『使っても減らない5つのお金のルール』
[著]黒木陽斗
[発行]扶桑社
ビジネスエリートは人脈をお金で買います。
なかでも起業家は熱心です。会社の看板を頼みにできるサラリーマンとは違い、自分の名前一つで勝負をしている彼らにとって、人脈は自分の「信用」をつくる最大の武器になるからです。
まだ無名の起業家がスポンサー契約を取ろうとして企業に飛び込んでも、相手にされないことは誰でも想像がつきます。
その無名の彼らを保証してくれるのが人脈だといえるでしょう。多くの起業家は、最初は人脈を伝って仕事を請け負います。
つまり、無名で実績がないうちは仕事にならないともいえます。
サラリーマンで実績を上げてから起業する人がいますが、その場合、まず、○○会社の社員として下積みをして実績を出し、社外の信用を得てからの独立ということです。
ビジネスエリートは人脈を買うことによって、この下積み期間のショートカットを試みるのです。
プロといえども、つてをたどってわらしべ長者
さて、まずは人脈のプロについて考えてみましょう。
人脈のプロといえば、第一にヘッドハンターが思い浮かびます。
彼らは人脈そのものが、商売道具だといっていい。企業に依頼されて、求められている人材を探してきて紹介するという仕事です。
「○○会社の○○さんを引き抜いてください」と具体的に依頼されることもありますが、大概は「こんなスペック、こんなスキルを持った人材を探してきてください」と、曖昧な形で依頼されることが多いようです。
それはネットで検索すれば見つかるような類のものではありません。そこで「こんな人を知らない?」「あの業界のキーマンを教えてほしい」などと、既存の人脈をたどりながら目的の人材にたどり着こうと知恵を絞るのです。
仮に「○○会社の○○さん」と名前がわかっていたとしても、直接の連絡先がわからなければ同じことをするしかありません。つまり、連絡先を知っていそうな人を探し、間接的にアプローチする。人脈をどれだけ持っているかがヘッドハンターの資産なのです。
努力のかいあってようやく目的の人材までたどり着いたとしても、まだ仕事は終わりではありません。今度は周辺調査が始まります。本当にその人がクライアントの要求通りの人材なのか、「裏取り」して確認するわけです。そのためなら業界の会食やパーティにも積極的に参加する。「○○さんのこと、知っていますか」「○○さんのことを知っている人を知っていますか」。そうやってわらしべ長者式に人を紹介してもらい、人脈を広げていきます。
プロの人脈をお金で買う
以上はヘッドハンターの例ですが、ビジネスエリートも、人脈を広げるために彼らと同じような努力と金銭的投資を惜しみません。
起業に際して人材を集めたい、例えばマーケターが欲しいと思ったら、まず業界の「顔」的な著名人がいる会合に参加してみる。目的の人が主宰するクラブや勉強会があるなら、いっそ入会してしまうこともあるでしょう。
狙いは、そうやって知り合いたい人材に近づいていき、彼が属するネットワークの一員になること。その業界の「顔」が自分のメンター(師匠)になってくれるようなら、話がいっそう早くなります。メンターの人脈ともつながることができ、そのなかで優秀なマーケターを紹介してもらえる可能性が高くなるからです。
企業がコンサルティング会社や会計事務所と契約するのも、「お金で人脈を買う」のと同様の狙いがあります。
彼らプロフェッショナルは、もれなくプロフェッショナルの人脈を持っているもの。そうなると彼らとの契約は、そのプロフェッショナルの人脈まで含めて買うのと同じ意味を持つことになります。
企業が高いフィーを払ってコンサルティング会社や会計事務所を頼るのは、そこまで期待してのことです。