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(2021/11/26 追記)

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嘘だらけの日露近現代史
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おわりに――今さらながらの自己紹介

『嘘だらけの日露近現代史』
[著]倉山満 [発行]扶桑社


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 平成二十七年一月、本書執筆中に警察庁は「自殺が激減し、とくに経済苦を理由とした自殺者が去年に比べて約二千人減った」と発表しました。平成十年以降長らく「自殺者三万人時代」が続いていたことを考えると、感慨深い思いがあります。



 もしかしたら、私もその中にいたかもしれない。



 世間の皆さんからすれば、私は順風満帆に世に出た苦労知らずの人間だと思われているかもしれません。しかし、私には人生で三度、「生きていたくない」と思ったことがありました。もし、この「嘘だらけシリーズ」がなければ、いったいどうなっていたか。


「もう生きていたくない」。でも、「どうやって生きていこうか」と考えていた平成二十一年六月。ブログ「倉山満の砦」を立ち上げました。もしかしたら自分にも何かできることがあるかもしれない、そう思ったからです。


 正直、自分は憲政史の専門家であり、経済には興味がありませんでした。お金がないことなど、なんとも思っていません。しかし、言論人として活動していくなかで、どれほど多くの人がデフレと増税で夢や人生を奪われ、自ら命を絶っている現実を、そして本来は責任をとらねばならない人たちが、高みの見物を決め込んでせせら笑っているという事実を知りました。


 だから、私は「まず経済」「経済のことを解決できないで、憲法や歴史の話ができるか」と考えるようになったのです。別にたいそうなことを考えていたわけではありませんが、かつての自分と同じように、ほんの少しばかりお金がないばかりに自分や周りを不幸にしてしまう、そんな人間を少しでも減らしたい。そんな世の中を叩き直したい。ただ、それだけでした。



 平成二十四年八月、『嘘だらけの日米近現代史』が刊行されました。最初からそんな大ヒットをしたわけではないのですが、それなりに評価され、今もロングセラーとなっています。私はこの作品で世に出ることができたと言っていいでしょう。このときの「おわりに」では、「日本は戦争に負けたフリをしているだけだ」と訴えました。今読めば、「自分の運命は自分で切り開くしかない。国家でも個人でもそれは同じだ」と言っているようにも聞こえます。


 このころの私は、外から見れば順風満帆の人生です。大学の学部長待遇でシンクタンクの所長に招かれました。しかし、私を知る人は「すさんでいた」と言います。また、画面の私は「笑わない人」と映っていたようです。世間は、とくにネット保守の間では安倍晋三自民党総裁の返り咲きで沸き返っていたなかで、なぜか一人だけ浮かない顔をしている。世間の見えないところで私の心はボロボロでした。実際、いろいろなことが重なり、追い詰められていたのです。


 秋、ある団体が主催する「安倍救国内閣」応援の集会と演説会に参加しました。


 日比谷野外音楽堂のステージで四千人の聴衆を前に絶叫しました。

「十四年間連続デフレ不況という、人類史上、類を見ない! 例を見ない! 世紀の大悪政をやった日本銀行に鉄槌を下すときじゃないでしょうか!! ……私が言いたいことはただ一つ。白川を討て!!!」


 私は言論人としてデビューして以来、ことあるごとに白川方明日銀総裁のデフレ政策を批判してきました。それは単に、白川や日銀が経済政策を誤ったからではありません。彼らはデフレで苦しんでいる人々に目を向けようとしないばかりか、そもそも自分たちの責任とも思っていない。それどころか、絶対の安全地帯で下々の者を見下すかのような態度でせせら笑っている。白川は、テレビ番組に出てきてヌケヌケと「デフレの原因は国民がバカだからだ」と言ってのけました。しかし、多くの日本人は、自分たちがなぜ努力をしても報われないのかを知らない。自分たちが小バカにされていることすらも知らない。


 だから、白川方明を世間に引きずり出して、夢や人生や、あるいは命や大切な人を失った人たちの怒りをぶつけてやろう。


 集会は場所を有楽町に移して演説会になりました。ついてきた二千五百人の聴衆と、通行人に向けて訴えました。

「(日銀の)貴族たちに、毎日お昼ごはん三百円で済ましているサラリーマンの気持ちがわかりますか? 三百社もまわって内定の一つとれずにフリーターをやっている若者の気持ちがわかりますか? 運よく正社員になれてもリストラが怖くて、ボーナスカットをされても我慢して、嫌な人間関係に耐えている人たちの気持ちがわかりますか?」


 かつての自分のことです。もっとも、私の境遇はもっとひどかったのですが。


 この瞬間、私は本気で「殺されてもいい」と思っていました。


 翌平成二十五年二月、安倍首相は白川日銀総裁から辞表を取りました。このときばかりは「安倍さんがやってくれた!」と小躍りしたものです。


 私は再びフリーの書き手となり、その年の六月に『嘘だらけの日中近現代史』を上梓します。書き手としてブランクがあったので勘を取り戻すのに大変でしたが、最後の四章は八日で書き上げました。これこそ担当の犬飼さんの支えがあったからです。『SPA!』統括編集長の渡部超さんをはじめ、扶桑社の皆さんの応援にも支えられました。


 おかげで『日中』は、私の中で最大のヒット作品となりました。この本のあとがきは、夢と希望に満ちています。アベノミクスで世の中は明るくなってきたからです。


 ところが、半年後には暗転します。

『嘘だらけの日韓近現代史』を書いている最中に、「安倍首相が消費増税八%を決断したらしい」との情報が入ってきました。デフレを脱却しないうちに増税などしたら、アベノミクスはつぶされてしまう。中国が喜ぶだけではないか。


 自民党の九割、公明党、民主党の幹部全員、財界、労働界、官僚、マスコミが、つまり日本の指導者層のすべてが、木下康司財務事務次官に忠誠を誓っている。そして国民に選ばれたはずの安倍首相が財務省の前に跪かされる。


 平成二十五年九月七日、私は狂ったように木下康司財務次官への攻撃を開始しました。

「たとえ日本が滅んだとしても、貴様に一太刀浴びせてやる。絶対に黒幕として安全地帯で天寿を全うさせてやるものか」と決意して。


 この目論見は見事に成功しました。インターネットで「木下」と検索すれば、一時はトップアイドルの木下優樹菜より上位にくるようになりました。「木下康司」の関連検索ワードは「増税」「国賊」などが並ぶようになります。こんなものは簡単に消せますが、デフレ期に増税しようとした木下氏への怨嗟に満ちたコラ画像はいまだに残っています。すでに「史上もっとも有名な財務事務次官」になったといっていいでしょう。


 しかし、肝心の声は届きませんでした。

「まだ増税阻止は間に合う!」「ここで増税を押し切られたら、戦後レジーム脱却など夢のまた夢だぞ!」「安倍さん、あんた長州人だろ!?


 十月一日、「私は長州人です」と二度も繰り返した安倍首相の「増税」記者会見は見ていられませんでした。


 平成二十六年十月、確かに単なる延長とはいえ、消費税一〇%増税は阻止しました。


 私は安倍内閣に二つだけ期待しています。一つは景気回復、もう一つは時間稼ぎです。むしろ、それ以外の余計なことはやってほしくない。景気回復も時間稼ぎもできなくなってしまうからです。安倍内閣で戦後レジームの脱却など、あまりにも空想的です。経済大国なのに自分の経済すら覚束なくて、何ができるというのか。


 米中両超大国に小突き回される日本、それどころか北朝鮮や韓国にすらなめられている日本。彼らと張り合うには、プーチンのロシアのようにしたたかな国民にならなければならないでしょう。


 憎むべきだが、尊敬すべき強敵のロシアに学ぶべきところは多い。しかし、果たして我が国が再び幕末維新のような奇跡を起こせるのはいつの日でしょうか。


 命には懸け時がある。その日まで、読者の皆様とともに研鑽を続けたいと思います。


 相変わらず、このあとがきにはロシアのことがどこかにいってしまったようですが(笑)。



 またしてもではありますが、扶桑社担当犬飼孝司さんには二週間も締め切りを遅らせ、発売月に突入してからこの「おわりに」を書くという大迷惑をかけている。三跪九叩頭でお詫びをしたうえで、ここまで引き立てていただいた感謝の意を表したい。

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