日本をしのぐ中国と韓国の教育熱
少子化で(?)競争意識が落ち込む日本。中国では、はじまったばかりの受験競争で親がヒートアップ。
【日本】日本の学力低下の原因は政策か、ハートか、金か?
「分数の割り算ができない高校生」「漢字の読めない大学生」といった学力低下ぶりで、日本は笑えない状況になりつつある。
原因として、2002年度から実施された「ゆとり教育」が指摘されることが多い。ただ、教育をめぐる社会全体の環境が変わってきたことも少なからず影響しているはずだ。
もともと日本では、1970年代後半ごろから「受験戦争」という言葉が広まった。産業構造の変化でサラリーマン世帯が増加するとともに「いい大学に入って、いい会社に入る」という人生モデル像が一般的となった。
しかし現在は、少子化の進行で入学志願者は全員大学に入れる状態。つまり、やっきになって受験勉強する必要が失われてきたのである。それでいて、日本の大学進学率は50%台のまま。これには「教育にはお金がかかる」という事情もある。
一流大学進学者はやはり塾や家庭教師などにお金をかけられる富裕層が多く、貧困層は進学率が低い。貧乏は貧乏のまま、富裕層はますますリッチになるのでは? という懸念もある。
これには、政府の責任もあるかもしれない。日本の教育機関への公的支出は、主要先進国28カ国中26位。
このまま日本の教育は新興国に追い抜かれてしまうのか? 重要な課題である。
【中国】“留学帰り”が中国を変える!
教育格差という点では、中国は日本よりも深刻だ。農村部では教員不足のため十分な初等教育を受けられない子どもがいる一方、北京や上海では、年間の学費が10万元(農村部の年間消費支出の約30倍)もするような私立学校も増えている。
また、大学進学率はいまだ低いものの、富裕層のあいだでは、急速に教育熱が高まっている。しかし同時に、子どもの点数をよくしてもらうための教師への賄賂、裏口入学といったダークな側面も目立ちはじめているのも事実だ。
一方で、高学歴化とともに増えているのが海外留学だ。中国では留学帰りの人材は、外洋に出ていた海亀が産卵のため浜辺に戻ってくる姿にちなんで「海亀派」と呼ばれる。
かつては海外に対して閉鎖的だった中国。だが、欧米や日本の政治や文化習慣を学んできた「海亀派」が増えれば、中国の体質を内部から変えてゆく原動力になるかもしれない。