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(2021/11/26 追記)

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そんな言葉づかいでは恥をかく
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ビジネス
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二章 ――2階受付でうかがってください」のどこが間違いか――お客様が怒りだす日本語

『そんな言葉づかいでは恥をかく』
[編]日本語倶楽部 [発行] 河出書房新社


読了目安時間:32分
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「田中という方がお見えです」――これじゃ上司の面目まる潰れだ――


 最近の学生は、大学教授相手にもあまり敬語をつかわなくなってきたといわれる。たとえば、「先生が昨日、あのように言われたことは、本当ですか」といった具合だが、こんな調子で社会人になると、大恥をかくことにもなる。

 会社に田中と名のる人物が訪れたとする。取り次いだ新入社員は、上司に、
「田中という方がお見えです」

 と伝えたとしよう。しかし、こんな取り次ぎの言葉が田中氏に漏れでもしたら、上司の顔が恥ずかしさで真っ赤になるところだ。

 この場合、田中氏に失礼にあたるのは、「田中という方」である。まずお客様なのだから「田中様」と言うのが敬意のある言い方だし、「という方」というのも問題だ。「言う」という言葉には敬意が含まれていないから、敬意を加える表現が必要である。というと「言われる」を思いつく人もいるだろうが、これでもまだ敬意のレベルは低い。
「言う」の尊敬語は、「おっしゃる」である。ここは、
「田中様とおっしゃる方がお見えです」

 というのが、社会人としての正解なのである。

 学生時代に「先生の言うことは……」などと平気で言っているから、このように恥をかいたり、先輩・上司に恥ずかしい思いをさせることにもなる。「言う」の尊敬語が「おっしゃる」だと頭で理解していても、現実につかっていなければ、ついボロをだしがちなのだ。


「あの人が林さんです」――あの人よばわりはないんじゃない?――

「あの」とか「この」という言葉をしきりにつかい始めたら、頭がカタくなってきた証拠などとよく言われる。たしかに「あの」や「この」は便利な言葉でつい多用してしまうのだが、これはビジネスの場では十分に注意したい言葉でもある。

 たとえば、林氏という人物が来訪し、課長に会いたいとあなたに告げたとする。あなたは、その旨を課長に取り次ぐ。林氏は受付で待つことしばし、間もなく課長がやってくる。そこで、あなたは課長に、
「あの人が林さんです」

 と言っては、課長に小言の一つももらうことになるだろう。

 そもそも「あの」とか「この」という言葉は、大切な相手を指してつかう言葉ではない。相手は、大切なお客様である。そのお客様を「あの人」では、お客に対して失礼である。

 たとえばデパートで商品を買って包装してもらうとき、店員さんが横で「この包装は、あの人が買われた商品よ」などと言っていたら、ムッとするだろう。お客なのに「あの人」よばわりでは、だれだってムッとするのだ。

 というわけで、この場合は、
「あちらの方が林さんです」

 と言いたい。「あの」よりも「あちら」に敬意がこめられているのはもちろん、「人」よりも「方」のほうに敬意がこめられているのだ。これなら、上司の小言をもらうこともないだろう。


「2階受付でうかがってください」――どこが間違いかわかりますか――


 昼休み、会社の玄関先で、会社への来訪者に場所を尋ねられたりしたときのことだ。自分ではその場所がわからないとなると、受付で聞いてもらうしかない。そこで、来訪者に、
「2階受付でうかがってください」

 と言ったのでは、相手に「この会社の若者はろくに敬語の使い方も知らない」とバカにされることになる。

 自分では敬語をつかったつもりかもしれないが、これでは敬語になっていないのである。じつは敬語の中でも「うかがう」というのはクセ者で、この「うかがう」の使い方を知らないから、おかしな表現をすることになる。
「うかがう」というのは、目上の人に対して尋ねるときの謙譲語である。謙譲語は自分の動作をへりくだって言うことによって、相手に敬意を払おうという言葉だ。
「うかがう」動作の主体が自分ならばいいが、問題となるのは動作の主体が他人の場合である。この場合のように、お客様に「受付でうかがってください」と言ったときに、「うかがう」動作の主体はお客様である。これでは、お客様を自分の会社の受付相手にへりくだらせることになり、主客転倒(しゅきゃくてんとう)である。自分の会社の受付がお客様よりエラいような言葉づかいでは、お客様はあきれるだけだろう。

 この場合、とにかく相手の「尋ねる」動作に敬意を払う表現が求められる。シンプルに、
「受付でお尋ねください」

 と言えばいいのである。
「うかがう」という謙譲語に振り回されないように、注意したいものだ。


「アポはお取りですか?」――もし大切なお得意様だったら大変!――


 ビジネス社会には、学生社会以上にさまざまな人物がいる。「○○商事の△△ですが、課長いらっしゃいますか」などと言って来訪してくる人の中には、飛び込みの営業マンだっている。もちろん事前に約束があれば何の問題もないのだが、忙しい時間帯などにやってきた人をだれでも言われるまま上司に取り次いでいては、仕事の能率も悪くなる。

 そこで、こんなときはさりげなく相手からアポイントメント(約束)の有無を確認するのがビジネスのルール。しかし、だからといって、
「アポはお取りですか」

 といきなり言ったのでは、相手に失礼だろう。
「お取りですか」と敬意を表しているのに、どこが失礼なのだと思う人もいるだろうが、これは相手の気持ちを考えていない言い方である。来訪者とすれば、この私はアポイントメントの確認なしには取り次いでもらえない人間なのか、と不愉快な気持ちになる。これが飛び込みの営業マンならともかく、課長のお得意先だったりしたら、それこそたいへんな失態になってしまう。

 また、「アポ」という言葉を軽々しくつかうのも、いただけない。社内でつかうのならともかく、公式の場での言葉としてはまだ認められていないのだ。

 こんなときは、ちょっと丁寧に、
「恐れ入りますが、お約束はいただいておりましたでしょうか」

 と尋ねたほうがいいだろう。たとえ相手がだれであったにせよ、これなら問題はない。


「係の者からいただいてください」――よほど偉い「係の者」にちがいない――
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