『ガイドブックには載っていない タイ 裏の歩き方』
[著]高田胤臣
[発行]彩図社
はじめに
海外渡航先で日本人に人気のタイは、各種メディアで表と裏のおもしろさのほとんどが取り上げられてしまい、なにをやっても今さら感が拭えなくなっている。それなのに本書が2015年になって現れたのはなぜなのか。
やはりアメージング・タイランドはどこまでも底抜けにおもしろいからだ。
2015年3月7日、本編でも紹介する仏教刺青の寺「ワットバーンプラ」で、年に1回の老師への感謝の儀式が行われた。この寺の儀式は仏教刺青を入れた者が暴れ出すという奇異な光景が見られるということで有名だ。今年初めて見学に行ったのだが、これが「ザッツ・アメージング・タイランド」の様相を呈していた。
儀式が始まる2時間前、すでに神が降臨し暴れ出す者多数。会場では普通の中年男性が会場に座って待つ数千の信者のためにマイクで雑談をしているだけだ。にも関わらず、男たちにハヌマーン(サルの神)やトラ、老師が入り込んで、中央に祀られる仏教刺青の師で知られるルアンポープンの像に突進する。この暴走が始まるのは3分にひとりくらい。ときどきタイミングが合うと数十人に一斉降臨が起こる。その様は昨今のアメリカ映画では当たり前になってしまった全速力ゾンビ並みの異様さがあった。
暴走した男たちを、像の前に待機する兵士たち(この儀式のために呼ばれたらしい)が取り押さえ、持ち上げ、耳を引っ張ると入り込んだなにかが抜けていく。そして、男たちは照れくさそうな顔をして席に戻っていく。単なるトランス状態なのかもしれないが、実際に目の前で見るとその神秘さを肌身に感じることができる。これぞまさにアメージング・タイランドだ。
と、言いつつも、実際にはツッコミどころも多いのもまたタイらしさだ。神が降臨しているなら多少ムチャクチャな暴れ方をしていいと思うのだが、彼らは必ず通路を走る。それから、会場後方で降臨した肥満男性は像に到達する前に足がもつれて転倒することもしばしば。いやいや、神が降りているならば自分の身体能力も超えてくれよ。さらに、本儀式が始まって読経している最中はだ~れも降臨せず、儀式が終わった瞬間にこの日最大の一斉降臨。おまえら、絶対待ってただろ。
タイのアメージングな瞬間は、外国人旅行者が大勢訪れる観光地よりも、何気ない場所に落ちている。本書はそんなタイの一面をエグりとるべく、各地に足を運び、取材した結果をまとめたものだ。
本書では、タイをバンコクを中心とした中央部、チェンライなどの北部、コラートなどの東北部、パタヤなどの東部、ハートヤイなどの南部、そしてカンチャナブリなどの西部の6つのエリアに分けて、それぞれの夜遊びポイントや市販のガイドブックには載らないような、ディープな観光情報を紹介している。
本編でタイのおもしろさを疑似体験してもらい、また、チャンスがあれば実際に現地に足を運んで登場人物たちに会いに行ってもらえたら幸いだ。
それでは、タイの知られざるアメージングな旅にご案内しよう。