あなたは刑務所がどんなところか知っていますか?
当然、外からは高い塀に阻まれて、なかのようすを窺い知ることはできません。たまにテレビの特集などで囚人の暮らしぶりが紹介されていますが、刑務所は都合のいいところしか撮影させないし、受刑者の顔にもモザイクがかかったまま。
そこで本当は何が行なわれているのか、また囚人はどんな表情で毎日をすごしているのか、一般にはなかなか伝わってこないものです。
私は、ある事情(序章・参照)で人をひとり殺してしまい、懲役十五年の判決を受けました。
収容されたのは、悪名高い大阪刑務所四区、通称“殺人者の獄”。
四区に収容されているのは、殺人、強盗、強姦、放火など重大事件を起こした者ばかり。まさに刑務所のなかの刑務所でした。
そこで私が見たものは、シャバの常識では考えられないような奇妙な世界と、受刑者たちが織りなすリアルな人間ドラマでした。
たとえば、便所の匂いがする本当に“くさいメシ”や、トイレの水も勝手に流せない理不尽な規則、切腹してまで塀の外に出ようとした男、三角関係のもつれの末に自殺未遂をしたホモカップル……。
これらはすべて私がこの目で見て、この耳で聞いてきた実話です。あの塀のなかには、このような信じられない話がゴロゴロと転がっているのです。
この本では、人が逮捕され、やむなくムショ送りになってしまってから、刑務所での囚人生活、規則の実態、それにまつわる囚人たちの悲喜こもごもといったこと、さらには女子刑務所のようす、国家として隠しつづける死刑の実態、そして、刑期を終えて出獄し、シャバに出てからの実態までを詳しく紹介しました。
なかでもとくに知っていただきたいのは、刑務官による常軌を逸した囚人イジメです。
たしかに、シャバで法に触れるという悪事を働いた結果、ムショ送りになるわけですが、そこで行なわれていることは「法で人を更生させる」というよりも、「人が人をイジメる」というものでした。
刑務官が囚人に対して、なにかと因縁をつけて罵詈雑言を浴びせるのは当たり前。
目を開けただけで懲罰を打たれたり、その懲罰では、なんと自分の手でお尻も拭かせてもらえないこともあるのです。
家畜同然の扱いに、なかには精神的におかしくなってしまう囚人もいるほどでした。
長期刑を体験した受刑者は、この屈辱・暴言のイジメや人間的尊厳無視の規則がトラウマとなり、釈放後も、その後遺症に悩まされつづけます。
夜中にいきなり懲罰の夢を見てうなされたり、部屋の外に出るのを極端に怖がる元受刑者もいます。最近は「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」がちまたで話題になっていますが、刑務所がそれを生み出す原因にもなっているのです。
刑務所関係者はこの現状をよく認識し、ぜひとも刑務所の改革に努めてもらいたいものです。また私たちも、このような非人間的な刑務所生活を送らなくてすむように、犯罪に手を染めないことをふだんから心がけておく必要があります。
それでも万が一、思わぬことで刑務所送りになってしまったら……。
そのときは、無事に社会に復帰するために、三原則を肝に銘じておきましょう。これを忠実に守ることが、一刻でも早く仮釈放をもらってシャバに帰ることにつながるのです。