『[証言録]海軍反省会 3』
[編]戸高一成
[発行]PHP研究所
だから昭和十六年秋における日米交渉の最重点は、三国同盟の廃棄、ないしは空洞化問題にあったはずだが、近衛も東条もこれを真剣に取り上げなかった。大統領との会談でなんとか話し合いがつくと考えるなど、極めて軽く片付けた。だが、これではとても米国に通ずるわけはない。三国同盟の空洞化という事になれば、文書で取り決めるという事を米国が要求する事はもちろんだろうし、それだけではなく、外務、陸海軍の要職から枢軸派を転出させるとか、革新右翼団体の活動を取り締まるとかなどを要求してくるに違いなかった。当時私などは現実にそんな話を気の合った仲間同士でこっそりと話し合ったこともあった。