読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン
0
-1
kiji
0
1
1102041
0
謎解き超常現象4
2
0
1
0
0
0
0
エンタメ
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
1 【科学者と裁判所が本物と認めた?】超能力者ユリ・ゲラーの真実

『謎解き超常現象4』
[著]ASIOS [発行]彩図社


読了目安時間:8分
この記事が役に立った
1
| |
文字サイズ



【伝説】


 世界で最も有名な超能力者といえば、※①ユリ・ゲラーをもって他にいない。ユリ・ゲラーは3歳の頃、近所の家の庭で宙に浮くアルミニウムのような球体に遭遇し、そこから発射された光線を浴びたことによって超能力者となったとされる。


 彼は1969年から、イスラエルで超能力ショーを行っていたが、超心理学者のアンドリヤ・プハーリックに見いだされて72年に渡米。さらにゲラーの超能力を見て感動した元宇宙飛行士の※②エドガー・ミッチェルによってスタンフォード研究所に紹介された。スタンフォード研究所では、ゲラーは鉄の箱の中に入れたサイコロの目を箱に触りもせずズバリ透視して見せたり、外部と絶対通信ができないよう隔離されたシールドルームの中で、テレパシー能力を駆使して、送信者が書いた図形を受け取って当ててみせたりした。


 ゲラーがスタンフォード研究所で受けた一連の科学実験は、7410月に、科学界で最も権威ある雑誌『※③ネイチャー』に学術論文として掲載された。だから、ゲラーの超能力は、科学界でもすでに公認されたものといってよい。


 ゲラーは1973年に初来日し、テレビの前でスプーン曲げの妙技を見せたほか、日本中の家庭に念力を送って、茶の間に用意させた止まっている時計を動かしてみせ、日本中に一大超能力ブームを巻き起こした。


 米国の奇術師※④ジェームズ・ランディなど、ゲラーを単なる「マジシャン」だと批判する一部の懐疑主義者などがいまだ残っていることは確かだ。だが、日本の雑誌でランディから投げかけられた侮辱的な言論に対して、ゲラーは日本で名誉毀損の訴訟を起こし、1993年に勝訴もしている。


 ゲラーの超能力は科学界でも法曹界でも、すでに確立したものだといえるだろう。

【真相】


 ●『ネイチャー』に掲載された論文の内容


 ゲラーの超能力実験が、著名な科学雑誌『ネイチャー』に掲載されたということは事実だ。だがそれは、多くの科学者に彼の超能力を確信させるには、ほど遠い質の悪い論文だった。


 たとえば、ゲラーは鉄の箱に触らず、中に入っているサイコロの目を当てたということになっていたが、後の調査によれば実際には、箱に何度か触れていたとされる。


 また、テレパシー実験の際に、ゲラーは外部と接触できないシールドルームに入っていたことになっているが、あとでこの実験室を調べた心理学者などによると、部屋は※⑤全然シールド状態になっておらず、壁には3、4インチ(約8~10センチ)の穴が空いていて、そこから隣の部屋の中が覗けるようになっていた。さらには、部屋には透けて見えるハーフミラーの窓まで付いていたという。


 奇術師のジェームズ・ランディは、テレパシー実験の際に、ゲラーの助手が研究所内を自由に見て回れる状態にあったことを問題視している。助手が覗き見たターゲットの情報をゲラーに伝えていた恐れがあるというのだ。


 さらにいえば、ゲラー自身にも監視が付けられておらず、ゲラー本人が研究室内を歩きまわって、他の部屋を覗けたはずだとさえ指摘されている。

『ネイチャー』誌には、この論文を事前に読んだ外部の3人の査読者の批評も同時に掲載されていた。査読者からは「(論文の著者らは)油断も隙もないこの複雑怪奇な領域について、超心理学者が過去に学んできた教訓を何も考慮してない」とか、「心理学雑誌だったら、受諾されない論文」など、さんざんな評価を受けていた


 あとで問題視されることが確実な、ここまでボロクソに言われているような質の低い超能力論文を、『ネイチャー』がなぜ掲載したのかが不思議なくらいだ。


 ちなみに『ネイチャー』の論文には、ゲラー十八番のはずの「スプーン曲げ」は扱われていない。これは、コントロールされた状況下で、ゲラーがスプーン曲げの超能力を発揮することに失敗したためだ。さらに封をした封筒の中身を読むという透視実験も、研究所のコントロール下で失敗に終わっている。



 ●名誉毀損裁判の真相


 1993年に日本で判決が出たゲラーとランディの名誉毀損の訴訟も、単純にゲラーの勝訴とは言いがたい判決だった。


 月刊誌『※⑥DAYS JAPAN』(1989年8月号)に掲載された、ランディのゲラーに関するコメントが名誉毀損として争われた裁判だった。具体的には、ゲラーが行った超能力マジックをランディがみな暴露してしまったため、ゲラーの超能力を心底信じていたウィルバー・フランクリンというジャーナリストが恥じいって「拳銃自殺してしまった」ということと、ランディがゲラーのことを「完全な人格異常、社会的病質者」と同誌上で述べた、ということが問題視された。この発言でゲラーの社会的信用が失墜し、同時期に日本で行われた超能力ショーの入りが悪くなり、1億5000万円相当の損害を被ったので支払え、として起こされた裁判であった。


 だが実際には、入手した判決文によると認められたのは50万円の支払いだけ。つまり、請求額の300分の1だ。その上、訴訟費用については95をユリ・ゲラー側が持つこととされていた。弁護士費用など、もろもろの費用を考慮すれば、どう考えても※⑦ゲラーにとって赤字となった裁判だったはすだ。


 肝心の名誉棄損について裁判所は「原告の社会的評価を低下させるような原告自身に関する具体的な事実の摘示は含まれていない」と判断し、「完全な人格異常、社会的病質者だと思うね」と述べている部分についても、「原告の人格価値について社会的評価が低下するとは考え難い」とした。つまり、ランデイの発言によってゲラーの社会的評価が下がった、という主張は退けられている。


 ただ「人格異常云々」の下りについては「原告の名誉感情を害し、その程度も社会通念上許される限度を超える」とみなされ、その精神的苦痛に対し、50万円払えと命令されたのに過ぎなかった。


 以上をまとめると、この裁判で妥当と判断されたことは、「超能力者を批判することが、その社会的信用を失墜させることになる」という主張でもなければ、ましてや、ゲラーが持つと称している「超能力の実在性」などではまったくない。認められたのは「人格異常、社会的病質者ってのは、やっぱ言い過ぎだよね」ということに過ぎなかった。


 ちなみにゲラーは、この他にもランディや、ランディが所属していた懐疑主義団体CSICOP(現CSI)に対して米国で数多くの訴訟を起こしていた。だが裁判所は1995年に、「軽薄な苦情」で裁判を起こしたとしてゲラー側に対し12万ドルの賠償金をCSICOPに払うよう求め、ゲラーとCSICOPの間の和解が成立している。裁判合戦はゲラーにとって、かなりの赤字となったようだ。


 2014年に来日した際にゲラーは、※⑧読売新聞紙上で「私が有名になったのは、私を否定し、批判した人たちのおかげ。無料で宣伝してくれるのだから、花を贈りたいぐらいさ。名前さえ正しく書いてくれれば、何を書かれても構わないよ」と述べていた。ゲラーもずいぶん丸くなったものである。

(皆神龍太郎)




       ■参考資料:


        Barry Karr「The Geller Case Ends:'Psychic' Begins Court-Ordered Payment of Up to $120,000 to CSICOP」『Skeptical Inquirer』(Vol.19, No.3, May/Jun 1995)


        『Nature』(Vol.251, October 18,1974)


        Davit Marks & Richard Kammann『The Psychology of the Psychics』 (Prometheus Books,1980)



※①ユリ・ゲラー

1946年生まれ。イスラエルのテルアビブ出身の自称超能力者。軍隊を除隊後、奇術をベースにした超能力ショーを行っていたところを超心理学者のアンドリヤ・プハーリックに見出されて渡米。スターダムにのし上がった。

※②エドガー・ミッチェル

1930年生まれ。アポロ14号の搭乗員として、月の表面を歩いた。もともとオカルトや超常現象に興味があり、アポロ14号搭乗中も個人的な超能力実験を行っていた。詳しくは『謎解き超常現象』を参照。

※③『ネイチャー』

1869年にイギリスで発刊された総合学術誌。記事の多くを学術論文が占める。

※④ジェームズ・ランディ

1928年生まれ。カナダのトロント出身のマジシャン、懐疑論者。CSICOPの創設メンバー。数々の自称超能力者と対決し、イカサマを暴露してきた。

※⑤全然シールド状態になっておらず~

部屋には遮断性を高めるために、部屋の中から外に連絡をとるためのインターフォンが設置されていた。当初は「内から外」の一方的な会話しかできないとされていたが、実際はボタンを押せば外からの会話も可能だった。

※⑥『DAYS JAPAN』

1988年から1990年にかけて講談社が発行していた総合雑誌。一度廃刊するが、同誌に関わっていた編集スタッフたちの手で復活。デイズ・ジャパン社から復刊された。

※⑦ゲラーにとって赤字

ちなみにランディは、支払い命令を受けた50万円もゲラーには支払っていない。

※⑧読売新聞紙上

ゲラーのインタビューが掲載されたのは、2014年1021日の朝刊。記事の中で8090年代に表舞台から姿を消していた理由を聞かれたゲラーは「米の情報機関で秘密の仕事をしていた」と答えている。

この記事は役に立ちましたか?

役に立った
1
残り:0文字/本文:3907文字
この記事を買った人はこれも買っています
      この記事を収録している本
      この本で最も売れている記事
      レビューを書くレビューを書く

      レビューを書いてポイントゲット!【詳細はこちら】

      この本の目次