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わたし発見の心理実験室
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生き方・教養
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不可思議な「自分の心」を探る心理テスト――前書き

『わたし発見の心理実験室』
[著]斎藤茂太 [発行] 河出書房新社


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 この世の中で、自分の心ほど不可思議なものはない。他人の心を()しはかるのも、そう簡単なことではないが、一定の研究と経験を積めば、何とか類推はできそうだ。だが、自分のこととなると、まったくといっていいほど、本心がどこにあるのかがつかめないのである。私なども、昨日はこう思っていたのに、今日はまた違った思いをもっているということもしばしばある。

 しかし、自分の心がわからないと、いつまでも嘆いてばかりはいられない。現実は(あわ)ただしく流れていくのだし、人はこちらが成長するまで立ち止まって待っていてくれるわけではない。

 ならば、できるだけ早めに自分で自分の心をつかむことが、この人生学校をよりよく生きるためには必要なのではないだろうか。

 ということで、『わたし発見の心理実験室』と題する本書が生まれた。この本には、自分を発見するためのさまざまなテストが紹介されている。「本当の自分がわかる」「自分に秘められた魅力がわかる」「自分の恋愛・結婚がわかる」「人からみた自分がわかる」「自分の将来がわかる」など多岐(たき)にわたっている。

 人間の心というものは、表面からはみえないところにある。ちょうど氷山のように、表に出ている姿は、ほんのわずかな部分でしかなく、大部分がいわば闇のなかや水面下に隠されている。その水面下に隠されている部分は、自分であれ他人であれ、容易にうかがい知れないわけである。

 だが、幸いなことに、人間の知恵は、水面から出た部分だけをみて、その下にあるものを類推できる力をもっている。洋の東西を問わず精神医学者、心理学者によるその方面のすぐれた研究も報告されている。

 それらをふまえて、なりたい自分になるため、実りある人生を歩むため、さまざまな心の鑑別法のノウハウを、読んで楽しく役に立つかたちで、できるだけみなさんにお伝えしようというのが、本書のねらいである。

 だが、それでもなお人の心は難しい。

 先年、ある会議に出席したことがあった。その際、ある国の若い学者があまりに慇懃無礼(いんぎんぶれい)で、横柄でもあったので、いささかどうかと思うことがあった。ところが、そのあとのレセプションで、その学者が、私のそばに寄ってきて、「先生は、私の父と同い年です」と親しげに声をかけてきた。ちょうど私は、以前にその学者が住んでいる都市の上を飛行機で通過したことがあったので、思わず話に花が咲いた。彼も、会議の席上とはうってかわって、終始にこやかであり、人を()らさないユーモアに満ちた好人物であった。まるで、さきほどの人間とは別人のようだった。

 もし彼が、私に話しかけてこなかったならば、私はひょっとして一生、その学者におもしろくない感情を抱きつづけたかもしれないと思ったら、ぞっとしてしまった。

 相手を知るのに、速断してはいけない。とことんじっくりつきあってみなければ本当のことはわからないと、あらためて思った。

 他人とつきあうノウハウは、いまいったことに尽きるが、自分の心とつきあうノウハウも、同じではないかと思ったりする。

 自分の愛している人から裏切られたとき、人は絶望する。この状態は、いわばそれまでエンジンを最大にふかして飛んでいたジェット機が、揚力(ようりょく)を失って失速するのに似ている。精神科では「対象喪失」とよんでいて、飛行機が空気を失うがごとく、人間も生きる支えを失ってしまうのである。

 自分の心は他人しだいでどうにでも動かされるが、最終的に自分の心を決めるのは自分しかいない。そうした、自分の心を鍛え直したいと思っている人たちに、本書がいくらかでも手助けになれば幸いである。

斎藤茂太


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