『ガイドブックには載っていない タイ 裏の歩き方』
[著]高田胤臣
[発行]彩図社
~本当のアメージングはバンコクにある! 強烈無比な置屋街
東南アジアの夜遊びジャンルに置屋というものがある。置屋を国語辞典で調べると「芸者や遊女を抱え、客の求めに応じて料亭などに差し向ける家または職業」とあるが、タイでは日本でいうちょんの間とか赤線とかそういった類いの売春宿のことだ。
しかし、タイも徐々にこのスタイルが終焉を迎えつつある。地方では地元男性たちが行く置屋は300バーツ程度から遊べるところがあり、東北のウドンタニー県の※サオファイデーンなどは有名。しかし、2014年12月中旬に警察の摘発があり、それ以来勢いが完全に失われて、※2015年4月現在は完全に消滅してしまった。
バンコクではとっくの昔に置屋はなくなり、かつて有名だった場所に足を運んでもその影もない。唯一、置屋らしい置屋はドンムアン空港の少し北のランシットに1軒あるくらいだ。
ただ、ローカルが遊びに行く場所がなくなったわけではなく、形態を変えて置屋らしきものは存続している。なぜ置屋らしい置屋がバンコクから消えていったのか。それは実際に足を運んでみてなんとなくわかってきた。
●変わりつつあるバンコクの置屋街
バンコクには、現在、置屋らしい置屋はない。
ただし、ローカルが遊ぶ場所がなくなったわけではなく、微妙に営業形態を変えて存続している。いまのバンコクのローカル向け風俗は次の3つのバリエーションに分かれる。
まず古式マッサージ。看板は古式マッサージとしながら、置屋とそれが融合したスタイルとなっている。表向きは健全でありながら、部屋で別料金を払えば本番ができる女性がいる。ローカル向けではカオサン通り付近からチャオプラヤを渡ったトンブリエリアに多い。近年はスクムビット通りに※日本人向けの手コキサービスの高級店なども現れている。
次にカラオケ店だ。登記上はカラオケの飲み屋なのに、客を座らせる気は一切ない。いきなり連れ出してホテル直行というコースだ。スクムビット通りソイ78が今最も熱い。連れ出し料はどこも700バーツ。BTSベーリン駅からも近いし、予想以上にかわいい子も多い。チップとホテル代を合わせても1000バーツくらいと高くもなく安くもなく。ここは※初心者でも簡単に行けるのでオススメだ。
最後に残るのがホテル常駐型だ。連れ込み宿なのか安宿なのかよくわからない怪しいホテルに女たちが待機している。
バンコクの置屋ホテルは中華街のヤワラーを中心に存在している。
かつて『ジュライホテル』があった7月22日ロータリーからラマ4世通りに繋がるマイトリージット通りに数軒ほど連れ込み宿があって、夕方くらいからその前に立ちんぼの女の子がたむろする。それから、マーブンクロンセンターの通りに繋がるバムルンムアン通りの総合病院「中華病院」真横の細い路地に『ニウヨットセー・ホテル』もある。別名ボーベー・ホテルだ。ここはまるでスクムビットの※テーメーのようにホテルの駐車場やカフェ内に女性たちが数十人待機している。部屋代が300バーツ、女性のサービス料は600バーツだ。
中華街からは外れるが、BTSラーチャテーウィー駅前のソイ・パヤーナークを進むと『シートン・ホテル』というタイ式のラブホテルがある。ここも常駐型で女がいる。ただ、ここは高い。部屋代込みで1時間2000バーツだそうだ。はっきり言ってあり得ない。そもそもボーベー・ホテルの600バーツだってあり得なさすぎるのだ。なぜなら、平均年齢が異常に高いからだ。とにかくおばさまたちばかり。ごく稀に「これだったら行ってもいいかも」というコスパと容姿が損益分岐点をスレッスレでかすめる女もいなくはなかったが、ばあさんを見すぎて30歳半ばが若く見えるという感じなのである。
果たして置屋が廃れてこうなったのか、こうなったから置屋が廃れたのか。
●バンコクの魔窟『プラソップスック・ホテル』
さて、最後に紹介したい置屋ホテルは『※プラソップスック・ホテル』だ。
中華街らしく中国名もあって『聯安大旅社(れんあんだいりょしゃ)』という。ここは足を運んだバンコクの置屋ホテルで最安値の580バーツを叩きだしている。
ヤワラーから中華病院へ行くバムルンムアン通りとカオサン通りに向かうウォラチャック通りの交差点そばにあるセブン‐イレブンの横から入る。タイ式長屋の下にある真っ暗なトンネルを抜けると、まばゆいばかりにタイっぽさを体現した小さな宿が現れる。受付に座っているおじさんに、
「※ミー・デック・マイ?」
と聞くと、無言で奥を指す。薄暗い廊下に扉の開け放たれた客室が左右に数部屋並び、その中に女たちがいるらしい。まとわりつくような外の暑さとは反対に、廊下はヒンヤリと涼しく、部屋の明かりが廊下へと漏れ出ている。女性たちの話し声も聞こえてきた。
震える脚をごまかしながら部屋の内部を覗いていく。中には女たちが3人から5人ずつ座っていた。むせるほど香水と化粧の臭いが鼻についてくる。
「あら、外国人? かわいい!」
久しぶりの客なのか、それとも単に日本人が珍しいのか。女たちはこちらに注目し、一斉に話しかけてくる。やばいやばすぎる。なにせ、どうお世辞をぶち上げたとしても50歳はくだらない女ばかりだ。
愛想笑いで部屋をあとにし、隣を覗いてみる。こちらも厚化粧で完全武装したおばばたちがベッドに寝転んだり、ソファに座ってだべっていた。そして、あなたはどこの国の人だと話しかけてくる。おばさんだから、どんどん話しかけてくる。
全部で8部屋あったが、奥に行けば行くほど年齢層が高くなっているようだ。
話しかけてきてはお互いに笑う声は「ドリフの大爆笑」のバックで流れるあの笑い声そのものだ。最後の部屋なんかは、余裕で母親レベルの年齢だった。
※もはや置屋ではなく「魔窟」。ここで遊べる人がいるとしたら、僕は尊敬するよ。いや、やっぱ軽蔑するかな。
※サオファイデーン
ウドンタニー市街地のワッタナーヌウォン通りにある赤線地帯。掘っ立て小屋のような民家にラオス娘がおり、家によって300~500バーツで本番が楽しめた。サオファイデーンは直訳すると「赤い電柱」。近くにタイのNTTであるTOT社やCAT社があることが関係している?
※2015年4月現在は完全に消滅
サオファイデーンのオススメの置屋はおしゃれなカフェになっていた。現在はウドンタニーの置屋はアドゥンヤデート通りソイ7のラブホになるが、1000バーツ前後と高い。ここも数年前に廃業したはずだが、復活した模様。
※日本人向けの手コキサービスの高級店
看板は古式マッサージとしながら、明らかにセクシー系の女の子(稀に元女の子もいるが)が待機している。店によっては本番可。法的にソープの新規開店が困難なため、抜け穴としてこんな店が増加した。スクムビット通りソイ24/1は何軒もそういった店がある。
※初心者でも簡単に行ける
BTSベーリン駅からタクシーでワンメーターの距離で、20時ごろから翌日早朝まで営業。20軒近くの店の前にいる呼び込みに合図すれば中から女の子が顔を覗かせる。料金でぼられることはないが、呼び込みがチップをくれと言い出す。20バーツで引き下がるからかわいいものだが。じっくり全店見てから選んでもいいが、かわいい子はすぐにいなくなるので早い者勝ち。
※テーメー
スクムビット通りソイ13と15の間にある『ルアムチットホテル』の地下カフェ。テルメーと呼ぶ人もいる。1980年ごろに開業し、1995年前後に今の場所に移転。カフェの中に売春婦が立っており、それを目当てに来る日本人を中心とした外国人でごった返す肉欲の坩堝。20時にはオープンするが、深夜から閉店の2時までが熱い(3時以降も営業することも多い)。
※プラソップスック・ホテル
ウォラチャック通り、ワット・サケットの斜め前辺りにあるセブン‐イレブンの裏手に位置する。
※ミー・デック・マイ?
タイ語で「女はいる?」の意味。ローカル向けの遊び場ではよく使う言葉なので、覚えておきましょう。
※もはや置屋ではなく「魔窟」
日本ではびこり始めている「美魔女」ならまだいいが、本当にそこら辺にいる太ったおばちゃんが厚化粧で座っている。年増の置屋だと知っていた上でドン引きするレベル。一体どこの誰に需要があるのか理解不能なので段々異世界にいるのではないかと怖くなる。