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経済用語 悪魔の辞典 ニュースに惑わされる前に論破しておきたい55の言葉
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経済・金融
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アベノミクス【Abenomics】

『経済用語 悪魔の辞典 ニュースに惑わされる前に論破しておきたい55の言葉』
[著]上念司 [発行]イースト・プレス


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 無知な人にはまったく効果が見えない「逆・裸の王様」的な経済政策。「3本の矢」によってデフレを克服して日本経済を復活させる。日本経済復活に向けてあまりにも早くその効果が表れてしまったために「敵」に警戒されている。「アホノミクス」とか意味不明な批判をしている人もいるが、たんなる()(ぼう)中傷であり、まったく根拠がない。批判するほうが正真正銘のアホである。ひょっとしたら海の向こうにある力で現状を変更しようとしている国から(よこしま)な電波を受信しているのかもしれない。


 実際のアベノミクスの効果は絶大で、1ドル80円台の円高は1ドル120円の円安に、7000円台の株価は約2万円になった。また、失業率は5台から3台に低下し、就業者は100万人も増えた。非正規から正規に移行する労働者も増えている。


 誰が見てもその効果が出ていることは疑う余地もないが、残念ながら無知な人にはその効果が見えない。また、無知ではなく、宗教や思想上の理由によってアベノミクスの効果を認めることが禁じられている人々も存在しているらしい。


 これらの人々の特徴は消費増税による消費の低迷を「アベノミクスで円安になった弊害だ!」とか、「公共事業が足りないからだ!」とか、「野菜不足で景気悪化!」(増税の項参照)などとこじつけて経済政策を誤った方向に導こうとする点にある。特定の利権集団の利害がからむのか、それとも日本を滅ぼしたい外国の手先なのかは謎だ。


 そもそもアベノミクスは、なぜ効果的だったのか? そのメカニズムはきわめてシンプルだ。最も攻撃力の高い1本目の矢は言わずと知れた金融政策である。金融政策とはお金の量を調節することである。人々が得た収入のうち、いくらを消費や投資に回して、いくらを使わずに貯蓄するかという判断は将来的な経済の見通しによって左右される。将来、景気がよくなってモノの値段が上がりそうだと予想すれば、値上がりする前に消費や投資をしようとする人が増えるだろう。このとき、収入を貯蓄に回す割合は下がる。


 逆に、将来的に景気が悪く、モノの値段はむしろ下がりそうだと予想すれば、なるべく消費を先延ばしして値下がりした商品を買おうとするだろう。このとき、収入を貯蓄に回す割合は上がる。


 別の言い方をすれば、将来的にお金の価値が下がる(モノの値段が上がる)ときに貯蓄は減り、お金の価値が上がる(モノの値段が下がる)ときに貯蓄は増える。金融政策とは将来的なお金の価値を決定する政策なので、人々の消費や投資や貯蓄などの行動に大きな影響を与えるのだ。なぜなら、お金の量を増やせばお金の価値は下がり、お金の量を減らせばお金の価値は上がるからである。別の言い方をすれば、お金が世の中に余っていれば金利(実質金利)は下がり、お金が不足気味なら金利(実質金利)が上がる。これらはすべて人々のお金の使い方に大きな影響を与えるのである。


 しかし、世の中には自分の体験でしか経済を語れない愚か者がいる。住宅ローンを組んでマイホームを買ったことがない人は、金利が下がることがどれだけ住宅購入を後押しするか実感が持てない。オートローンを組んで車を買ったことがない人も同じだ。彼らにしてみれば金利が動いたところで日々のスーパーマーケットでの買い物に影響はない。だから金利とかお金の量なんて人々の行動になんの影響も与えないと思い込んでいるのである。まさに「愚者は経験に学ぶ」という教訓の一端を見たような気がする。


 2本目の矢は財政政策である。1971年のニクソン・ショック以降、日本は変動相場制に移行したことによって財政政策の攻撃力は大幅に低下した。かつては財政支出1に対してその3~5倍ぐらいの経済効果があったが、現在はその効果は1倍程度まで低下している。


 変動相場制によって財政政策の効果が無効化されるメカニズムは簡単である。財政政策を実施するために政府が民間の市場から増税や国債売却によって資金調達を行うと民間市場における円が不足する。資金の不足によって景気が減速するだけでなく、円の()(しょう)(せい)が他国の通貨より高まることで円高が発生する。その結果、財政政策のプラス面と円高によるマイナス面が相殺されて効果は打ち消されてしまうのだ。(マンデル・フレミング効果)


 実際に()(そう)()(ろう)内閣が行った100兆円近い財政政策の前後で為替レートがどのように変化したか、観察してみるとよい。麻生内閣が発足した2008年9月24日の為替レートは1ドル106・23円だったが、麻生内閣が退陣した2009年9月16日には1ドル90・87円まで円高が進んでいる。2本目の矢だけで構成された麻生内閣の景気対策は、円高によってその効果は完全に相殺され、かえって日本経済を停滞させてしまったのだ。


 3本目の矢は成長戦略である。これには二つの解釈がある。ひとつは政府が将来的に成長が期待できる分野を探し、そこに国家リソースを集中投下するという産業政策であり、もうひとつは政府が規制などを撤廃して民間企業の自由競争を促進する競争戦略である。


 産業政策は政府が「将来的に成長が期待できる分野」を確実に発見できるという楽観的な前提に根差している。つまり、「偏差値の高い大学を出て、難しい公務員試験に合格した官僚ならば、ラーメン一杯まともに売ったことがなくても商売のことはすべてわかっている」というファンタジーに依拠しているのだ。もちろん商売の世界は厳しい。そんな夢物語が通用するのは戦争で国土が荒廃し、とにかく何かつくればたいていの需要は満たされるといった特殊な期間のみである。


 将来、何が当たるのか誰もわからない状況においてモノを言うのは「投入量」である。同じ成功確率なら1万社の試行錯誤より10万社の試行錯誤のほうが生き残る企業数は増える。新しい可能性を持ったビジネス・アイデアをより多くの人が気軽に試せる環境を整備することこそ本当の成長戦略なのだ。


 アベノミクスによって日本経済が復活していく過程で最初に起こることは資産市場の変化である。具体的には円安と株高が同時に起こる。次に銀行など金融機関の態度が徐々に変化して企業の経営姿勢が「守り」から「攻め」に転じる。具体的には設備投資や人材確保などに積極的な企業が増えてくる。パートやアルバイトの市場が人手不足となり、それが徐々に正社員にも波及する。これは失業率の低下や就業者数の増加を意味する。この点においてアベノミクスは弱者にもやさしい政策だと言うことができる。


 左右問わずアベノミクスを批判する人に特徴的なのは、彼らは弱者の味方のフリをしつつも、実際に言っていることが弱者に冷淡だということである。アベノミクスを後退させることは日本経済をデフレ方向に引き戻すことだ。


 とあるテレビ番組でトマ・ピケティの『21世紀の資本』を取り上げてアベノミクスと格差問題について討論したそうだが、じつは出演者全員の年収が上位1に入っていた。その態度はまさに「超高級フレンチを食べながら世の中の不平等を嘆く革命家」である。世の中、こういう笑えない話が多すぎる。

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