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ザ・ビートルズ 解散の真実
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パワーの限界

『ザ・ビートルズ 解散の真実』
[著]ピーター・ドゲット [訳]奥田祐士 [発行]イースト・プレス


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 ポール・マッカートニー以外のメンバーはみんな、門のある村やロンドン南西部の隔離されたエリアにある「高級住宅地」の邸宅を購入していた。マッカートニーは女優のジェーン・アッシャーとの関係を通じて、アッパーミドルクラスのロンドン社交界にデビューし、傍系の王族、ビジネスマン、劇場界のエリートたちとのつきあいを学んだ。


 エチケットのトレーニングをほどこすほかにも、アッシャー家──具体的には、ポップ・シンガーになったジェーンの兄のピーター・アッシャー──は彼に、ロンドンで急速に開花していたオルタナティヴなアートの世界を紹介した。学生時代からモダンな演劇や詩を好んでいたマッカートニーは、嬉々としてエキゾティックなギャラリーや劇場のパトロン役を務めた。


 そのうちに彼はアレン・ギンズバーグやウィリアム・バロウズといったビート作家の知己を得たり、無調の電子音楽のコンサートに顔を出したり、ひそかにアンダーグラウンドの新聞やイヴェントに資金を提供したり、ピーター・アッシャーの友人のバリー・マイルズが運営するインディカ・ブックショップを援助したりするようになった。


 マッカートニーはじきに、有名人としての地位を利用すれば、大都会での暮らしのあらゆる側面にアクセスできることを知った。彼は自分の名前の持つパワーを利用して、普通ならポップという浮ついた世界など歯牙にもかけない有力な人物と会見した。

「ポールはよく、そういうことをやっていた」とバリー・マイルズは語っている。「自分から電話をかけて、『こちらはポール・マッカートニーです。夕食をご一緒しませんか?』と誘っていたんだ。たいていの人は快諾していた」


 そうやって彼が会おうとした人物のひとりに、長年、平和運動に尽力していた哲学者のバートランド・ラッセルがいた。「彼がラッセルに会ったのは、ロンドンのマスコミから、ヴェトナム戦争の真実が伝わってこなかったからだ」とマイルズは説明している。「となれば最高の権威に会うしかない。そしてポールの見る限り、その人物はラッセルだった」


 外部の世界に関与したいと考える人々の心を占めていた政治問題は、なにもヴェトナムを二分させた紛争ばかりではない。アメリカでは公民権を求める闘争が起こり、世界的な植民地支配体制や、南アフリカと隣国のローデシアにおけるアパルトヘイト打倒を目指す解放運動が展開されていた。より身近なところでは、ビートルズはイギリスの若者たちと同様に検閲を嫌い、法令集にある麻薬取締法を軽視していた。


 一九六一年以来、リヴァプールにある自分の会社、NEMSを通じてグループのマネジメントを手がけてきたブライアン・エプスタインも、彼らのスタンスには同調していた。だが彼は政治的な論争によって、一般層に対するビートルズの人気が危険にさらされることを危惧した。広報担当のトニー・バーロウが説明しているように、「ブライアンはビートルズに、自分たちの愛情生活、性的嗜好、政治、あるいは宗教を、メディアと論じないようにしてくれと頼んでいた」のである。

「けれども舞台裏でのビートルズ──特にジョンとジョージ──は時事問題全般、とりわけヴェトナムなどの問題について話し合っていた。一九六六年には記者会見の席でもヴェトナムを話題にするようになるが、これにはもうあれこれ指図を受けたくないという、エプスタインに対するアピールの意味もこめられていた」


 しかしマッカートニーですら、ビートルズの持つパワーの限界には気づいていた。「ぼくらになにができただろう? たとえば王室が主催する演奏会(ロイヤル・コマンド・パフォーマンス)で曲を紹介したあと、ぼくらがヴェトナムについて思っていることを、ありのまま伝えたとしよう。でもそれをやっちゃったら、ぼくらは頭がおかしくなったと思われたはずだ」


 あるいは宗教と音楽の相対的な人気について、まったくもって知的な見解を表明したジョン・レノンが身をもって味わわされたように、原理主義者(ファンダメンタリスト)たちの激しい憎悪の対象とされていたかもしれない。一九六六年八月一一日、最後のツアーに出たビートルズがシカゴに到着したとき、レノンは自分のグループのほうが「キリストより人気がある」としたコメントについて、釈明することを余儀なくされた。


 その論争があまりに白熱していたせいで、だれもシカゴの市民がもっとも関心を持っていた政治的危機について、グループに質問することを思いつかなかった。マーティン・ルーサー・キング牧師が率いる、人種によって隔離された住宅計画への反対運動である。彼らの沈黙を無関心と解した過激派の黒人活動家、リロイ・ジョーンズは、ビートルズを「ほかの世界から切り離され……白人しか見えていない人種」の典型だと非難した。彼はさらに「ビートルズが『ぼくらはみんな黄色い潜水艦で暮らしてる』とうたえるのは、彼らと彼らの人種がみんな、文字通りそこで暮らしている(できれば暮らしたいと思っている)からだ」とつけ加えた。


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