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(2021/11/26 追記)

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本当は怖い京都の話
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エンタメ
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【妖怪の聖地として町おこし】 33 百鬼が夜行した妖怪ストリート

『本当は怖い京都の話』
[著]倉松知さと [発行]彩図社


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 ●妖怪電車が走る京都


 新選組の壬生屯所があった場所からほど近い四条大宮駅から、風光明媚な観光地・嵐山にかけて、ここ数年、夏に「妖怪電車」なるものが運行されているのをご存知だろうか?


 その電車は、「(らん)(でん)」の愛称を持つ京福電鉄が企画したイベントで、平成19(2007)年に、沿線の東映太秦映画村で開催された「世界妖怪会議」に合わせて始まったようだ。


 どんな電車かというと、車内はブラックライトで青白い光が灯り、薄気味悪いBGM、いかにも妖怪がいそうな雰囲気の中、本当に妖怪が電車に乗っている……というもの。


 一般の人は、普段の運賃を支払うのだが、一見して妖怪と見える衣装、メイクなどで化けてきた人については、50円で乗車でき、車内で存分に乗客を怖がらせたり、また、それぞれのコスプレを楽しめるのだ。


 最近は、AKB48にちなみ、「妖怪総選挙」も実施され、妖怪電車用フェイスブックに妖怪各々の写真をアップし、「いいね!」と評価された数などを参考に優勝者が決まるという動きもあるようだ。


 しかし、妖怪会議が開かれたとはいえ、この電車がなぜ、その後もずっと続いているのか? それにはワケがある。


 京都という土地、とりわけ、嵐電沿線には、妖怪と深い関わりのある場所があるからだ。それが、一条通り、中でも現在の大将軍商店街辺りなのだ。



 ●妖怪ストリート


 嵐電北野白梅町駅の東南、北野天満宮の南側にある大将軍商店街は一条通りにある。実はこの通りは、道幅はかなり狭くなったものの、平安の昔からほぼ変わらず「一条通り」として同じ場所に存在している。


 この一条通りを、かつて妖怪たちがウヨウヨと行列をなして通ったという怪異現象が伝わっている。それが「百鬼夜行」と呼ばれる伝説だ。『今昔物語集』には、深夜、鬼の行列に出くわした者が九死に一生を得る説話がいくつか記されている。


 まだ若き安倍晴明が、陰陽師の師のお供をしていると、妖怪の行列が前からやって来るのが見えたため、居眠りしていた師に伝え、師は鬼たちから姿が見えないように対処し、事なきを得た。これを機に晴明は師に見込まれ、陰陽師の術を伝授されることになったという話も載っている。


 また、この通りを歩いた妖怪たちを絵にしたものも広く知られ、特に室町時代の作で、あの一休さんがいた大徳寺真珠庵所蔵の百鬼夜行絵巻は有名だ。


 そんなこともあって、大将軍商店街では、この一条通りを「妖怪ストリート」と命名し、各商店が妖怪に因んだ取り組みを心がけている。


 例えば、「お食事処 いのうえ」では、真っ黒な器に真っ黒なスープ、その中から紫色をした麺がのぞき、血のように真っ赤なパプリカがトッピングされ、中央に鬼太郎の目玉おやじかと一瞬見まごう、ピータンを使った煮玉子を配するという徹底ぶりの「妖怪ラーメン」が人気だ。お味は意外とあっさりでスープも美味である。


 また、「モノノケ市」は、全国から様々な妖怪作家、サークル、企業が集まり、妖怪をテーマにしたオリジナルの雑貨、陶器、アクセサリー、同人誌、写真集、ぬいぐるみ、衣類などを販売する「妖怪アートフリーマーケット」として毎回盛況だ。


 さらに、妖怪の格好をしてこの一条通りを行進し、現代に「リアル百鬼夜行」を蘇らせようという行事も大人気。


 妖怪といえば、水木しげるの出身地・鳥取県を思い浮かべる人も多いかも知れないが、京都の一条通りは歴史的にも「妖怪の聖地」としての強いブランド力を持っていて、それを存分に活かしているのがこの商店街、そして電車といえるだろう。



 ●もったいないお化けの付喪神


 ところで、百鬼夜行絵巻に描かれる妖怪、お化けの主役は、鬼や幽霊ではなく、意外なことに身の回りにある日用品であることが多い。欠けたお茶碗や破れた傘、弾かなくなって捨てられたお琴、石臼や鍋、壺など、日常の生活で使うものがお化け、すなわち「(つく)()神」となって描かれている。


 付喪、とは()()()のことで「長い時間(九十九年)や経験」、また100から1を引いて「白」となることから「白髪」も連想させ、「長い時間や経験を経て神に至る物(者)」を表す。


 これは、室町時代の軽工業の発達で、生活道具が大量に出回るようになり、身の回りのものが安易に消費されるようになったことと無縁ではないだろう。ただし、そうした物を捨てることは、手入れの疎かな古道具を安易に用いることによる破損や事故の回避でもあるようだ。


 日本人には(いにしえ)から、あらゆるものに神様や魂が宿るという()()(よろず)の神への信仰が根付いている。だから、日用品が化けて人間を戒めるというストーリーが成立したのであろう。


 平成16(2004)年、ケニア出身の環境保護活動家、ワンガリ・マータイさんは、環境分野で初めてノーベル平和賞を受賞したが、彼女が広めた言葉「MOTTAINAI」は、遠い遠い昔、この一条通りで、妖怪達が最初に広めたのかも知れない。

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