『ニュートリノ』
[著]多田将
[発行]イースト・プレス
本章のタイトルを御覧になられて、皆さんはどのようなことを思い浮かべられたでしょうか。
あるいは、皆さんに取っての最大の謎とは、どのようなことでしょうか。
「我々はなぜ存在しているのか」という問い掛けは、哲学的にも究極的なものなのかもしれませんが、物理学的にも、究極的と言えるものなのです。
第2章でお話ししたことを思い出してください。物質と反物質は、必ずペアで生成されるのでしたね。それ故、「対生成」と呼ばれているのでした。我々自身をはじめ、宇宙には多くの物質が存在していますが、それらがつくられたときには、同時に反物質もつくられているわけですから、物質と同じ量の反物質が存在しないといけないわけです。ところが、我々の周囲には反物質はほとんど存在していません。