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絶対に足を踏み入れてはならない 日本の禁断の土地
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雑学
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一晩で30人が殺された村

『絶対に足を踏み入れてはならない 日本の禁断の土地』
[編]歴史ミステリー研究会 [発行]彩図社


読了目安時間:4分
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住民111人の村で起こった惨劇



 岡山県の北東部に位置する津山市加茂町は、町の9割が山林という、険しい山々に囲まれた地域だ。ブナやナラなどの木々が林立し、その合間を清流が流れるさまはまさに自然の宝庫といえる。


 この自然豊かな加茂町で、かつて日本の犯罪史上でも最大といわれる大量殺人事件が起きた。のちに「津山事件」、あるいは「津山30人殺し」と呼ばれることになったできごとだ。


 事件があったのは(とま)()郡西加茂村の貝尾・坂本集落である。当時の貝尾地区は全戸数23戸、住民は111人という小さな集落だった。


 犯人は21歳の青年、都井(とい)(むつ)()だ。たったひとりで11戸の家を襲い、一晩のうちに30人もの村人の命を奪ったのだ。しかも、犯行に要した時間はおよそ1時間半だった。



一晩で村人が激減する



 1938年5月21日深夜に事件は発生した。


 黒の詰め襟にゲートルを巻き、地下足袋(じかたび)を履いた都井は、ハチマキで頭に2個の懐中電灯をくくりつけ、首からは自転車用のライトを下げていた。


 一振りの日本刀と2本の匕首(あいくち)を紐で腰に固定し、手には9連発に改造したブローニング銃と約100発の銃弾を持った。


 彼がまず手にかけたのは祖母である。犯行後にひとり残され、肩身の狭い思いをさせるのはかわいそうだという思いからの行動だった。都井は眠っている祖母の首を目がけて斧を振り下ろした。


 前夜のうちに送電線を切断しておいたため、村は闇の中に沈んでいた。ここから都井は村を縦横無尽に駆け回り、次々と村人を手にかけていくのである。


 住民のほとんどが顔見知りというこの集落では、戸締まりをする習慣がない。都井は難なく近隣の家に踏み込むと、その家の妻に日本刀を突き立てる。一緒に寝ていた次男と三男も刺し殺した。


 その後はブローニング銃を使った。これは猛獣も仕留めることができるほどの威力を持った銃である。それが2発、3発と撃ち込まれるのだから、人間などひとたまりもなかった。


 命からがら逃げ出した住人の通報を受けて巡査が駆けつけたときには、すでに都井の姿は消えており、即死28名、重傷後に死亡した者2名、負傷3名という惨状だけが残されていた。


 その後大々的な山狩りが行われ、村から4キロほど離れた峠の山頂で、自殺している都井の姿が発見されたのである。


犯人をかりたてた当時の背景



 都井をこれほど残虐な犯行に駆り立てた背景には何があったのだろうか。


 小学校時代は優秀で模範的な生徒だと評されていた彼の性格が一変したのは、肋膜炎(ろくまくえん)を患ったことがきっかけだったようだ。


 そのうえ、徴兵検査では結核と診断され、丙種合格(不合格)になってしまった。当時は兵隊になってお国のために働くことが名誉だとされていた時代だ。この不合格は都井にとってかなりショックだっただろう。


 しかも、結核だとわかったとたん、親しくしていた女性たちの態度も急に冷たいものに変わった。


 遺書からは、とくに2人の女性に強い恨みを抱いていたことが(うかが)える。当初は彼女たちに復讐するために、犯行を思い立ったらしい。


 かつて結核は感染の恐れがあるといって、偏見の目で見られがちな病気だった。ただでさえ結核という病に打ちのめされていた都井は、他意のないひと言にも疎外感を募らせていき、狂気の犯行に至ったとも推測できる。


 しかし理由はどうであれ、多くの家族や知人をひと晩のうちに失うという事態は、残された村人に大きな衝撃を与えた。


 山林に囲まれた加茂町の風景はひと昔前の日本を思い出させる。集落には新しい家々が建ち並び、かつてのできごとを匂わせるものはない。若い人には事件があったことさえ知らないことも珍しくないようだ。事件はもはや過去のものとして風化しつつある。



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