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封印された鉄道史
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あとがき

『封印された鉄道史』
[著]小川裕夫 [発行]彩図社


読了目安時間:4分
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 本書では、鉄道会社が決して公にしない「封印された」逸話を数多く集めている。


 その中には、鉄道会社にとって耳が痛い、あまり書いて欲しくない醜聞や黒歴史もあったことだろう。


 鉄道会社は公共の交通を担っている反面、民間企業でもある。企業防衛をしなくてはならない立場にあるので、きれいごとばかりを並べ立てるわけにもいかず、不都合な話を封印するのは、ある意味当然のことだと思っている。ここでそうした体質を指弾するつもりもない。


 これまで鉄道といえば、車両や線路など、ハードの面ばかりが注目されることが多かった。たしかに鉄道車両は個性的で、マニアでなくても魅力的に見えるものが多い。


 だが、実は鉄道の面白さはハードだけでなく、ソフトの面にも多く存在している。世界一正確で優秀だとされる日本の鉄道。本書で繰り返し述べてきたように、それを実現しているのは、運転士や保線員、司令官など鉄道の運行に携わる人々である。そうした人々が日々、どのように技術の向上に腐心しているのか、そういった面を知ることも鉄道の楽しみ方のひとつなのではないだろうか。


 事実、鉄道の歴史をひも解いてみると、鉄道というのは実に人間臭いものであることが分かる。政争の具になることもあれば、利権の舞台になったこともあった。2027年には中央リニアの開通も控える。今後もそうした泥臭いドラマは繰り広げられていくことだろう。本書を読んで、私たちが普段、通勤や通学で何気なく使っている鉄道がヒューマンドラマでもあるんだなと、新たな鉄道の楽しみ方に気付いていただければ幸いである。


 最後に、今まで鉄道業界を見つめてきた者として危惧していることがある。


 2010年2月から3月にかけて、撮り鉄と呼ばれるファンの暴走行為が連日、新聞各紙をにぎわせた。


 ご存じかもしれないが、撮り鉄とは鉄道写真の撮影を趣味とする鉄道ファンのことを指す。希少価値のある被写体を好む傾向があり、その日限りの“さよなら列車”の運行時やSLの臨時運行の際などに、駅や沿線に大挙して押し寄せる。一部の撮り鉄の中には、熱中するあまりフェンスを乗り越えて線路内に侵入したり、「撮影の邪魔だからどけ!」などと一般利用者を威嚇するような者もいる。そうした一部の暴走行為は昔から鉄道職員や鉄道ファンの間で問題になっていた。


 そうした行きすぎた鉄道マニアの姿を如実に表しているのが、漫画『月館の殺人』(綾辻行人原作、佐々木倫子漫画、小学館)だろう。


 同書は、いわゆるミステリーの体裁をとっており、撮り鉄の暴走行為により父親を失った子供が鉄道マニアに復讐するという筋書きになっている。随所に鉄道マニアの生態を面白おかしく盛り込んでおり、コレクションのために鉄道グッズを盗む「盗り鉄」まで登場する。漫画だから誇張して描かれているのかというと、決してそうではない。列車のプレートを盗むなどはまだ序の口で、駅の自動券売機まで盗もうとしたマニアも実在している。こうした一部のマニアの暴走が、鉄道趣味に対する世間の過小評価につながっているのだとしたら非常に残念なことだ。


 近年では、若い女性の間でも鉄道旅行を趣味とする、ライトな鉄道ファンが増えている。仮面ライダーを演じた半田健人氏のように鉄道ファンを公言する有名人も出てきているし、鉄道の知識を売りにした鉄道アイドルまで登場している。


 一昔前まで鉄道趣味といえば、暗くてモテないというのが一般的だった。しかし、現在ではそれも変わりつつあるのだ。


 鉄道とは、実に奥深い世界である。


 より多くの人がその楽しみを共有できるよう、鉄道ファンには一層の紳士的な態度が求められているということだろう。

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