【伝説】
2011年9月、衝撃的なニュースが世界を駆け巡った。名古屋大などが参加している国際共同チーム、長基線ニュートリノ振動実験※①OPERAの発表によれば、スイス・ジュネーブ近郊のCERN(欧州合同原子核研究機関)から730キロ離れたイタリアのグランサッソの地下施設に、地中を貫通してニュートリノを飛ばす実験を行ったところ、同じ距離に光を飛ばした場合より60※②ナノ秒早く到達したという。
読売新聞は「現代物理学の基礎であるアインシュタインの※③特殊相対性理論では、宇宙で最も速いのは光だとしている。今回の結果は同理論と矛盾しており、観測結果が事実なら物理学を根底から揺るがす可能性がある」と報じた。産経新聞も「光速で動く物体が時間が止まった状態だとすると、それよりも速いニュートリノは時間をさかのぼっているのかもしれない。すると、過去へのタイムトラベルも現実味を帯び、時間の概念すら変更を余儀なくされる可能性もある」と解説している。
「相対性理論は間違っている」という主張は以前からあった。相対論に矛盾を発見した者は数多い。しかし物理学者たちは「アインシュタインの説に間違いなどあるはずがない」と思いこみ、検証しようとしなかったのだ。
アインシュタインが特殊相対論を生み出す基礎になったのは、1887年にアルバート・エイブラハム・マイケルソンとエドウィン・ウィリアムズ・モーリーが行った「マイケルソン‐モーリーの実験」である。
当時、光は真空を満たしている※④エーテルを伝わるとされていた。地球は秒速30万キロでエーテルの中を公転しているから、進行方向からの光は速く、反対側からの光は遅く見えるはずである。