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(2021/11/26 追記)

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真贋のカチマケ 鑑定士の仕事
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ルポ・エッセイ
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第一部 鑑定の鉄人

『真贋のカチマケ 鑑定士の仕事』
[著]中島誠之助 [発行]二見書房


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 私たち骨董商のあいだには「腹に入らない」という言葉があります。


 これは非常に感覚的な表現なのですが、いわゆる(がん)(さく)などを目の前にしたときに、どうもしっくりこない感じを表すいいまわしです。


 贋作者が、どれほど優れた技術と知識を駆使して本物と寸分違わぬコピーを作りあげたとしても、その作品を目の前にしたとき、あるいはしばらく手元に置いて眺めていると、どうにも腹に入らなくなってくるものです。


 本物の逸品は、時間が経てば経つほど品性が漂い、ますますその輝きを増してくるものですが、贋作はそれとは逆にいやらしさが(にじ)み出てきてしまうのです。


 それはもう、物がもつ「霊性」としか表現のしようがないもので、その霊性を瞬間に感じ取ることのできる感性と経験があるかどうか、これが一流の鑑定士か否かの基準といえます。


 物の霊性を見抜くために、私自身、これまでさまざまな経験を積んできました。その過程には当然、数々の辛苦があったわけですが、それらがあったからこそ現在の私があるといえるでしょう。


 私がまだ店を開いたばかりの若造のころのことです。


 ある男がもってきた骨董品のなかに、(うみ)()がりの()(ぜん)の徳利がありました。海揚がりというのは、海の底に沈んだ沈没船から潜水夫が引き揚げた古い時代の品のことで、主に昭和十九年ごろに岡山の沖で多く発見されているものです。その男が私に見せた骨董品のなかに、まさに海揚がりの徳利があったのです。他の品々といっしょに素晴らしい海揚がりを手に入れまして、もう嬉しくて嬉しくて毎日その徳利で晩酌を楽しんでいたわけです。


 ところが、これがだんだん腹に入らなくなってきた。それで大先輩にその徳利を見ていただこうと思ってもっていきますと、私が箱から徳利を取り出すか出さないかといわないうちに「見る必要ない」。こうして、やはりそうか、(にせ)(もの)だったか、自分もまだまだ勉強不足だった、と思い知らされたというわけです。


 こんな話はこの世界には山のようにありまして、そういう(にが)い経験を重ねて私たちプロは本物を見分ける目を磨いてきているのです。詳しい(てん)(まつ)は本書のなかで紹介しておりますが、とにかく骨董という世界は奥が深い。


 お蔭様で、私が出演しているテレビ番組『開運〓 なんでも鑑定団』の人気が高いようで、これまでは古美術などにほとんど関心がなかったという方のなかにも、骨董の世界に魅力を感じはじめた人が多くいらっしゃることでしょう。それはそれで、この道に生きてきた私としては嬉しいかぎりですが、やはりこの世界は奥が深く、ちょっとやそっとで見えてくるものではありません。


 そうした骨董の奥深い魅力をさらに味わっていただければと思い、また本物と贋物の見分け方の参考になればと思って、この本を世に送りだすことになった次第です。


 私がまだ若いころに贋物をつかまされたいくつかの苦い失敗談もありますし、思わぬところで思わぬ大発見をすることができた体験談も記しております。読者のみなさんには、推理小説を読むようなある種のスリルと、骨董の世界だけにある「粋」を、楽しんでいただけるのではないかと思っています。


 そう、骨董には、日常生活のなかではなかなか味わうことのできない「人間」と「藝術」と「時代」とが織りなすロマンがあるのです。


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