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ザ・ビートルズ 解散の真実
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「信じがたい悲劇」

『ザ・ビートルズ 解散の真実』
[著]ピーター・ドゲット [訳]奥田祐士 [発行]イースト・プレス


読了目安時間:3分
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 午後一一時前のニューヨーク。シンガー・ソングライターのジェイムズ・テイラーは、セントラル・パーク・ウェストの高級マンション、ランガム・ビルディングの自室にいた。テイラーはちょうどベッツィ・アッシャー──一二年前に彼をビートルズのアップル・レーベルと契約させた男の妻に、電話をかけたところだった。「彼女はロスアンジェルスにいて、こっちはなにもかもおかしくなってると文句を言っていた」と彼はふり返っている。

「チャールズ・マンソンのファミリーとのからみで、なんだかイカれた事件が進行中だったのさ。その時、銃声が聞こえてきた。警官は最初の一発を空砲にしているので、実際に撃ったときは、大口径の弾を撃つ音が矢継ぎ早に五回聞こえるという話を聞いたことがあった。弾倉を空にするためだ。聞こえたのはバン、バン、バン、バン、バン──五発の銃声だった。それでベッツィに、『おかしくなってるのはそっちだけじゃないぜ。たった今、警官が通りでだれかを撃つ音が聞こえたよ』と言って、電話を切ったんだ。そしたら二〇分ぐらいして、彼女から電話がかかってきた。『ジェイムズ、さっきのは警官じゃないわ』って」


 警官は数分で現場に到着し、ランガムからダウンタウンに一ブロック下ったダコタ・ビルディングの外で発生した銃撃事件のニュースが、全国のラジオを駆けめぐった。通信社のUPIが第一報を送った──「ニューヨーク市警は元ビートルズのジョン・レノンがマンハッタンのアッパー・ウェスト・サイドにある自宅で三度銃撃され、危険な状態にあると発表した。警察のスポークスマンは『容疑者は拘留されている』と語ったが、その他の詳細は明らかにされていない。病院の職員は『あたり一面に血が流れていました。みんな、必死で治療に当たっています』と語っている」


 ABC‐TVは、ニューイングランド・ペイトリオッツを迎えたマイアミ・ドルフィンズのホームゲームを中継する「マンデイ・ナイト・フットボール」の途中でニュース速報を流した。五分後、解説者のフランク・ギフォードが同僚のハワード・コセルをさえぎった──「試合なんてどうでもいい、ハワード。ブースにいるわたしたちが知っていることを伝えるべきだ」

「ああ、そうすべきだろうな」とコセルは物憂げに応じ、スポーツに取り憑かれた国では冒瀆とも取られかねない警告を発した。「忘れないでくれ、これは単なるフットボールの試合だ。どっちが勝ち、どっちが負けたとしても」。そして、スポーツの競技会をドラマとして伝えることに慣れている男ならではのもったいぶった口調でニュースを公表した。「信じがたい悲劇だ。ニューヨークのABCによると、ジョン・レノン、おそらくもっとも有名なビートルズのメンバーが、ニューヨークのウェストサイドにある自宅アパートの外で、二度にわたって背中を撃たれ、ローズヴェルト病院に急送された」。彼は木に釘を打ちこむときのように、ひとつひとつの単語をゆっくりと、注意深く発音した。「到着時には……すでに……死亡していた。もうとても、試合の中継に戻る気にはなれない」


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