非正規雇用者が支える東アジアの企業
日本、中国、韓国とも低賃金で長時間働く非正規雇用者が増えているのは同じ。労働者にはツライ状況だ。
【日本】正社員もラクではない日本
一生同じ会社がめんどうを見てくれるという終身雇用が崩壊し、日本ではリストラや転職はめずらしくなくなっている。失業率は5%台で変わらず、平均賃金も一部の高給取りが押し上げているのが実態。昇給どころかボーナスカットで年々下がっており、日本の労働環境は悪化の一途をたどっている。
さらに、どこの企業も正社員の採用には慎重になってきた。一部では、せっかく採用された学生が、その後の景気動向の悪化を受けて企業から一方的に内定取り消しを通告されたり、入社してすぐにクビを切られるという事態も起こっている。
さらには、「派遣切り」も当然のごとく定着し、正社員ですら安泰でないという状況である。2008年に起きたアメリカの金融危機以来、EUでは失業率が2桁の国も少なくない。日本の雇用状態は、先進国のなかではまだマシなほうだ。
しかし、低待遇でも我慢して働いている人たちにも限界が近づいている。
【中国】人口世界一でも労働力不足の中国
急速な経済成長を続ける中国だが、都市部の発展は低賃金で働く大量の労働者によって支えられている。彼らの大部分は、農民工と呼ばれる農村部出身の出稼ぎの人間だ。
農民工の多くは学歴もなく、昇給の機会も乏しいまま長時間の労働を強いられている。かつて高度経済成長期の日本でも、中卒で都会に集団就職する労働者が多かったが、社会保障が整備されていない状況を考えると、さらにきびしい状況である。
また、中国では、日本や韓国にあるような女性の結婚や出産による退職が少ない。じつは、家政婦を雇うというのが一般的なのだ。このあたりは、日本や韓国よりも欧米に近いスタイルが確立しているのかもしれない。
経済発展のおかげで農民工の賃金も右肩上がりで伸びてはいるが、別の問題が浮上している。なんと、世界1位の人口をほこる中国でも、地域によっては労働力不足が起きているのだ。
農民工には都市部の戸籍が与えられないため、長期間都市部に居着かず、働くだけ働いたら地元に帰ってしまう人が多い。また、より賃金が高い地域があれば、そちらに移ってしまう。このため、とくに経験のある熟練労働者は不足している。
安定した労働力をどうやって確保するかは、今や中国に進出した日本企業にとっても大きな課題なのだ。