衣装箱に殺した女とナフタリンを入れて……
私は刑務所で他の囚人と必要以上に口をきかなかった。
原田と大橋の例もあるし、野瀬のようなチンコロもいる。まわりとうまくやるための最低限の会話があれば充分なのだ。
ところが、そんな私が話を聞いてみたいと思うほど興味をそそられた懲役がいた。所内で「殺した女を衣装箱に入れて持ち歩いた男」として知られていた風間だ。
私は会うたびに彼に事件の話をしてくれるよう頼んだ。最初は口が重かった風間も、やがてストレス解消のつもりか、少しずつ話してくれるようになった。
風間が幸子という女と知り合ったのは、京都のスナックだったという。三回通っただけで口説き落とし、すぐに同棲を始めたらしい。