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独身女性の性交哲学
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§ 男は恋愛したくない!!

『独身女性の性交哲学』
[著]山口みずか [発行]二見書房


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『愛されてお金持ちになる魔法の言葉』(佐藤富雄、全日出版)という本がある。

 これこそ、生殖年齢にある女子のもっとも望むことではないか。
『愛と』『お金』。それさえあれば幸せになれるとみな信じている。どっちか選べと言われれば、そりゃ悩むかもしれないが、「魔法の言葉」を唱えるだけで、「愛」も「お金」も両方手に入れられるなら、それを拒否するヤツはよっぽどの変わり者。現代日本の究極の欲望を具現化した、()かれるタイトルではあるまいか。

 この本、実は私が勤めていた高級ソープランドの控え室に、一時期3冊も置いてあった。

 控え室とは、お客についていないソープ嬢が時間を費やす場所、なぜか年中コタツ敷きの部屋である。

 ソープ嬢がお客についていない間は、時給すら発生しないフリータイム。とはいえ、外出は厳禁。いつでもお客様につけるように、お行儀よく待機していなければならないのが建前である。食事は出前で済ませるしかないが、メユーは豊富。おまけに、冷蔵庫内のドリンクは飲み放題(帰りにちゃっかりお茶代として徴収される)、テレビ冷暖房完備で快適なはずが、まる1日待機しているとウツになりそうな不思議な空間だ。

 そこに、お店の掲載された風俗誌などに紛れ込んでその本があった。たぶん誰かコンパニオンが暇つぶしに買ってきて置いていったのだろう。雑誌以外の本はあまり見かけないその場所に、3冊も同じ本とは。

 しかも、そのタイトルが、「愛されてお金持ち……」。嗚呼。

 でも、ソープ嬢だからこそ、愛とお金の充足は切実な問題なのかもしれない。

 私も内容が気になって、こっそり借りて読んでみた。
まず第一に、女性が身も心も満たされて本当に幸せになっていくためには、うんと素敵な恋とたくさんのお金が絶対に必要です。第二に、うんと素敵な恋とたくさんのお金、大きな幸せを手に入れるためには、自分の容姿への強い自信があることが絶対的な条件となります。(同書、14頁)


 女性にとっての幸せを、「男に愛されてちやほやされること」だと定義しきってしまえば、なるほど、そのためには、「アタシは大事にされて当然、その価値がある」と、ナチュラルに信じられることが肝要で、現代の女性が自己肯定感を得るには、容姿に自信を持つことがもっとも有効であると言うのだろう。

 しかし、それだけでいいのか?
女性が充実した素晴らしい人生を送れるかどうかは、「自分の容姿にどこまで自信を持てるか」にかかっています。(同書、2頁)


 そんなふうに言い切られると、反発したくなる性分の私は、ここで言われるような幸せは、決して手に入れられないだろう。

 それでも、物事に対して卑屈になるより、素直に「思い込める」能力は、あって悪いものではないかもしれない。同じように「疑える」能力もあるべきだが、この相反する概念を両立させるのはちょっと難しい。

 容姿に関しては、たとえ周りの誰もが認める美形でも、本人がそこに納得していなければ無意味だ。自己肯定感を持てず、常に「私なんかダメよ」となるとしたら、そういうふうに考える癖がついているからだろう。脳の回路を、ちゃんと素直に「私はイケてる」と思い込めるように、呪文を唱えよう、考え癖をいいほうに変えようという提唱は、一理ある。

 要は自己暗示が大事ということなのだ。

 私としては、「魔法」はそれを真に信じるものにしか使えないのだなあと、すっかりスレてしまった我を省みる結果となったわけだが……。

 控え室にこっそり捨て置いてあるのにも納得。自力で稼いできた私たちには、もはや魔法を素直に信じる純粋さは残されていないのだった。
「愛される」ことや「モテる」ための本は、それこそ書店の一角に山盛りだ。

 女子の憧れは、大好きな彼と一生幸せでラブラブ

 赤い糸の伝説だとか、運命の人とか、女の子は数多くの男性に言い寄られながらも一途にひとりだけの自分だけの恋人と幸せになることを夢見る。

 これを「オンリーユーフォーエバー症候群」と言います。経済学者の森永卓郎氏が、『〈非婚〉のすすめ』(講談社)という著書の中で最初に発表された概念だという。
「オンリーユー・フォーエバー症候群」とは『〈非婚〉のすすめ』で発表された概念です。日本人女性だけが固有に持っている「恋愛に対する信仰心」のことです。「この世の中にはたったひとり、自分にとって運命の人がいる。その人と生涯添い遂げて暮らすことが、女の本当の幸せである」という考え方が、オンリーユー・フォーエバー症候群の特徴です。(岡田斗司夫『フロン』海拓舎、91頁)


 なぜか女の子はみな信じてるけど、これが恐るべきことに、岡田斗司夫氏は「男性の信者はほとんどいないのが特徴」(同書92頁)とおっしゃいます。

 まあ、そうだろう。男は、誰でもいいから自分のことを本当に好きになってほしいとは思っても、実は誰でもいいのだ。でなきゃ、性風俗店も流行るまい。

 さらに岡田氏は、男子は恋愛などしたくないのだとまで言いきる。俺の女はほしいけど、恋愛はイラナイ。わーい。言っちゃったよ、おい。

 いや、冗談じゃなく、私も風俗嬢を長くやってきたけど、男というものを知れば知るほど、女子の憧れは何だったんだ? と気づかされます。

 男性がほしいのは、ふたりで築き上げる愛のパラダイス、などではなく、自分の幻想に適したパーツとしての女。デートも会話もめんどうくさいから風俗で充分。

 女の子が欲してやまない「ラブラブ」を、男性も求めていないわけではないが、どうにもこうにもズレがあるのだ。

 お客につきあってほしいと言われることが多々あるのが風俗嬢の日常なのだが、風俗嬢相手のラブラブで満足するのはどうかと……(それで商売成り立っているので、何も言いませんが)。

 そもそも、風俗嬢とつきあうといって男性が夢想するのは、リッチなエロライフでしかない。仕事のエロをそのままプライベートに持ち込まれても、アレはあくまで仕事だからな。その違いを、わかっているようでわかっていない男性が多いのだ。

 もちろん、風俗に通う男が男のすべてではないが、超晩婚化という世間の状況、巷で取り沙汰される話を鑑みても、やはり私は岡田説に深くうなずかざるをえない。

 男は恋愛なんかしたくないんだーっ


 例えばこんなお客様がいた。

 初めて会ったばかりなのに、「これからつきあうことを前提に、自分のことを見てほしい」なんておっしゃる。そのヒト、事前にプレゼント(ミッキーマウスのチャーム)まで用意して来ていたが、人には好みってものがあるでしょうが。

 あたしゃ、ディズニーキャラクターに興味ないですが!? そんなこと、初対面で知る由もなし。

 お客様、「女」はこうすれば攻略できるというマニュアル頼みが見え見えですよ(しかもズレてる)。

 ホントはどうしたらいいかわからなくて、むしろ面倒くさい女性との会話を、なんとか成り立たせるために必死なのは、かわいいと言えなくもないが、結局、自分の欲望のためだ。彼は『彼女』というアイテムがほしいだけ

 仮にも、おつきあいしたいというのなら、話して意気投合したからとか、エッチの相性がよかったとか、そのくらいの理由はほしいのではないか。ソープに来て、サービスを受ける前にそんなことを言い出すのは、さすがに珍しくて逆に面白かったけどね。
「知り合ってすぐつきあうなんて無理だから」って断ると、お客様は、「しばらく店に通うから、その間にお互いを知ればいい」なんておっしゃった。あら、通ってくれたら金づるですよ?

 恋人としてつきあうつきあわないでお客をハマらせるのは、水商売出身の嬢がよくやる手口。いわゆる「色恋営業」というものだ。

 よくよく話を聞いていたら、「元カノ」も風俗嬢らしく、彼はつきあっているつもりで店に通っていたけど、だんだん向こうにソデにされて終わった様子。

 それ、恋愛じゃないですから。「彼女」だと思っていたのはあなただけですよ!?

 私は誠実さを装って(内心、苦笑)、「あなたを好きになる前に、ここで仕事としてエッチしちゃったら、お客にしか見えないよ」って言ってみた。「彼氏候補でーす!」って言うなら、そちらもそれなりの思いやりが要るんじゃない?っていう提案のつもり。したらば、仕事は仕事としてきっちりサービスはしてほしいご様子である。

 ソープのサービスといえば、こっちがリードして、マットもしっかり3回戦モード。そんな男を好きになる可能性はないだろう。

 いや、普通に仕事をしていて、結果として、こっちが惚れそうな「いい男だわん」とかは皆無ではないが、もう最初からトンチンカンなんだもん。ありえない。

 結局、その方は普通にサービスを味わって、プレゼントも「じゃ、あげない」って持って帰られました(いらない)。「彼女」を求めて風俗に来るなら、もうちょっとやり方があるだろうに。

 めんどくさいこと抜かして、無料セックスと彼女がいるっていう安心を得たいのね。その人は極端にせよ、ああ誰でもいいんだなって思うことは多々ありマス。

 恋愛ってものは、世界でたったひとりの運命の恋人を探す、ロマンチックなドラマでなくちゃ!

 他の誰とも違う、特別な相手として見初められてこそ意味があるのだ。誰でもいいからとりあえず、なんてもってのほか!

 ええ、これは女子の身勝手な言い分

 これこそ、「オンリーユーフォーエバー教」という宗教である。

 男は、そんなこと言われても困惑するばかりでしょう。

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