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(2021/11/26 追記)

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現役営業マンが明かす 不動産屋のぶっちゃけ話
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エンタメ
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広告の売り文句は難しい

『現役営業マンが明かす 不動産屋のぶっちゃけ話』
[著]関田タカシ [発行]彩図社


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 不動産の広告は、怪しいものも多々あるものの、基本的には「宅地建物取引業法」「不当景品類及び不当表示防止法」「不動産の表示に関する公正競争規約」などにより、表示の規制がされている。


 では、次の7つの売り文句の中で、不動産広告にそのまま記載しても、まったく問題のない表現はどれか当ててみてほしい。



 ①最上階につき日照・眺望良好!


 ②収納豊富!


 ③駅至近!


 ④リフォーム済み!


 17畳の広々LDK!


 ⑥大変綺麗にお使いです!


 ⑦敷地内にスーパー有! 利便性抜群!



 マンションでも一戸建てでも、賃貸でも売買でも、不動産が掲載された宣伝広告であれば、どの売り文句も見かけたことがあるような内容ではないだろうか。


 それでは、正解を発表しよう。


 実際には、どこまでが許容範囲であるかは業者や監督者(店長)の判断でも大きく異なるのだが、厳しく見れば、前述の内容のまま記載して何の問題もないのは、①の「最上階につき日照・眺望良好!」、これのみである。


 では、個別に理由を見ていこう。



 ①最上階につき日照・眺望良好!


 最上階という根拠が明示されていて、それが事実であればこの表現で構わない。



 ②収納豊富!

「何をもって、何と比較して豊富なのか」が不明であり、この表現はよろしくない。「各居室に収納あり」や「ウォークインクローゼット○㎡付設」など、事実をありのまま伝えるのであれば問題ない。



 ③駅至近!


 何分以内なら至近と言っていいのか……などと悩む営業マンや、広告作成担当者もいるが、そもそも、「至近」という言葉がまずい。なぜなら、現状で駅直結のマンションに住んでいる人から見れば、たとえ駅まで5分でも遠いからだ。


 よって、駅に近いことをアピールしたいのであれば、「○○線○○駅 徒歩○分」と表記し、「○分」の部分の色を変えたり、大きく表示するなどの工夫をすべきである。



 ④リフォーム済み!


 このフレーズは、本当にリフォームをしているのであれば問題なさそうだが、単独での使用は好ましくない。


 例えば、10年前に行った壁紙の張り替えと、1ヶ月前に行ったキッチン一式の交換は、どちらも「リフォーム」ではあるが、内容が大きく違う。そのため、「いつ、どこをリフォームしたのか」を明瞭にする必要があるのだ。



 17畳の広々LDK!

「駅至近!」の表記と同じく、17畳のLDKに関して、必ずしも皆が皆「広々」と感じられるわけではない。アピールの方法も駅の例と同様で、表記はあくまで「17畳のLDK」に留め、色・文字の大きさなどで調整を図ることが望ましい。



 ⑥大変綺麗にお使いです!


 査定に行った際、綺麗な状態を保ったまま生活していたことが分かる住宅であれば、営業マンの心理として、この売り文句は入れたくなる。また、2、3年しか経っていないような築年数の浅い物件の広告には、実際に使われているケースも見かけるが、これも問題なしとは言いがたい。


 理由は、綺麗の「程度」が人によって異なるからだ。仮に、購入を検討しているお客様の現住物件が建って間もない新築マンションなどであれば、大抵の不動産はそれよりも汚れているだろうから、「嘘つき!」と言われかねない。



 ⑦敷地内にスーパー有! 利便性抜群!

「敷地内にスーパー有!」、これは確かに「利便」である根拠だと言えるだろう。しかし、「抜群」という表現が問題だ。飛び抜けて優れていることを表すこのフレーズは、使用禁止とされるケースが多いのである。



 また、不特定多数へ向けての情報発信となる新聞折り込み広告などでは、掲載・記載をしてはいけない表現はもちろん、掲載しなければならない要件(交通・所在・面積など)も細かく定められている。


 広告を目にする人が比較対象とするのは、ほとんどの場合、「現在の自宅」であるため、万人が共感できる売り文句というのはなかなか難しい。


 そんな事情もあって、「主観が入る売り文句」は原則禁止されており、「綺麗・広い・近い・静か・大きい」といった表現は、使用が制限されるのである。


 それでも、明らかに作為的な売り文句で、がっかりさせられるものも少なくないのが現状だ。もし、あまりにも酷いと感じる広告と出合った場合には、公正取引協議会や消費者庁、宅建業を監督する都道府県庁に「チクる」のも一手である。



 さて、不動産広告においては、その表現方法に注意をしなければならないことはここまで述べてきた通りだが、実は、こうした種々の売り文句は、物件の担当者が自分で考えているのだ。


 ある日、私は営業所にて、広告のもととなる空白だらけの販売図面を前に、頭を悩ませていた。

「ん? 関田君、どうした?」


 私の動きがストップしたままなのを見かねたのか、副所長の吉川さんが声をかけてきてくれた。

「実は、媒介(売却依頼)を受けているマンションの、売り文句がなくて……」


 私が、物件の概要が書かれた紙を振りながらそう言うと、吉川さんはすかさず切り返してきた。

「んなこたぁないよ! どんな物件でも、1つや2つは長所があるさ。それを見つけてやるのがプロなんだからな。よし、俺が手伝ってやる」


 さすがは、不動産業界に20年もいるベテラン選手だ。吉川さんならば、私が見落としているポイントや、思いもよらない売り文句を見つけてくれるに違いない。

「はい! ありがとうございます!」


 こうして、2人で物件のスペックを1つ1つ確認していく作業に入った。


「よし、駅までの距離は?」

「徒歩19分です」

「弱いな……」


「急行は?」

「停まりません」

「そうか……」


「駅からは平坦か?」

「結構アップダウンがあります」

「なるほど……」



 立地面での弱さが露呈したあたりで、吉川さんは上着を脱ぎ、ヒートアップしてきた。私もそれにつられ、やり取りの声が徐々に大きくなっていく。


「築年数は!?

「昭和60年築です!」

「古いな!」


「間取りは!?

40㎡の2DKです!」

「あのへんは、70㎡前後の3LDKが主流だったな!」


「向きと階数はどうだ!?

「真西向き、2階です!」

「西向きか!」


「総戸数は!?

18戸です!」

「小規模だな!」


「オートロックは!?

「ありません!」

「あっそう!」


「ペットは!?

「飼えません!」

「ふーん!」


「リフォームはいつしたんだ!?

「してませんっ!!

「しろよ!!


「ハァ……ハァ……」

「ゼイゼイ……」



 テンポの良すぎる掛け合いが続いたせいで、2人とも息が上がってしまった。


 そして、吉川さんは、わざとらしいほど大きな声で「フゥー」と溜め息を1つついた後、きっぱりと言った。

「うん。良いところは……ないな!!


 ないのかよっ!?


 副所長の腕をもってしても、どうやら無理だったようだ。



 しかしその後、このマンションは「低価格」を最大の売りにして、なんとか売却を完了することができた。


 自分が、本当に「良い」と思える物件を主観的に表現できないことも辛いが、アピールポイントがない物件の売り文句を考えることは、なお辛いのである。

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