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「新」怪奇現象41の真相
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エンタメ
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 1 夢に現れる謎の男「THIS MAN」

『「新」怪奇現象41の真相』
[著]ASIOS [発行]彩図社


読了目安時間:6分
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【世界中で2000人以上が遭遇した正体不明の人物】



 伝説


 2006年1月、アメリカ・ニューヨークのよく知られた精神科医(※①)のもとに、1人の患者が訪れた。

「最近、夢の中に見知らぬ男性がよく現れるんです」


 彼女はそう言って、その男性の似顔絵を描いて見せた。女性によると、この似顔絵の男性は、夢の中で彼女のプライベートに関するアドバイスをしてくれるのだという。しかし彼女は、その男性に会ったことは、これまでまったくないとも言う。


 ただの夢だったのだろうか。相談を受けた医師は、何か特別な治療が必要だとは考えず、似顔絵のこともしばらく忘れていた。


 ところが、それからしばらく経ったある日、別の男性患者が来院し、同様のことを話し出す。彼も夢の中に同じ男性が現れるというのだ。しかも、その顔を描いてもらったところ、先の女性が描いた絵とほぼ同じだった。


 これは偶然だろうか? さすがに不思議に思った医師は、同僚の医師たちに似顔絵を送り、情報を求めた。すると数ヶ月以内に、同様の報告をする患者が4人も現れた。


 もはや偶然ではない。彼らが描く似顔絵もそっくりだった。この夢に現れる謎の男は、「THIS MAN」と名付けられる。


 THIS MANに夢で出会ったという人は、これまでに世界中で2000人を数える。その報告は、ロサンゼルス、ベルリン、サンパウロ、テヘラン、北京、ローマ、バルセロナ、ストックホルム、パリ、ニューデリー、モスクワなど様々だ。




 夢での出会いも次のように、いろいろなパターンがある。

「夢の中で会った彼は、サンタクロースの格好をしていました。私は、まるで少女のように喜び、幸せな気持ちになりました」

「私が空を飛んでいたら、彼に出会いました」

「鏡を見ていると、メガネをかけたTHIS MANが、私のことをじっと見ていたんです(※③)」


 などなど。夢の中のTHIS MANに共通点はなく、夢を見る人たちにも共通点は見つかっていない。


 THIS MANは、なぜ夢に現れるのか、彼は一体何者なのか。現実世界にも存在するのか。これまでのところ、彼に関する有力な情報は得られていない。



 真相


 太く特徴的な眉、大きな瞳、やや後退した生え際。THIS MANは一度見たら、すぐには忘れそうもない、印象的な顔立ちをしている。


 そのためか、夢で見たことがある、という人は世界中にいるそうだ。


 彼は一体何者なのだろうか? そもそも実在するのだろうか?


 調べてみたところ、彼の正体はすぐにわかった。いや、正確には、THIS MANの仕掛け人の正体といった方が正解だろうか。


 実は、THIS MANの由来に関する話は、すべて作り話だった。最初に相談を受けたというニューヨークの有名な精神科医は存在しない。相談をもちかけたという女性も同じ。その他の登場人物や設定も同様である。


 話を作り上げたのは、アンドレア・ナテッラ※④)というイタリア人だ。ナテッラは、「KOOK」(クック)という広告代理店の社長を務めている。この会社はバイラル・マーケティングという手法を得意とし、ナテッラはその専門家だという。


 バイラル・マーケティングとは、客が商品やサービスを連鎖的に広めるように仕向けるプロモーション手法のことで、THIS MANは、その手法によって情報が世界的規模で広まることを実証するために企画されたプロジェクトだった。




 案の定、このプロジェクトは大成功(※⑤)する。THIS MANの話を広めるために作られた公式サイトは、これまでに20億アクセスを記録し、情報を求めるチラシは、世界35カ国語に翻訳された。


 もともと「バイラル」には、「ウィルス性の」という意味があるが、その名のとおり、感染するように口コミで広がっていったわけである。


 ちなみに、ナテッラの会社「KOOK」の社名は、その意味が英語では「変人※⑥)になる。


 KOOKの公式サイトにも、一クセあるコンテンツが並んでおり、独創的なアイデアとユーモアが感じ取れる。ナテッラと「変人」の名を冠した彼の会社なら、今後また、世界規模の面白いプロジェクトを仕掛けてくるかもしれない。期待しておこう。

(本城達也)




    ※本稿を執筆するための調査にあたり、イタリア語の翻訳では、友人のドリス・ラヤ氏にお世話になった。記して感謝の意を表したい。



   ■参考資料:


    「THIS MAN 公式サイト」(http://www.thisman.org/)


    「KOOK 公式サイト」(http://www.kook.it/artgency/)


    James Cook「When déjà vu is just a marketing stunt online」『The Kernel』October 17th, 2013


    (http://kernelmag.dailydot.com/features/report/6183/when-deja-vu-is-just-a-marketing-stunt-online/)


    Andrea Natella「VIRAL K MARKETING」(Kook Aartgency)



※①よく知られた精神科医

有名医師というだけで、名前や病院名など詳しい情報は一切明らかにされていない。


※②画像の出典

いずれも「THIS MANの公式ページ」(http://www.thisman.org/dreams.htm)より引用。


※③発言の出典

「This Man公式サイト」(http://www.thisman.org/dreams.htm)より。


※④アンドレア・ナテッラ

イタリアの広告代理店「KOOK」の社長。他に社会学者、記者、テレビ番組編集者の顔も持つ。これまで、ペンネームを使って本も数冊書いている。


※⑤プロジェクトは大成功

THIS MANについては、「スパイダーマン」シリーズなどで有名なサム・ライミがプロデューサーとなり、「ストレンジャーズ」でメガホンをとったブライアン・ベルティノが監督を務めて映画化するという話が出ているという。


※⑥変人

ナテッラは、これまでTHIS MANの他にも、フェイクUFOやセックスに関することなど、様々なプロジェクトを企画してきたという。


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