読みたいトコだけ買える本。
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離婚の影にオトコあり。
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ルポ・エッセイ
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題 まとめ 〜そしてバツイチ女たちは……

『離婚の影にオトコあり。』
[著]内藤みか [発行]二見書房


読了目安時間:30分
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 私の友人で、ご主人の留守に荷物をまとめて出ていった女性がいる。

 彼女は実に綿密に計画を立て用意をしていった。

 まず、定期収入の確保。

 それは結婚前からスキルとして持っていたパソコンの腕前を活かし、派遣社員として働き始めることでなんとかなった。

 それから住居の確保。

 ご主人と暮らした街からなるべく離れた、全く関係のない場所で、もっとも安いアパートを探した。そこは破格に安い部屋だったけれど、畳敷きで日当たりが悪く、お世辞にもオシャレな新生活とはほど遠かった。でも彼女は「これが今の自分の精一杯だから」と無理をせずに、その部屋を契約した。下世話な私は、
「でもさあ、オトコを連れ込む時とか、どうするの?」

 と、思わず突っ込んだ。

 だって彼女には当時やはり、オトコがいたからである。

 とはいえ付き合っているという確約もしておらず、ときどき思い出したように会って、ちょっとセックスする感じのお付き合いだったけれど、いることはいた。

 収入、住まい、オトコ。

 衣食住ではないけれど、この三点が確保されれば、女は行動に出ていけるものなのかもしれない。

 彼女は、独身時代のヘソクリでアパートの契約や引越しの手続きを進めた。

 そして少しずつ荷物の整理を始めたのだけれど、何も言われなかったらしい。段ボールに衣類を詰めている彼女を、ご主人は衣替えでもしているとでも思っていたのだろうか。ついに引越し当日も何ら変わらぬ顔で、出勤していったという。

 そしてご主人の留守に彼女は速やかに荷物を運び出し、離婚を前提とした別居生活をスタートさせてしまった。

 彼女はまだやさしいほうだと思う。

 なくなったら困るだろうなというような生活必需品は、すべて置いていったのだから。

 テレビ、ビデオはもちろんのこと、ドライヤーやUSBケーブルなども、彼女は持ち去らなかった。必要最低限の私物だけですましたので、引っ越しはわりと簡単だったらしい。

 そしてすでにリサイクルショップなどで安く手に入れた冷蔵庫や洗濯機を新しい部屋に用意しておいたので、その日から難なく新生活をスタートさせることができた。きれいなバスタオルだけを選んで運び出し、ビデオカメラを譲ってくれなかったモトダンを責め「子どもの運動会をどうやって撮影すればいいんだよう」と食ってかかった私とは大違いである。オトコが部屋に来るかもしれないし、とちょっと見栄を張って高い家賃のオシャレな部屋を契約しがちな私とは、うまくいえないが、心がけとか独りで生きていく決意のようなものが違う。頭が下がる思いだった。私なんてほんとまだまだ甘ったれているし、人生に期待しすぎてもいる。だからオトコに去られた時に、この高い家賃はいったい何だったのよ、と泣きっ面にハチ状態になってしまうのだ。

 しかも彼女は本当に賢くて、問いただすご主人に論理的に「かくかくしかじかだから、もうダメなんです」と説明して納得してもらい、さっさと離婚を完了させ、そして連絡してきたオトコに離婚を伝え……。と、ここまでは、普通。そこからが高等テクだと思うのだけれど、
「アパートのオフロ、狭くてきゅうくつなの。広くて大きなオフロで羽を伸ばしたいな☆」

 と、彼に甘えたのだ。

 ま、つまりは、ラブホテルに行きたいな、ということである。

 なんて素晴らしい口説き文句だろうか。もちろんそのオトコは彼女をラブホテルに連れていってくれた。

 離婚したら、どう考えたって収入は減るのだ。

 結婚した時と同じレベルの生活を保てるほうが不思議なのだし、無理なのだ。

 だったら素直に正直に、自分の現状を伝えたほうが、世の中ってうまくいくのかもしれない。私みたいに見栄っ張りで住まいのレベルを落とせず、男に弱みを見せられない女は、まだまだ生きるのがへたくそだ。

 とはいえ、そんな賢い彼女も、結局はオトコに去られてしまった。
「仕事が忙しくなった」

 とかいう理由でなんだかんだで、音信不通に陥ってしまったのである。

 音信不通。

 これ、私も何度も味わったことがあるけれど、とってもさみしい。

 でも一番さりげなくて一番じわじわと伝わる、サヨナラのメッセージなのかもしれない。

 でも彼女はすぐに立ち直った。
「そんなこったろうと思った」

 と淡々としていた。

 そしてあっというまに次のオトコを作ってしまった。

 そのオトコにも正直に「今の住まいは決していい条件じゃないの」などと伝えたところ、「じゃあ僕の部屋においでよ」とあっさり言われ、交際後すぐに同棲することとなった。

 その男性もバツイチで、夫婦で暮らしていた時のマンションにそのまま住み続けていたから、すごく流れがスムースだったのだろう。だから彼女は結局その日当たりの悪いボロアパートには、一年と住まなかった。うらやましい話である。

 私のように直情型、猪突猛進タイプの女は、出たとこ勝負なので、最高の一手を熟考している時間が足りない。だからしばしば道を自ら踏み外す失態を演じてしまう。一番色っぽく一番魅力的に自分を相手にアピールするような余裕も持っていない。

 皮肉なようだけれど、彼女のように、誰にも頼らずに生きていこうとする女性ほど、すぐにオトコができる気がしてならない。私のように「年下の可愛いオトコノコがいないと生きていけないよ〜」と(わめ)いている女ほど、全然恋愛事情がよくなっていかない。

 ひとりで生きていける楚々(そそ)とした強さ。
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