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現役営業マンが明かす 不動産屋のぶっちゃけ話
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エンタメ
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「事故物件」と不動産業者

『現役営業マンが明かす 不動産屋のぶっちゃけ話』
[著]関田タカシ [発行]彩図社


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「関田さん、マンションの事故ってどこまで説明します?」


 不動産業界内では、横のつながりも結構ある。「情報交換会」というもっともらしい名が付いた、同業者同士の「飲み会」も少なくない。


 広い会場を用意したような大々的なものもあれば、知り合いの業者同士数名が集まって飲むこともしばしばだ。


 不動産の売買仲介業者だけではなく、不動産の仕入・売買・賃貸など、普段は直接絡みのない業種の人とも知り合い、話を聞くことができるため、私もたまに参加する。


 そんな会合で、「事故物件の説明義務」についての話題が出た。他企業で売買仲介を行っている佐々木さんという営業マンが、冒頭の質問を私にしてきたのである。


 ちなみに、彼は最近売買仲介業界に転職してきたということで、貪欲に情報収集に取り組んでいた。


 さて、ここで言う「事故」というのは、かつて物件の部屋の中や庭で起きた死亡事故など、心理的なマイナス要因のことだ。


 そして、こうした「事故」があった土地や建物は「事故物件」と呼ばれ、価格が安くなって市場に出ることが多い。


 私は佐々木さんに対し、普段自分が行っている説明をありのままに答えた。

「私は基本的に、分かる限りの内容は説明しますよ。重要事項説明書にも書いていますし」

「でも、共用部分での事故は、書かないことも多いって聞いたんですけど」

「ええ。私は書いていますけど、伝えないこともあるみたいですね」

「そうなんですよ。関田さんのように正直に書いてしまったら、お客さんが引いちゃいませんか? そもそも、部外者が来て飛び降りるケースが多すぎるし……」

「確かに、部外者の飛び降りは多いですね。でも、だからこそ私は言うようにしてるんです。『どこのマンションでも結構飛んでますよ~』って感じの、さらっとした口調で。重要事項説明書には、『平成○年○月に対象不動産マンションの10階共用廊下部分より、飛び降りがありました』みたいな感じで書きますかね」


 ハタ迷惑な話だが、駅から近くに位置する高層マンションなどでは、勝手に侵入してきた部外者による飛び降り自殺が結構頻繁にあったりする。オートロックがなく、誰でもエレベーターに乗れてしまうようなマンションは特に「選ばれ」やすい。


 そして、売買対象となるマンションの室内での事件や事故ならばむろん告知事項になるのだが、廊下からの飛び降りなど、物件の「共用部分」で起きた事故についての告知義務は微妙なところだ。


 よって、会社や営業所の方針・判断により「話す場合」と「話さない場合」が出てくるのである。

「なるほど……。あっ、そうだ。もう1つ聞きたいことがあったんです。ちょっと前、


 硫化水素自殺が流行ったこと、関田さんは覚えてますか?」

「ええ。覚えてますよ」

「あれって、どうもガスが下に行っちゃうらしくて、5階の部屋で事件があったマンションで、そのとき、5階から下の住民全員が避難したそうなんですよ。それで私、このマンションの2階の部屋を担当しているんですが、関田さんなら事件のことを話します?」


 私は、それまでこのような事例には出くわしたことはなかったのだが、今後こうした物件を扱ったときはこうするだろうな、という見解を述べた。

「部屋を購入したお客さんが、他の住民から『実はこんな事件があったんだよ』って、後になって言われても気分が悪いでしょうし、私なら、『直接は関係ないけど、5階でこんなことがありましたよ』って、あらかじめ伝えておくでしょうね」

「そうですか……。いやぁ、実はそのマンションの件、おととい契約が終わってて、結局私、事件のことは言わなかったんですよね……」


 佐々木さんがそう言い終えた瞬間、横で聞いていた、彼と同じ会社に勤める先輩社員が話に入ってきた。

「いや……でもまあ、ケースバイケースですよね。うちの会社の場合、共用部分の事故は面倒だから、書かないことが多いんですよ……」


 佐々木さんの先輩は、少々バツが悪そうだったが、共用部分の事故の告知は必ずしなければならないものではない。また、他社の方針に口をはさむ権利もないため、私は曖昧にうなずいておいた。



 さて、私や佐々木さんを含め、不動産の「売買仲介業」に従事している者にとっては、前述のように事故物件の「説明範囲」が問題になることはあっても、事故や事件が起きた直後の「生々しい部屋」などを見る機会はまずない。


 一方、同じ不動産業界でも、「賃貸・管理業者」の人々は、第一発見者になるケースも少なくない。


 以下は、先ほどとは別の飲み会で、不動産の管理会社に勤める知人の井上さんから聞いた話だ。



 賃貸物件を管理していると、その入居者からの家賃の振込みが滞ることがある。単純に経済的な事情で遅れていることもあれば、滞納の常習者で逃げ回っている場合もあるのだが、連絡さえ取れない状況のときは、管理・督促の担当者が直接入居者の部屋まで赴く。


 あるとき、井上さんは家賃の振込みがなく、連絡が取れなくなった入居者が暮らす賃貸物件へ家賃の回収に向かうことになった。


 入居者は、それまで滞納など一度もしたことがない真面目な男性で、かつ、かなり高齢だったこともあり、井上さんとしても、若干の嫌な予感は抱いていた。


 部屋の玄関まで到着し、呼び鈴を何度も鳴らすものの反応がない。ただ、部屋の外にいるにもかかわらず、何やら鼻をつくにおいがする。


 どうやら、嫌な予感が的中してしまったようだと思った井上さんだったが、確かめないことには仕方がない。そこで会社に連絡し、警察官立ち会いのもと、部屋に乗り込むことになった。


 緊張しながらドアを開けたものの、それほど広くない室内には、おじいさんの姿は見えない。ただ、においは外よりもさらにきつく感じられるようになり、それは、浴室から発生しているようだった。


 覚悟を決めて、警察官と2人で浴室の扉を開け、中を覗き込む。


 すると、やはりおじいさんは浴槽の中にいた。ただし、「形」はもはやおじいさんではなかったという。

「……シチュー状態だよ。ドロドロ」


 井上さんは浴槽内の様子をそう形容し、「今でも忘れられないよ……」と嘆いた。



 さすがに、井上さんほどの壮絶な体験はないが、私自身も、事故物件を扱ったことはあり、「現場」を感じたこともある。それが、「自殺物件」を案内したときのことだ。


 その物件は、これといったセールスポイントもないマンションだったのだが、価格だけが妙だった。相場から約2割も安い金額で、市場に出てきたのだ。


 間取りなどが掲載された販売図面をよくよく見れば、案の定「告知事項有」という記載。事故物件の可能性が大である。


 物件について、売主の法人に電話で問い合わせてみると、事務の女性が明るい声で答えてくれた。

「あ、告知事項ですか? はいっ、自殺です!」


 自殺か……と思いつつも、私はこのとき、「とにかく低価格優先」でマンション購入希望のお客様を抱えていたので、事故物件だということも含め、その人に物件について伝えたところ、「それでも見に行きたい」という答が返ってきた。


 そこで、もう一度売主の法人に電話をかけると、どうやら再び同じ女性が出たようだった。お客様からは、早速翌日の午前中には見学したいと言われていたので、その日時で案内が可能かどうかを尋ねる。

「そのお時間ですと、まだ『清掃』をしているとは思いますが、ご見学していただいて構いませんよ」


 そして翌日。私はお客様と共に、「自殺物件」へと向かった。問題の部屋に着くと、玄関の鍵はかかっておらず、ドアを開けると、「清掃員さん」のものと思しき靴が並んでいた。

「すみませーん! 部屋の中、ご案内してもいいですか?」


 私が声をかけると、「ドウゾ~!」という威勢のいい声が返ってきたので、お客様と一緒に部屋に入った。


 すると、室内ではガタイのいい黒人さんたち数名が、パワフルに雑巾がけをしている真っ最中という光景が広がっていたのである。



 さて、この項では最後に、事故物件に関連した、とあるウェブサイトを紹介しておきたい。


 それは、「大島てる」というサイト(http://www.oshimaland.co.jp/)で、すでにご存知の方も多いかもしれないが、一言で表せば、「事故物件公開サイト」である。


 具体的には、東京都を中心に、神奈川県の一部を含む地域における「事故物件」について、「事故の日付」「場所」「物件名」「事故理由」「建物外観写真」などが、「Google マップ」上で見られるようになっているのだ。


 もちろん、ここに未掲載の事故物件も少なくはないだろうが、なかなかの充実度で、「不動産版ウィキリークス」という異名も確かにうなずける。


 ちなみに、不動産業界の中でもとりわけ買取転売を目的とする業者の中には、一応このサイトを「確認しておく」担当者も少なくないそうだ。


 会員登録などもなく、無料で誰でも見られるサイトなので、興味のある方や、物件を探している方などは、ぜひ実際に一度見ていただきたい。

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