『[証言録]海軍反省会 3』
[編]戸高一成
[発行]PHP研究所
土肥 ほかにご意見はありませんか。
佐薙 松田さんもですね、あの、明治四十年以来の軍令部伝統の作戦計画という事につきましてね、松田さんは、昭和六年から十年まで、軍令部におられました。その間において、色々、研究された作戦計画っていうのは、それなりに練りに練って、結構なものだと思いますが、その以後、昭和十二年から、シナ事変が始まって以来、国際情勢、その他、非常に変化をいたしました。そして、松田さんの述べておられる、対米一国作戦の場合の前提条件として、イギリスを中立、好意的に置いて、講和の斡旋を取らせるというような状況が、もう、昭和十四、五年頃から、全く崩れてしまう。前提が崩れてしまう。それから、先ほどお話がありまして、まぁ、三国同盟は大きな原因であると、今日、述べておられますが、確かに三国同盟を結んだ事によって、このイギリスは、好意的な距離どころじゃない、敵方に回さざるを得なくなったという事。