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今日からワーキングプアになった 底辺労働にあえぐ34人の素顔
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ルポ・エッセイ
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シングルマザーの奮闘

『今日からワーキングプアになった 底辺労働にあえぐ34人の素顔』
[著]増田明利 [発行]彩図社


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  大貫佳代子(41歳)


  出身/茨城県筑西市 最終学歴/短大卒


  現在の居住地/東京都品川区 居住形態/賃貸アパート


  職業/パートタイム 収入/月収約19万円と公的支援など


  家庭状況/子ども1人


「現在の生活は本当にギリギリのラインです。東京ですから短時間パートの仕事は数多くあるので生活できないということはないけど贅沢はできません。とにかく娘を一人前に育て上げなければならない。それだけです


 大貫さんは4年前に夫と離婚。以来、女手ひとつで娘を育てている。結婚したのは14年前で子宝に恵まれたものの夫婦仲が上手くいかず離婚に至った。原因は「諸々のことが積み重なって」ということだ。


 覚悟はしていたが離婚後の生活は大変だった。まず安定した収入を得られる仕事が見つからない。現実の問題としてバツイチで未就学の幼児を抱えていると正社員で働くのは不可能な状態。細切れの短時間パートを掛け持ちするしかなかった。

「去年、小学校に入って学童保育の施設にも入所できたのですが、それでも正社員で収入の安定した仕事に就くのは難しい。何社かは面接に臨めたのですが『病気になったり具合が悪くなったときに面倒見てくれる人はいますか?』『残業もあるし休日出勤を頼むこともある、子どもがいるからではすまされませんよ。大丈夫なんでしょうね』とやられて不採用でした」


 現在はミニスーパーの販売、レジ打ちと運送会社の事務パートの掛け持ちをしているが収入は多くない。

「ミニスーパーは朝7時から11時までの4時間、時給は960円です。13時からは運送会社に行って18時まで伝票記入やデータ処理、こちらは時給1000円です」


 ミニスーパーは月25日、運送会社は月20日出勤しているので月収は合わせて約19万円前後だということだ。

「あとは子ども手当1万円と元の夫からの養育費3万円。母子手当(児童養育費)の一部支給も受けられるので1ヶ月の収入は約25万円弱といったところです」


 月25万円の収入は少なくはないが出費が年々大きくなっている。最も大きいのが社会保険料で自治体の国民健康保険と大貫さんの国民年金の保険料が1ヶ月約5万円になる。アパートの家賃も7万円、学童保育の利用料も8000円払わなければならない。

本当なら生命保険や入院特約が付いた傷害保険等に入りたいけれど、保険料が重たいので入れません。変な話ですが、もしものことを考えると不安ですね」


 それでも郷里の両親や松戸にいる実兄から何くれとなく支援があるので心強い。

「両親からはお米やお野菜を送ってもらいますし、子どものためにと仕送りしてくれることもあるんです。おかげで就学支援は受けずにすんでいる。去年も今年もお盆を挟んで2週間は実家で預かってくれました。旅行なんて連れていってあげられないから娘も喜んでいました」


 お兄さんのところからも娘たちが着ていた洋服をお下がりで譲ってもらったり、誕生日やクリスマスにはおもちゃやゲームなどを届けてくれるので助かっている。

「今の生活で一番の気掛かりは娘と過ごす時間が少ないことですね」


 朝の仕事は7時からなので起床するのは6時。簡単な食事を用意して娘を起こすのが出勤直前の6時40分、朝から1人で食事させるのが心苦しい。

娘もこちらの気持ちがわかるのか、登校するときは遠回りしてわたしが働いている店の前を通って行くんですよ。お客さんの応対をしているときは目で合図するだけですが外で荷物を捌いているときは『行ってきまーす』って小声で言うの」


 だから子どもが「ねえねえ、お母さん」と話しかけてきたときには、どんなに疲れていても相手をしてやることにしている。

「特にお風呂タイムは貴重なお話し時間です。といってもアパートのユニットバスでは2人一緒に入れませんから湯桶を持って近所の銭湯へ行くんですよ。お風呂に入りながら学校でこんなことがあったとかお友だちの話を聞いていると小学生でも人付き合いは大変なんだなあと思いますね」


 これからの課題は子どもの教育。将来、いい仕事に就いて世間並みの生活をしていくのには学歴が最も大事だと思う。そのための費用をどう工面するか頭が痛い。

学校の勉強をしっかりやっておけば大丈夫という時代ではありませんからね


 大貫さんの世代でも塾や進学教室に通うのは当たり前、地方都市でもそうだった。財産なんて残してやれないが教育があれば自力で世の中を渡っていけると思う。しかし、これもお金次第ということが否めない。

「小学校の段階ならわたしがある程度のことを教えてやれるとは思いますが中学に上がったらそうはいかないでしょうね。特に数学と英語が」


 たまに新聞の折り込みに学習塾や進学教室のチラシが入っているが中学生で数学と英語を週6時間教えてもらうと教材費込みの月謝は2万2000円が相場。高校にしろ大学にしろ受験には学校外の教育費が馬鹿にならない額になる。それをどうやって捻出するかが問題だ。

「現在、固定費を除いて純粋に生活費として遣える金額は約13万円なんですが、あらゆる方法で出費を抑え、たとえ5000円でも貯金するようにしているんです。子どもが中学校に上がればフルタイムの仕事を探せると思いますが今はひたすら倹約するしかありませんよ」


 子どもが中学に上がるのは5年先だから大貫さんは46歳になっている。そうすると年齢的に無理かなと思ってしまうこともある。この先もずっとパートタイムや派遣などでしか働き口が見つからなければ生活そのものが脅かされる危険もある。政治家や役人は女性の社会進出、女性の活用と言っているが、どういう制度を作るのか具体的なビジョンを示してほしいと思う。

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