野介に切りつけ、その責任をとらされて切腹、家は断絶し、その後、良雄を中心とする四十七人が吉良上野介を襲って復讐をとげるという話はあまりにも有名だが、このとき良雄は、復讐の意図をさとられないようにするため、京都の山科に閑居し、祇園で遊び呆けた、といわれている。


 妻のおりくは、正体なく酔いしれ、女と遊びくらす夫にほとほと愛想をつかす。すると良雄のほうも、

「もうお前の顔は見飽きた。とっとと出ていってくれ」


 と言い、簡単に離縁状をつきつけて、実家に帰らせてしまう。


 が、じつはこれは、罪を妻子に及ぼさないための良雄の計画であって、心の中では、ひそかに妻や子との別れに涙していた……というのが、おおかたの「忠臣蔵」の筋書である。

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