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沖縄 本土メディアが伝えない真実
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政治・社会
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「犯す前に、これから犯しますよと言いますか」

『沖縄 本土メディアが伝えない真実』
[著]古木杜恵 [発行]イースト・プレス


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 (うち)()(けん)(ゆう)(三四歳)は二〇一一年一一月二八日の夜、翌朝刊の出稿を終えると那覇市内の小料理屋に急いだ。毎月一回のペースで開かれる沖縄防衛局との酒食を交えた懇談の開始時刻はとっくに過ぎていた。


 一時間ほど遅れて参加したこの日の懇談は、より意見交換をしたいとする防衛局側の求めで、局長と部長らが居並ぶいつもと違い、田中聡防衛局長と広報室長の二人が出席。在沖マスコミ九社九人の男性記者が顔をそろえた。


 内間は那覇市の出身。琉球大学を卒業後、運動部記者を目指して琉球新報社に入社した。希望がかない、入社一年目は運動部記者。その後、中部支社で嘉手納町と読谷村を担当、社会部記者を経て二〇一〇年から政治部の基地担当記者になった。


 内間は言葉をつなぐようにゆったり語る。

「懇談は壁際に並んだ四つのテーブルの真ん中付近に田中局長が座り、米軍普天間飛行場の移設問題を中心に意見交換が行われました。私が参加して三〇分がたった午後九時半ごろだったでしょうか。私は米軍普天間飛行場代替施設建設の環境影響評価(アセスメント)の『評価書』の年内提出について(いち)(かわ)(やす)())防衛相が『年内に提出できる準備をしている』との表現にとどめ、(米国に約束した)年内提出実施の明言を避けているのはなぜかと質問したのです」


 環境影響書評価とは基地にかぎらず、環境影響評価法にもとづき、開発事業が環境に与える影響を事前に調べる制度。防衛省は沖縄県宜野湾市の普天間飛行場を同県名護市辺野古に移設する計画について二〇〇七年八月に調査方法などを記した「方法書」を沖縄県に送って手続きを始めた。


 しかし、鳩山政権下で移設先が再検討されたため、最終段階の「評価書」作成を中断。その後、二〇一一年六月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で辺野古移設を再確認し、防衛省は評価書を米国と約束した年内に沖縄県に提出する方針で作業を進めていた。


 内間が続ける。

「遅れて参加した私は局長から離れた席にいたので声を張り上げて質問をしました。田中局長も声のトーンを上げて『犯す前に、これから犯しますよと言いますか』と答えたのです」


 評価書の提出については沖縄県議会が提出断念を強く求める決議を全会一致で採択するなど県内の反発が強かった。その提出を性的暴行にたとえ、県民や女性を陵辱の対象と見なし、みずから推し進める移設計画が違法と言っているに等しい暴言である。


 内間がさらに続ける。

「局長は酒を飲んでいたが、口ぶりはしっかりしていました。私は頭が真っ白になり、返す言葉もなく次の話題に移りました。懇談の冒頭で完オフ(完全オフレコ)だからなんでも聞いてという発言があったそうです。私はその場にはいなかったが、慣例的にオフレコだということは認識していました。それでも問題発言と受け止め、記者が共有する携帯メール網に報告しました。琉球新報社は小さな新聞社なので記者や部長が率直に意見を交わす携帯メール網でのやりとりを頻繁に行っているのです」


 この日、政治部のデスク業務を担っていた前出の松元剛は原稿の処理に追われ、内間の携帯メールを見ていない。


 その後、朝刊の政治、行政ニュースを掲載したゲラの見出しを追っていた午後一〇時五〇分ごろ、懇談を終えた内間から松元に電話が入った。


 松元は言う。

「耳を疑うような局長の発言に、本当にそんなことを言ったのか。たしかなのか。二度、記者に問いかけました」


 内間の核心部分の記憶は鮮明で、説明に揺るぎはなかった。


 松元が続ける。

「オフレコを前提とした懇談を確認したうえで、これは書こう。防衛局に記事にすると通告し、どう掲載するかつめようと記者に告げ、急いで社に戻るよう指示しました」


 オフレコと呼ばれる取材は慣行として、情報源を明かさないことを前提にしたオフレコ(オフ・ザ・レコード)と、取材内容をいっさい報じないとする完全オフレコがある。いずれの場合もメモや録音をしない。これに対して通常の取材はオンレコ(オン・ザ・レコード)である。


 だが、その定義はあいまいで、ニュースソース側も報道側も厳密に使い分けていない。定期的に開く懇談では冒頭で完全オフレコと告げても、参加した記者がメモを取って社に報告をする。官僚は省庁の利益を優先して懇談を開く。それは公務である。一方、記者も仕事(取材活動)で参加する。仲間内の私的な飲み会ではない。


 松元はオフレコ懇談の発言を報じる論拠をしっかり固める必要があるとして、社に戻った内間からさらにくわしく懇談の内容を聞いた。


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