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(2021/11/26 追記)

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ブラジル裏の歩き方
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ルポ・エッセイ
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ブラジルはどこまで危険か?

『ブラジル裏の歩き方』
[著]嵐よういち [発行]彩図社


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~観光客もトラブルに巻き込まれる犯罪多発都市~




 本書では、これまでたびたびブラジルの治安の悪さに言及してきた。


 実際、ブラジルの治安はどこまで悪いのだろうか。


 ブラジルで日本食レストランを経営する友人によると、ここ数年は数ヶ月単位で物価が上昇しており、賃金が物価に追いつかなくなって犯罪が増えているという。最近、その友人は“面倒を避けるために”高価な日本車を売って、ブラジル製の安い車に乗り換えた。高級車に乗っていると、強盗に狙われる危険性が高くなるからだ。


 ブラジルの地方都市で働く友人は、2年前にサンパウロに行った際、複数の強盗に暴行を受け、拳銃で脅かされて金を巻き上げられた。現地に何年も住み、つねに警戒していても被害に遭ってしまうのだ。


 他の中南米諸国同様、ブラジルも大きな都市になればなるほど、治安は悪くなる傾向がある。とくに海外からの訪問者が多いサンパウロやリオ・デ・ジャネイロでは、旅行者が犯罪に巻き込まれるケースも増えている。




 ●日本人旅行者の不運


 ある日本人旅行者から直接聞いた話である。


 仮にその旅行者をAとしておこう。


 Aはサンパウロに滞在中、同じホテルの宿泊客と2人で、歩いて10分ほどの距離にある24時間営業のスーパーにでかけた。時刻は夜の10時半だった。


 宿を出ると、目の前にあるランショネッチに明かりがついていた。その店は普段、夜の10時には閉めるはずだった。閉店時間を過ぎているのになぜ営業しているのか、Aは不思議に感じながらも、スーパーに出かける手間が省けたと思って、店に入った。


 その瞬間、数人の男が駆け込んできて、2人に拳銃をつきつけてきた。男たちは揃いの制服を着ている。警官である。2人は抵抗する間もなく、乱暴に床に寝かされた。


 いったい何が起こったのか。Aが呆然としていると、店の奥の方で、物音がした。数人の警官が物音のする方に向かうと、何者かが内側からトイレの扉を激しく叩いている。警官がドアを破ると、中から店主と従業員が出てきた。

「犯人はこの2人か?」


 警官が青い顔をしている店主に尋ねる。

「いいえ、違います。この2人はうちの客です」


 Aはこの店の常連だったので、店主が顔を覚えていた。警官は謝りもせず、Aたちを立たせるとさっさと帰れと2人を店から追い出した。


 翌日、店主が話してくれたところによると、Aたちが訪れる少し前、店に2人組の強盗が押し入ったという。強盗は銃で武装しており、レジの金を奪うと、店主と従業員をトイレに押し込めて逃走した。店主はトイレの中から警察に通報。警察が到着した時、Aたちがたまたま店に居合わせてしまったのだ。

「あなたたちには、迷惑をかけてしまった」


 店主はそう言ってAに謝ると、こんなことを言った。

「でも、大人しく警察の指示にしたがったのは、正解だった。警官も銃を持った強盗を恐れている。下手に抵抗していたら、あなたは撃ち殺されていたかもしれない」



 ●軟禁された日本人


 サンパウロに滞在中、強盗団に拉致された日本人もいる。


 日本人旅行者のBは、夕方にグアルーリョス国際空港に向かった。


 ヘプブリカ広場まで地下鉄に乗り、そこからバスで空港まで行く予定だったが、バスの乗り場がわからない。近くにいた黒人の若い2人組に場所を尋ねると「俺たちについてきなよ」と歩き出した。


 後をついていくと、突然、1台の車の前で男たちの態度が豹変した。さきほどまでにこやかに冗談を口にしていたが、突然、真剣な表情になり、「車に乗れ!」と言ってきた。Bが拒絶しようとすると、男の1人がBの腹に拳銃を突きつけてきた。


 Bを押し込むと、車は郊外に向かって走り始めた。ブラジルではこうした監禁強盗の場合、ひとけのない場所に車を停め、金目のモノを奪ったらそのまま降ろされることが多い。しかし、車は一向に停まる気配はない。ようやく車が停まったのは、走り出してから数十分後のことだった。


 車から降りると、そこは見覚えのない住宅街の一角だった。粗末な家屋が並んでいるところを見ると、サンパウロのどこかのファベイラのようだった。男たちはBを一軒家に連れ込むと、現金やカード類、カメラ、パスポート、荷物など、金になりそうなものは何でも奪った。カードの暗証番号も聞き出され、限界まで引き出されてしまった。


 もう金目のものは何もない。Bはようやく解放されると思った。しかし、男たちはBを帰してくれない。Bはそのまま、一軒家の狭い部屋に引き続き軟禁されることになった。


 強盗の仲間は5、6人おり、Bの様子をこまめに見にきた。事情を知らないのか、彼らの子どもたちも部屋にくることがあった。Bは子ども好きだったので、時折一緒に遊んでいた。


 監禁されて1週間が経った。Bを襲った強盗が仲間を連れて、部屋にやってきた。そして何やら相談を始めた。Bをどうするか、その処分を決めているのだ。


 血の気が多そうな仲間の1人が、冷たい目で言い放った。

「盗れるものは、もう全部盗った。解放すれば、きっとコイツは警察に行く。面倒だからここで殺してしまおう」


 それを聞いて、仲間の何人かがうなずく。Bは「終わった」と思い、目をつぶった。


 しかし、リーダー格の男がその意見に異を唱えた。

「この男は、子どもたちをかわいがっていた。子どもたちも懐いている。解放してやろう」


 Bは目隠しをされた状態で車に載せられ、街の中心部で降ろされた。命があっただけでよかったと、Bは語っていた。




 ●強盗に殺されそうになった男


 サンパウロに住む信吾という知人に、こんな話を聞いた。


 彼はある日、金持ちの友人の家に遊びに行った。友人はなかなかいいマンションに住んでいて、一階には「ビンゴ」というギャンブル場があった。


 友人の部屋で朝方までしこたま飲み、帰ろうとした時のことだ。


 エレベーターで1階まで降りると、いきなり3人組の強盗に銃を突き付けられた。

「下を向け」


 強盗から鋭い声が響く。


 もし、このような状況になったら、決して強盗の顔を見てはダメだ。彼らは自分たちの顔を見られることを極度に恐れる。信吾はサンパウロに住んでいるからそのことを知っていたが、それよりも怖くて下を向くしかなかった。


 体の後ろで手を縛られ、壁際に座らされた。どうやらビンゴの中にも強盗団がいるらしく、この3人組はエレベーターの見張り役のようだ。


 信吾の隣に男性が座らされていたが、突然、その男がライフルで頭を撃たれた。激しい発射音がエレベーターホールに響く。血と脳みそが彼の顔と服にかかった。次は自分の番だと思い、信吾は死を覚悟した。だが、強盗団はすぐに去ってしまった。


 なぜ、その男だけが殺されたのか?


 犯人の顔を見てしまったからだ。


 数日後、犯人の1人が捕まり、殺人について、そう自供した。



 ●治安の分析


 サンパウロ州保安局犯罪統計によると、サンパウロ州の殺人事件(強盗殺人を含む)は1日に約12件発生し、強盗事件(車両強盗を含む)は1日に約826件も起きているという。10万人あたりの犯罪率を比較すると、サンパウロ州の強盗事件発生率は日本の約22倍、サンパウロ市では日本の約144倍にもなる。


 この数字を聞いて驚くかもしれないが、これはあくまで警察が認知した犯罪の件数だ。サンパウロでは報復などを恐れ、被害者が警察に届け出ないケースも多々あると言われている。実際には、もっと多くの犯罪が発生していると考えた方がいい。


 サンパウロなどの大都市では、拳銃などの銃器も氾濫している。凶悪事件の9割には銃器が使用されており、10歳の少年が銃を所持していたなどという話もある。


 サンパウロやリオ・デ・ジャネイロのような大都市では、一見、平穏なエリアでも夜になると状況が一変する場所もある。


 ブラジルを始めとする中南米諸国は、アジアやヨーロッパとはまったく違う。悪い旅の思い出を作らないためにも、しっかりと対策をしていただきたい。



※ブラジルのインフレ率

ブラジルは1980年代よりインフレが加速。一時期は、年間20を超える時期もあった。近年になり、物価はやや安定しているが、それでも毎年6前後の高いインフレ率で推移している。

※夜の10時には店を閉める

ブラジルの店は繁華街の一部の店舗を除けば、10時ぐらいになると閉店することが多い。

※銃で武装

ブラジルでは銃を使った犯罪が非常に多い。抵抗すると、簡単に撃ってくるので、大人しく従うのがベストだ。

※グアルーリョス国際空港

サンパウロ国際空港とも呼ばれる。ブラジルの空の玄関。サンパウロ市の中心部から北東に約25キロの場所にある。

※子どもたちも懐いている

ブラジルでは、子どもが宝のように大切にされる。もし、このような最悪の事態になったら、ウソでもいいので「小さい子どもがいる。子どもに会いたいから助けてくれ」などと命乞いすると、助かる可能性が増えるかもしれない。

※ビンゴ

かつてあったギャンブル場。国の方針で、現在では廃業したようだ。コンピュータービンゴゲームなどを遊ぶことができた。

※平穏なエリア

たとえば、日本人観光客が多く訪れるリベルダージの東洋人街も、昼間の人通りが多い時間は比較的安全だが、夜になると通りから人の姿が消えて危険な雰囲気になる。


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