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政治・社会
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支援者が彼女たちを理解できない理由

『貧困とセックス』
[著]中村淳彦 [著] 鈴木大介 [発行]イースト・プレス


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鈴木 ずいぶん古い話だけど、中絶と避妊用ピルを女性のウーマンリブの過程として法律で認めさせるのを目標としていた「(ちゆう)(れん)(中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合)」という左翼の女性たちがいましたが、その人たちの発言を読み返すと、売春婦、(しよう)()という方々に対して、かなり差別的でしたよね。みんな田舎でがんばって勉強して、東京にやってきて大学に入って、知的にはすごくレベルが高い女性たちですけど、そのルートに入れなかった人たちに対しては、かわいそうと思うか、差別するかのどちらかしかなかったと思うんです。
中村 そういう恵まれた環境にいる支援者の上から目線の同情や差別的な意識が、適切な支援ができない根源的な理由となると、状況はますます深刻だよね。ライフストーリーの聞き取りすらできないことが本当だとすれば、ちょっと問題だよね。鈴木大介が協力したことで、その問題は進展したの?
鈴木 ライフストーリーを聞き切れないのは、先ほども言ったように、つらい過去の聞き取りがそもそもリスキーなことと、そもそも予算も人も力も足りなくて、女性の貧困がすごくおざなりにされたこともあります。男性の貧困であれば、たとえば土木事業をやります、原発をつくりますと言ったら作業員をたくさん集めてこられます。そういう雇用対策がずっと行われてきて、その人を斡旋する「(にん)()出し」の業界で桁落ち、つまり労働力にならない人たちを炊き出しで支援するという流れがあった。でも、女性の雇用政策は置いてけぼり。セックスワークを公営でつくりますと言ったら、女性の場合は桁落ちどころか上澄みの人しか採用できないわけですよね。だから、女性の貧困対策はすごく難しいと思うんです。うまく両者のあいだを縮める作業をできやすい立場にいるのが僕たちなのかと思っていますけど。
中村 この一〇年くらい、就労対策というと人手不足の介護が利用される。だけど、介護現場は就労対策のせいでボロボロ。向いていない人をどんどん流して混乱しか生まれていない。誰も幸せになっていない。やっぱり、それぞれの産業は向き不向きがあるから、第三者が介入してwin-winという結果にはならないよね。だから、ちゃんと機能して売上を生んでいる産業をつぶしたりするのはダメだって。問題があるならば改善を促さないと。それで著作から交流が始まった婦人保護団体には、どういうことを提言しているの?
鈴木 主に当事者のリポートです。公的支援者だけではなく、NPO(特定非営利活動法人)とも接点があって、支援者と当事者の距離感を訴え続けてきました。そうした支援者が、たんに当事者を待つのではなくてアウトリーチ(手を差し伸べる)しなければいけないという方針にたどり着いたのは、僕らの仕事が少しは役立ったのかと思います。そう思っていたら、アウトリーチした相手が、過去に働いたAV業界に被害者感情を持つ女性たちだった。これはヤバいなと思ったけど、「助けてくれ」とちゃんと声を上げる人たちにまずリーチしちゃった感じなんだと思います。
中村 なるほどね。やっぱりポルノに徹底的に反対しているのは婦人団体の人たち。全部つぶせ、叩きつぶせという勢いだよね。いま、AV業界は瀬戸際に立たされているけど、一九九〇年代初頭にレイプAVが問題視されたとき、AV業界は婦人団体の方々が理解できる言葉でちゃんと対話をすべきだった。当時はAV業界側がおもしろ半分にあしらうみたいな対応をしていて、二五年がたったいまになって積年の怨念をぶつけられている印象がある。
鈴木 ちょっと残念ではあるんですよね。セックスワークと広く捉えられるもののなかで、AVで被害を受けている人も、食えている人も、携わって働いている人も、本当に一部でしかないですから、なぜAVだけなんだろうと。僕なんかは貧困売春ライターですから、「AVは貧困ちゃうやん」と思っていて。支援者サイドへの提言のなかでは、スカウトの会社と提携したほうがいいなんてことまで言ってきたんです。スカウトさんって、女の子のなかに知的に問題がある子もすぐ見つけ、被害にあっている子も見つけ、風俗業界で言う桁落ちの女の子もすぐ見つけます。スカウトさんと支援者が情報共有できている状態ならアウトリーチできますよって。「助けて」と声を上げられる人に対してのアウトリーチだと、セックスワークに被害者感情を持っている女性たちだけをピックアップすることになるんで、結局、堂々めぐりで元に戻って、現場に生きている人との距離が広まるという悪循環でした。なんすか、この無力感。


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