『[証言録]海軍反省会 3』
[編]戸高一成
[発行]PHP研究所
土肥 鳥巣さん。
鳥巣 私、あのー、池田清氏の「海軍と日本」というのを読んでですね、私の感じた事をちょっと披露させて頂きます。池田清氏はその、初めという、いわゆる序言にですね、私はこの海軍的体質を紛れもなく私自身が備えている事に嫌気がさした。むしろ沈黙するか、海軍を賛美するほうが私にとって容易であったろうと。ま、こういうように書いとる訳なんですが。このようにですね、自己批判をしながら、彼はやむにやまれず痛烈な批判を書いた。そしてかつ日本人の中に潜む弱点を見つめた。私は最大の教訓であると。いうふうに私は見てるわけです。これはですね、一海軍をとって彼はこの本を書いたんじゃなくて、日本人全体の体質ですね。もう今の政治の体質なんか同じような事なんですが。日本人はこういう弱点があったんだと。それから戦争のような時に初めて最も端的に表れるわけなんですが、私はそういう意味でですね、この本はですね、日本人の弱点を暴露した非常に大きな教訓であると。いうふうに私は見とるわけです。
彼は見かけ倒しの脆い体質とか、根無し草の国際主義だとか、ずるさと無責任さとひ弱さとか、高度の平凡性の不足だとか、攻撃の不徹底と淡白さだとか、戦いの本当の残酷さ、惨烈さを知らない三代目海軍のエリート士官のロマンチシズム。あるいは、日露戦争の余勢に安住して次第に慢心し、武人銭を惜しむ、役人根性が忍び寄っていった。いうふうにですね、まことにその痛烈な批判をしとるわけなんです。これは恐らくね、私はここにおられる将官の方々、あるいは大佐の方々、上の方々にはですね、非常に癇に障る言葉だと私は思います。