読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン
0
-1
kiji
0
1
1110509
0
ザ・ビートルズ 解散の真実
2
0
0
0
0
0
0
趣味
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
Introduction

『ザ・ビートルズ 解散の真実』
[著]ピーター・ドゲット [訳]奥田祐士 [発行]イースト・プレス


読了目安時間:4分
この記事が役に立った
0
| |
文字サイズ


ショーン・ボディと、なかばで(たお)れたすべての人たちの思い出に






名声とは、なんら埋め合わせとなるものを持たない呪いだ。

───アレン・ギンズバーグ 



 有名人でいることになんの価値があるだろう? ビートルズがそう疑っていたとしても、決してとがめられることはなかったはずだ。この四人組のうちのひとりは、ファンと称する男によって、自宅アパートのすぐ外で射殺された。もうひとりは自宅で暴行を受け、それから二年とたたずして亡くなった。三人目は離婚をめぐる騒動に巻きこまれ、私生活を赤裸々に暴露された。四人目はひとり立ちに苦労するあまり、アルコールとコカインに惑溺していた。


 この四人が作り出した喜びと創意にあふれる音楽は世界中の人々の心をとらえ、いまだにその魅力を失っていない。〈シー・ラヴズ・ユー(She Loves You)〉や〈ヘイ・ジュード(Hey Jude)〉をほんの数小節聞いただけで、人々は日常生活を忘れ、あらゆる瞬間が可能性を感じさせる世界、愛が苦痛を征する世界へと誘われる。彼らは自分たちの創造力に火をつけた理想主義を再現し、そうしたインスピレーションの源をわれわれみんなに開け放つ、魔法のような能力の持ち主だった。


 ビートルズの楽曲は夢のように無垢な時代に生まれ、われわれが六〇年代と同一視するようになった、すべての混乱や輝きを代表しているように思える。彼らの物語はほぼ神話の域に達し、重要な出来事のひとつひとつが、おとぎ話の勘所のように広く知れわたっている。彼らは心安らぐ集合的な記憶をもたらしてくれる──当時も今も世界を照らし出すことができる「普遍的なきらめき」を。


 それでも彼らは、この神話の英雄たちは人間だった──どこまでも、そして時には悲惨なまでに人間だった。同世代の中ではおそらく彼らだけが、幻想がつづいていくことを望まなかった。大衆はビートルズが喚起した自由を享受し、ビートルズはひたすら、ビートルズではなくなる自由を求めた。リスナーが彼らの曲を人生の指針としていた六〇年代の後半、この四人はみずからが課した枷から自分たちが解放される、もうひとつの未来を思い描いていた。


 じきに彼らは、逃げ道などありえないことに気づいた──彼らはつねにビートルズでありつづけ、つねに過去の偉業に照らして評価されたのだ。際限なくリプレイされる彼らの青春時代に比べると、ひとりひとりの作品は、どれだけひらめきに満ちていようと、否応なしに色あせて見えた。ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、そしてリチャード・スターキー(「芸名では呼ばないでくれ」とスターキーは二〇〇九年のTV‐CMで訴えた)は、ポピュラー音楽の歴史に残る不朽の遺産の保護者として、つねに絡み合っている。しかし彼らの絆はそれだけにとどまらない。一九六七年以来、彼ら(あるいはその相続者)はまず税金逃れのために構想され、その後、資本主義体制に対する革命的な代替手段に仕立て直されるものの、やがては弁護士や会計士の好餌となってしまうアップル・コア社の共同所有者だった。ユートピアを志向し、だが実際には牢獄と化してしまった会社である。


 その結果生じた運命の綾──バラバラになっても永遠に結びつけられ、別れてもなお一緒にいる──が、一九六七年に頂点を極めたビートルズの個人および企業としての歴史を、解散前の数か月における激しい転落と、いつまでもやむことのないその後の余波を通じて追った、この本の主題だ。法律的、財政的、感情的なハリケーンに見舞われてもなお生き残り、時にはそれを糧にすらしてきたことは、ビートルズのもっとも卓越した、そしてもっとも過小評価されている功績のひとつだろう。そうしたすべてを通じてビートルズは一緒に、あるいはひとりで、対立し、あるいは一致団結して、その神話と同様に朽ちることのない音楽を作り上げ、守りぬいてきた。そうして自分たちの時代をもののみごとにカプセル化すると同時に、そのあとに来る時代を、ことごとく豊かにしてくれたのだ。

この記事は役に立ちましたか?

役に立った
0
残り:-21文字/本文:1647文字
この記事を買った人はこれも買っています
      この記事を収録している本
      この本で最も売れている記事
      レビューを書くレビューを書く

      レビューを書いてポイントゲット!【詳細はこちら】

      この本の目次