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離婚の影にオトコあり。
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ルポ・エッセイ
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題 ネットサークルの人

『離婚の影にオトコあり。』
[著]内藤みか [発行]二見書房


読了目安時間:29分
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 日奈子さんに会ったのは、温かな日の光が差し込んでくる喫茶店でだった。

 彼女はとても物静かで、だけど、なかなか壮絶な離婚を体験をしたことは、以前、彼女からメールをもらった時に、追伸として書かれていた。別居中に、好きな男ができてしまった、というような内容だった。あちらもあっさり書いてきたので、私も深く突っ込んではいけないかなと思って、さらりと読み流していた。

 今回の本のことが決まって、日奈子さんのことを思い出したのだけれど、話してくれるだろうか。

 おそるおそるアポイントメントを入れてみた。マジメな彼女は、あまり自分のことを話したがらないだろう、ましてや離婚の際に男が絡んでいたかどうかなんてことは。

 だから半ばあきらめていたのだけれど、意外にも返事はOKだった。
「タイトル(『離婚の影にオトコあり。』)にドキッとしてしまいました」

 すでにバツイチになって一年ほど経つ彼女は、落ち着いた文体でそうメールをくれたので、嬉しかった。

 近ごろでは三〜四組に一組が離婚するご時世だ。平成十七年には、年間約七十一万組が婚姻し、約二十六万組が離婚している(平成十七年厚生労働省人口動態調査)。アメリカでは二〜三組に一組が離婚するとも言われていて、日本もいずれはそのくらいのパーセンテージになるのでは、という推論もある。

 実際、私が初めて離婚をした一九九七年に比べると、離婚はかなり一般的なものとなった。十年前は、離婚したと言うと役所の人も相当同情的だったし、ひとりでお子さんを育てていくのですか、大変ですね、と親身にもなってくださった。そして不動産屋さんは冷たかった。女がひとりで働いて、家賃なんて払い続けていけるのか、とどこでも言われた。普通だったら去年の確定申告書だけでいいけれど、心配だから過去三年間の申告書を見せてくれ、とも言われた。

 それにくらべると、今は、ずいぶんと変わっただろうと思う。

 実際、私が二度目の離婚をしたのは二〇〇二年だったのだけれど、その時は役所の人は「ああまたシングルマザーか」という感じだったし、不動産屋さんはわりと簡単に部屋を貸してくれた。たった五年でずいぶんと対応が違うものだなあと思った。まあ、私の態度が離婚慣れしていてふてぶてしかったのかもしれないけれど。

 日奈子さんが話してくれる気持ちになったのも、離婚がそれほど大したことではないという世間のムードが影響しているのかもしれない。ほんとうに、一昔前だったら、離婚すると「出戻り」などと(とが)められるように言われたり、まともに家庭生活を送れなかったということで、ダメな女として烙印を押されるような印象があった。離婚歴があることを隠す女性も少なくなかった。

 でも、今はそんなことはない。いちいち離婚女性を咎める暇もないくらいに、あたりはバツイチだらけだからだ。バツイチであることを明るく公表している女性も増えてきたし、離婚は人生の大失敗というよりは、ちょっと大きな失恋、のような印象へと変化してきている。だから、日奈子さんも口を開いてくれたのかなという気がした。

 もともと日奈子さんはマジメな印象があった。

 色が白く、おっとりとしていて、清潔感もあり、あまりスレてはいない。

 お嫁さん候補として、男性にモテそうな感じがある。実際、大学時代にテニスサークルのOBに見初められ、八つ年上のその人と、卒業後すぐに籍を入れたのだという。結婚した時には、彼女は二十三歳。なんでそんなに早く結婚したのと聞くと、
「結婚してみたかったから。憧れみたいなものだったのかな。大好きな人とずっと一緒にいられるからうれしい、くらいにしか考えていなかった。子どもだったのね」

 と答えた。

 わかるわかる、と思わずうなずいた。

 だって私も、結婚したのは二十四歳。あの頃は、本当にお子さまだった。結婚と同棲の違いすら、わかってはいなかった。結婚してみて初めて、姑というのはこんなにも新婚生活を邪魔してくる存在なのかと思い知ったり、よくわからないけれど法事がどうのご挨拶がどうの、と、親戚関係の用事に駆り出されることも増えた。そのたびに私はキレた。せっかくの日曜日なのに、彼と一日中イチャイチャしていたいのに、邪魔しないでよッ、と。

 でも今思い返してみると、私も悪かったのだ。全然“嫁”という意識が持てなかったのだから。私がしたかったのは同棲であり、結婚ではなかったのだ。本気で結婚を考えるのなら、ちゃんと彼のご両親も大切にして、一族の用事にはエプロンしめていそいそとお手伝いをしなくてはならなかったのかもしれない。つまり結婚というのは、彼の親族の一員になるということなのだから、よく気がきく可愛い嫁、つまりは働き者のよくできた嫁さんとして振る舞っておけば、きっとウケもよかっただろうに。

 私はまだまだ彼とラブラブでいたかったし、二人だけの世界にこもっていたかった。

 結婚するには早すぎたのだ。けれど、子どもを授かってしまったのだから、しかたがなかった。私の場合、できちゃった結婚だったのだけれど、しかし彼女は違った。

 子どももできていなかったのに、二十三で結婚してしまったのだ。
「ウェディングドレスも着たかったし、彼に毎日おはようと言いたかったし……」
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