『田中角栄と越山会の女王』
[著]大下英治
[発行]イースト・プレス
昭和三十七年二月七日の朝、院内の政調会長室に出勤してきたばかりの昭のもとに、知り合いの記者から電話がかかってきた。
「佐藤さん、今朝の『東京タイムズ』を読みましたか」
「いえ、なにか書いてありましたか」
「田中さんの、昨日の会見での発言がスクープされているんですよ!」
昭は、すぐに東京タイムズを取り寄せた。
〈やられたわ……〉
一面に、でかでかとこう書かれていた。
「再軍備前提に沖縄返還、波乱呼ぶ『田中発言』。ケネディ長官にもらした一言」
じつは、前日の六日、田中をはじめ、中曾根康弘、石田博英、江﨑真澄、宮澤喜一、小坂善太郎ら自民党の若い議員が、ジョン・F・ケネディの実弟で、アメリカ司法長官のロバート・ケネディと、麻布の国際文化会館で会見した。