『田中角栄と越山会の女王』
[著]大下英治
[発行]イースト・プレス
昭和四十六年十二月三十一日、田中は、盟友の大平正芳と昼食をとりながら、三時間ほど今後の政局について話し合った。
「佐藤さん、いつ辞めるつもりなのかな」
田中は、心の底から、大平を盟友と思っていた。以前、昭は、親しくしている読売新聞の記者に言われた。
「ママ、オヤジに注意したほうがいいよ。オヤジは、大平のことを盟友って思っているかもしれない。だけど、大平は、オヤジが思っているほどお人好しじゃないよ」
昭は、読売新聞の記者が言ったことを、そのまま田中に伝えた。
田中は、はっきりと言った。
「いいよ。裏切られるようなことがあったら、それはおれに人を見る目がなかったということだ。