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プロデュース入門―オリジナリティが壁を破る
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はじめに 「プロデュース力」なくして戦いには勝てない

『プロデュース入門―オリジナリティが壁を破る』
[著]平野暁臣 [発行]イースト・プレス


読了目安時間:6分
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プロデューサーが気になる時代


 「それ、誰がプロデュースしてるの?」「あっ、彼がプロデュースしてるんだ! 買ってみようかな」「あぁ、やっぱり彼がプロデューサーだと違うね」………。


 こんな会話がごく普通に交わされるようになった。


 映画、音楽、演劇、ゲーム……、ぼくたちはいま、さまざまなジャンルで「プロデュース」という言葉を当たり前のように使っている。いまや「アーティストは知らないけれど、プロデューサーの名前で買う」ことだって珍しくない。優れたプロデューサーの作品には固有のテイストがあるからだ。


 なにかが違う。独特の気配とでも言うほかないが、その「なにか」がぼくたちに働きかけてくる。揺るぎないオリジナリティと強烈なメッセージ。それが「クリエイティブ」と呼ばれるものの本質だ。


 スティーブン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス、クインシー・ジョーンズ、トミー・リピューマ……、一世を風靡した名プロデューサーを数え上げたらキリがない。彼らには例外なく特別な「なにか」がある。


 映画や音楽だけではない。モノであっても事情は同じだ。携帯音楽プレーヤーなら山ほどあるのに、i―Podだけが一人勝ちを続けているのはなぜか。ネットサービスとの連続性、優れたデザイン、先進的な操作性など、理由を探せば種々あるにせよ、結局のところi―Podだけが特別な存在感を放っていることに尽きる。きわだってクリエイティブなのである。


 i―Podにはスティーブ・ジョブスというプロデューサーの顔が見えている。ぼくたちの心をとらえているのは彼の“志”だ。これに比べれば、つくり手の顔が見えない国産のプレーヤーは似て非なるものというしかない。


プロデュースとは何か


 これからの時代、ものごとの価値を決めるのはクリエイティブであるかどうかだ。基本的には分野を問わない。ソフト産業やサービス産業はもとより、建設業や製造業だってそうだし、今後は医療や農業でさえそうなるだろう。


 ぼくたちはもう「安くて壊れない」だけでは満足できない。自らの生活信条や美意識を満たしてくれるもの、毎日の暮らしに上質の刺激を与えてくれるものでなければ欲しくない。豊かな時代に生まれ、さまざまな経験を積んできたのだから、当然なのだ。


 海外ツアーであれ、携帯電話であれ、なにかを選ぶときに一番大切なのは知的な刺激を与えてくれるかどうかだ。だからどんな企業も「新しいなにか」「他とは違うなにか」を生み出そうと血眼になる。クリエイティブでありたいと誰もが願う。


 だがもちろん、「こうすれば上手くいく」という汎用モデルはないし、「正解はこれだ」と教えてくれる人もいない。そもそも人と同じことをやっていたのではクリエイティブにはならないのだから、自ら手探りで見つけ出すほかないのだ。


 つまりは誰もがプロデューサーになり、自分なりの作法をもってものごとを組み立てていくしかない。多くの人はそれに気づいているし、実際に孤軍奮闘していることだろう。


 しかし、プロデュースとかプロデューサーというワードを日常的に使ってはいるものの、その実像が明快にイメージできない。プロデューサー的な役回りが期待されているのに、肝心な「プロデュースとはなにか」がよくわからない。そういう人が大半なのではないか。


 実はぼく自身がそうだった。この世界に飛び込んだ若い頃から、体系的にプロデュースというものを学びたいと願ってきた。精神論や断片的な経験談ではなく、構造として「プロデュースとはなにか」をひも解いてくれる本を探した。講演会やセミナーを見つければ迷わず足を運んだし、他ジャンルの資料を漁ったりもした。だが結局、いまに至るまでそうしたものには出合えないままだ。


プロデュースの決め技


 プロデュースとはなにか。プロデューサーの仕事とはいかなるものか。


 本書の狙いはその全体像を実感をもって掴み取ってもらうことにある。


 抽象論議ではイメージが湧かないし、本質も伝わらないだろう。そこで、かつてぼくが手掛けたプロジェクトをちょうど天井カメラでサッカーの試合を見るように俯瞰しながら話を進めていくことにしよう。


 取り上げるのは『六本木ヒルズアリーナ』と『Japan Design 2006, Bangkok』。この二つの仕事を通してプロデュースの実際を具体的に説明していきたいと思う。


 プロデュースには決まった作法がない。あくまでぼくの個人的な体験と方法を語るしかないのだが、日々やっていることを因数分解してみると、どうやら「10の仕事」を順に繰り出したり組み合わせたりしながらプロジェクトを率いているような気がする。抜け落ちている要素があるかもしれないし、学術的な検証に耐えられるわけでもないけれど、それがぼくの実感だ。




 構想――基幹アイデアを生み出す


 計画――具体的枠組みを組み立てる


 編制――実務執行体制をつくる


 解述――理念と構造を語る


 監修――実務作業を監修する


 予測――仕上がりと成果を予測する


 調整――予測結果に基づき調整する


 管理――進行をマネージメントする


 承認――重要事案を判断・承認する


 渉外――対外的な説明と折衝を行う



 プロデューサーはこれらの「決め技」を使いこなすことでプロジェクトを構築し、統括する。セクションⅠでは、六本木ヒルズアリーナのケースを例題にしながら、プロデューサーの「10の仕事」を考えていく。


 続くセクションⅡでは、ひとつの概念モデルを手掛かりに、プロデュースという営みを構造的に眺めてみよう。あまりにシンプルなモデルなので驚かれるかもしれないが、これがぼくの考えるプロデュースの本質である。


なぜ「プロデュース力」なのか


 プロデュースとは決して「特別な仕事をする人」の「特殊な技術」ではない。それどころか「プロデュース力」はいまや誰もが身につけるべき当たり前のスキルだ。職種にかかわらずそうだし、企業はもとより地域社会においてもなくてはならないものだと考えた方がいい。なぜなら、これからの競争社会を生き抜くためには、「新しい価値とそれを支える構造」を生み出さねばならないからだ。自らそのスキームを創出し、実際にそれを実行しなければ生き残れない。大企業から零細企業まで、県レベルから地元商店街に至るまで、この点においては変わりがない。要するに誰もがクリエイティブでなければならないのだ。


 新しい「なにか」は硬直した組織からは生まれない。これからはいかにして自らを変化させ続けられるかが組織運営の鍵になる。事業構造も「プロジェクト型」にシフトしていくだろう。


 元ソニーCEOの出井伸之氏は、かつて次のように述べていた。


 『企業はもっと厳しい競争にさらされることが必要で、その中から新しい雇用形態を考え出していくべきだ。プロジェクトの発足時に人材を集め、終われば解散するという形が今後広がるだろう。そこには年俸という概念もない』(日本経済新聞 2001年1230


 ソフトな関係で取り結ばれた組織や個人が1回限りのプロジェクトチームをつくって新しい価値を生み出していく。こんなプロジェクトオリエンテッドな形式と構造がこれからのビジネスの基本スタイルになることは間違いない。


 もはや他人事ではない。誰もがプロデュース力を発揮すべき時代なのである。









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