『俺のトーキョー!FC東京ラブストーリー』
[著]植田朝日
[発行]イースト・プレス
Jのほかのサポーターには負けない
じゃあ、そろそろ東京のゴール裏について書いていこうか!
東京のゴール裏って今も昔も、ほかのクラブとは違うと思うんだよね。本格的に東京の応援をはじめたのは1994年なんだけど、前にも書いたように1993年ぐらいからその動きははじまっている。さらに歴史をひも解くと、1992年にはじまった日本代表のサポーター集団・ウルトラスにその起源があるんだ。
東京のゴール裏のスタイルができるちょっと前から、日本中のサッカーファンは国立競技場に集まって、日本代表を応援していた。当然、日本中って言っても国立は東京にあるから、東京で暮らしてる奴が大部分だよね。そいつらはサポーターとして「日本サッカー界のために」戦っている。ほかのサッカー好きとはレベルが違うっていうプライドをもった奴が多かったんだよね。当時はスタジアムに来る人も少ないし、声を出して応援する人なんて、本当に一握りしかいなかった。今と違って、サッカーファン自体が少ない時代だったんだよ。
それが急にJリーグが開幕して大ブームでしょ。もちろん好きなクラブを見つけて応援する奴が多かった。一方では特定のクラブを応援しない奴、かたくなに代表しか観ない奴、海外しか興味がない奴もいたんだけど、そいつらはJリーグが盛り上がる中で「応援するクラブがない寂しさ」を感じていたと思う。特にJのクラブがない東京のサッカーファンは、置いてけぼりを食らった感じだよね。
だから、特に応援しているクラブがない東京の連中に「東京ガスを応援しない?」って言ったら、一発だったよね。世界のサッカーにも理解があったし、2部に相当するJFLってことにも理解があったからね。そもそも連中の多くは「ドーハの悲劇」を現地で経験していて、サポーターとしては尖ってる奴らだったんだよ。1994年のJFL開幕前に揃った核になるメンバーには、Jのクラブのサポーターにも負けない…って自負があったはずだよ。まぁ人数じゃまるで敵わないけどさ(笑)。
テーマは「逆ヴェルディ」
そして、ここでまた参考にさせてもらったのがヴェルディ。当時は「Jリーグと言えばヴェルディ」という時代。ほかのクラブのことは知らなくても、ヴェルディだけは、日本中の人が知っていたと思う。
でもそんな状況だから選手のスター化が進んじゃって、女子高生中心のミーハー層、追っかけ層でスタンドが一杯になってたんだ。「女の子だらけで応援しづらい…」っていう話を聞いたとき、ひらめいたんだ。俺たちのテーマは「逆ヴェルディ」だと。男だらけで女の子が入りにくい環境を作れば、男が男を呼ぶ熱い雰囲気ができるんじゃないか…って。
まあ、そんな深く考えなくても、当時の西が丘のゴール裏に来たい女の子なんて、皆無だったんだけどね(笑)。合計で2000人も入ってないスタジアムで、ガラガラのゴール裏に陣取っている、男ばかり20人の集団なんて、物好きな女の子でも近づけないよ。