『「未熟な夫」に、もうガマンしない!』
[著]山崎雅保
[発行]二見書房
プロローグ~あなたの夫の「未熟度」をチェック
日本の男はみな未熟?
「最近の女性は、仕事さえしていればよいと考える未熟な夫を、冷めた目でみるようになっています」と、ある女性から届いた手紙の中に書かれていました。
似たような思いを抱いている女性が、今では圧倒的多数になっているのを、カウンセリングという現場にいる私は知っています。あんな男といつまでも一緒にいられない、人生を棒にふりたくない。ついついそう思ってしまう妻たちが、今では多数派になってしまったと感じています。
たとえば講演会などで「私は間もなく“未熟な夫”をテーマにした本を書くつもりです」と投げかけると、会場は間違いなくドッと沸きます。会場には男性の姿もあるのですが、その男性たちですらいくらか複雑に表情をゆがめながら笑います。
男性一般が未熟であるというとらえ方。それがこの国の女性たちにとってはごく当たり前であり、男性たちの中にも同意せざるを得ない空気が漂っているのでしょう。男性である私にとってはいささか悔しいことですが、それが現実です。
妻と母親とを重ねてしまう男性の未熟さ。
(自分の母親代わりである)妻を奪われたと感じて、自分の子どもに嫉妬する男性の情けなさ。
女性たちはあそこでもここでも、その種の話題をやりとりしては「ウチだって同じよ」と笑いながらうなずき合っているのです。
許し受け入れても変わらない
一方で、古典的な教訓も、いまだにときどき聞こえてきます。
「未熟な夫を許し愛し、子どもを育てる気持ちで、夫のお母さんになってしまえばよいのです。すると夫が育って大人になる。そうすれば、あなたも幸せになれます」
私もかつては、そんなお説教めいた気持ちで妻たちにアドバイスしてしまった時期がありました。しかし、数多くの妻たちの嘆きを聞き続けているうちに、すっかり気が変わりました。
夫のお母さんのつもりで過ごせば夫が育つ? 大人になる?
そんなのウソだ! 今は断言します。
子どもなら、受容し甘えさせることで自立への土台が整う。これは、心理学的子育て論における大原則の一つです。
しかし未熟な夫は、許し受け入れ甘えさせたからといって、ほとんどの場合に成長してくれません。大人としての自覚を深める可能性は、ほぼありません。論理的には可能であるとしても、それ以前に妻たちが疲れ切ってしまうのがオチです。妻が疲れ切ってもなお、甘ったれ続けるのが未熟な夫です。
では、どうしたらよいのか。未熟な夫とどう向かい合ったらよいのか。
その問題を少しでも解き明かそうとするのが、本書の目的です。
妻がどのように対応したときに、未熟な夫が大人の男性へと踏み出し始めるのか。いくつもの実例を観察させてもらっているうちに、私は「なるほど、ツボはここだな」と実感できるようになりました。もちろん、そのツボについてもお伝えします。
あなたの夫の未熟度チェック
それでは、本論に入る前に、まずは「あなたの夫の未熟度」をチェックしておくことにしましょう。
以下の各項目をチェックし、該当項目の総数で判定します。
□ 彼は「親孝行」を何よりも大切なことだと考えている。
□ あなたが風邪などで寝ていても、彼はあなたの食事(も子どもの食事も)を作ってくれない。
□ 彼は、子どもとたわむれたり遊んだりをほとんどしない。遊ぶとしても過剰にからかうなどして泣かしてしまうことが多い。
□ あなたが一人で外出しようとすると、さまざまな理由をつけてやめさせたがる。押し切って外出すると、不機嫌になったり、その日の行動を逐一詮索したりする。
□ とくに理由がなくても、いつも不満げでイライラしている。
□ ドライブ中に渋滞にはまるときわめて不機嫌になり、同乗者に気をつかわせる。
□ オハヨウ、オヤスミなどの当たり前の挨拶言葉にまともな返事をしない。
□ 家事や子どもの世話の手助けを頼むと、不満げ。喜んで協力してくれることはない。
□ 妻のグチや相談事には、ほとんど聞く耳を持たない。
□ 家にいるときは、テレビ(ゲーム、ビデオ)とビール(お酒)だけを“親しい仲間”として過ごしている。
□ あなたを名前で呼ばず、いつでも「お母さん(またはママ)」に類する言葉で呼ぶ。
□ 何かというと、実母(彼の実家)のやり方や料理の味と、あなたのやり方や味を比較する。
□ 毎日のようにお酒をたくさん飲み、飲むにつれて不機嫌になる。
□ 「やっぱり女は」「これだから女は」などの女性蔑視の言葉が目立つ。
□ 自分の都合や状態を、言葉にしなくても察してくれて当たり前と思っている。
□ お金を稼ぐ仕事は、子育てや家事や生活の雑事よりも価値があると考えている。
□ あなたの料理、家事、子育てなどの能力をほめたことがない。
□ あなたと姑とのトラブルなどにおいては優柔不断、結局は妻であるあなたの味方に徹しない。
□ 外面はとてもいいが、家では横暴、または妻子への配慮のないマイペースで過ごしている。
□ 子どもが乳幼児期からずっと、妻抜きで子どもと過ごすことができない夫だ。
あなたの夫は、以上の二〇項目のうちのいくつに該当していたでしょう。
おそらく結果は極端に二分されるはずです。ほぼゼロに近いか、そうでなければ一〇項目以上になるでしょう。
自立レベルの高い夫は妻子に負担や不愉快を感じさせず、未熟な夫は生活の多くの場面で依存的であり甘ったれだからです。
●該当項目数がほぼゼロ
ゼロに近いなら、自立レベルの高い、成熟した男性であるとみてよいでしょう。だからといって、必ずしも夫婦関係がよいとは限らないかもしれません。しかし、父親としては合格点をつけられる夫である可能性大、です。
●該当項目数が一〇プラスマイナス三
該当項目が一〇プラスマイナス三くらいだとしたら、この国の現状においては、まずまず標準的な「未熟夫」だと思われます。その程度であれば、あなたがツボを押さえた接し方を重ねてゆくことで、大人の男性として成長してくれる可能性もないではありません。
捨てるにはもったいない、潜在的クオリティーの高い“素材”かもしれません。
●該当項目数が一五程度、またはそれ以上
該当項目が一五程度、またはそれ以上だったら、今後の努力は徒労に終わるかもしれません。夫は成長しないまま、あなただけが女性としての成熟を重ねてゆく未来が待っていると思ったほうがよさそうです。その先に待ち構えているのは、家庭内離婚、ぬれ落ち葉の夫、熟年離婚、定年離婚などでありがちです。
なお、心的・身体的暴力性をも勘案するなら、該当項目一〇以上では、DV(ドメスティックバイオレンス=夫婦間暴力のこと。モラルハラスメントも含む)の危険性も高まります。
チェックの結果はいかがだったでしょうか。
たとえ悲観的な判定(夫が成長する見込みが少ない)であっても、まずは本書をお読みになってみてください。夫はどうあれ、「自分自身が幸せになりたい」と望むならば、本書の内容がきっとお役に立ちます。
今のあなたは、夫との関係に悩んだり、無力感を抱いたりしている状態の中にあるかもしれません。
しかし、あなたには、そんな状況を変えていく力があるはずです。愛を交わし合う心満たされた日々を実現することができるはずです。そんな「自分への信頼感」をとり戻すためのヒントを、本書からくみとっていただけるなら、これに勝る喜びはありません。