『巨人軍の巨人 馬場正平』
[著]広尾晃
[発行]イースト・プレス
前に触れたように、巨人の一軍と二軍は、入れ替えが非常に少なかった。しかし夏の東北、北海道遠征の成績を見て、一軍の首脳陣は、馬場正平を一軍に上げることにした。
この時期、巨人の投手陣はエースの大友工が故障し、2位、3位に低迷していた。ラジオ解説者の小西得郎は、
「とっかえひっかえ出る投手がこう打たれてはもう施すすべもありません。こうなったら思い切ってあの巨漢の馬場正平でも使ってみたらどうなんでしょうかねえ。案外目先が変わって、立ち直りのキッカケになるかもしれませんよ」
この声が影響したかどうかはわからないが、馬場が一軍に引き上げられたのは、8月21日の広島戦だったと思われる。当時のインタビューで「デビュー戦よりも、一軍に入ってはじめて広島で試合練習した時のほうが上がりました」と言っているからだ。