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ザ・ビートルズ 解散の真実
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アマチュアたち

『ザ・ビートルズ 解散の真実』
[著]ピーター・ドゲット [訳]奥田祐士 [発行]イースト・プレス


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 レコードの売り上げ以外にも、ビートルズには無限の収益を上げる力があるかに見えた。“マジック”・アレクシス・マルダスは口頭の命令に自動的に応える電話を発明していた。アメリカの電話会社、ATTは一〇〇万ドルで独占権を買い取りたいと申し出、本能的にマルダスのガジェットにはそれ以上の価値があると感じたビートルズは、その申し出を拒絶した。だがそれきり競り手はあらわれず、電話が製造されることもなかった。


 マルダスにはもうひとつ、それ以上に期待の持てるプランがあった。一九八〇年代の「ホーム・テーピングは音楽を殺す」キャンペーン、さらには二一世紀の違法ダウンロード問題を先取りするかのように、レノンとマッカートニーは、もし新たに登場したカセット・テープレコーダーが大量に流通しはじめたら、レコードの売り上げは大いに打撃を受けるのではないかと懸念していた。マルダスは録音済みの音につけ足すと、コピーを防止できる電子信号を開発した。「以後数年のうちに、世界中のどこで売っているレコードにもこの仕掛けが取りつけられ、ビートルズのふところに印税が入るようになる公算は極めて大きい」とコメンテイターのトニー・パーマーは指摘している。この発明が完成していれば、おそらくグループの音楽以上に金を稼ぎ出していただろう。だがマルダスはビートルズのためのスタジオ作りという、より急を要する仕事に集中する必要があったため、このプランはしばらく先送りにされることになった。

「アップルにはだれひとり、マネジメント能力のある人間がいなかった」とテイラーは説明している。「わたしたちはみんな、アマチュアだったんだ」。しかも彼らはただのアマチュアではなく、怪しげな薬物の影響を受けていた。

「デレク・テイラーのオフィスに行くと」と「ザ・ビートルズ・ブック」のショーン・オマホニーは語っている。「部屋中に大麻の煙が充満していた。ありえないと思ったね。息もできないほどだったから。デレクにビートルズの新しい写真が何枚かほしいと言うと、彼はもうろうと部屋の中をうろつき回ったあげく、ようやく何枚かの写真をくれた──わたしが以前、向こうに渡したのと同じ写真を。でもそれが、アップルという場所だったんだ」


 その夏、アップルと積極的に関わっていたビートルズのメンバーは、マッカートニーだけだった。組織立っていない組織の共同所有者という自分の立場を強く意識していた彼は、なにか手を打たなければと焦り、だが個人的に責任を背負いすぎるのはまずいとも考えていた。「ぼくはアップルに走りだしてほしかった。ぼくがアップルを走らせるんじゃなくて」


 問題はほかにもあった。レノンとの部分的な離別以降、彼はいちばんのよりどころにしてきた自信を喪失してしまったのだ。後年、彼は当時の心境を次のようにふり返っている。


まるで『不思議の国のアリス』の登場人物になったような気分だった。たとえば「さて、ここでなにをするべきなのか? そうか、支出のカットだ」と考えたとしよう。頭の中で思い浮かんだ時点では、すごく理にかなった考えなんだけど、それが口を突いて出るころには、まるで悪魔が喋ってるような感じになる。裏切り者の発言みたいな感じがしたんだ。だからぼくは自分のロジックに疑いをかけはじめ、金を儲けようとするのは怪しげな行為だと思うようになった。なにを言っても、自分が腹黒くなったような気がしていた。そうじゃないのはわかっていたのに。



 その騒々しい夏のあいだに、たまさか冷静さを取り戻した彼は、助けを求めるべきだと判断した。ビートルズはあえて、ブライアン・エプスタインの後継者指名を拒んでいたが、マッカートニーはこっそりと、ビジネス界の大物たちにアプローチしはじめた。いずれも、カウンターカルチャーにはいっさい理解がない人物だった。


 EMIのボス、サー・ジョーゼフ・ロックウッドと元保守党党首のオリヴァー・プールに相談した彼は、黒字化優先でイギリスの鉄道網に大ナタを振るった人物として悪名高いリチャード・ビーチングに会見した。ビーチングはなんなら自分がアップルに同様の措置を取ってもいい、とマッカートニーに申し出、だがぜひともフルタイムのマネージャーを探すべきだとアドヴァイスした。


 マッカートニーの同僚たちは、ほとんど助けにならなかった。「そのころにはもう、ビートルズにウンザリしていたからね」とハリスンはふり返っている。「そのまわりのことなんて、もっとどうでもよかったんだ」。スターキーはそもそも、一度もビジネスマンを志望したことがなく、一方でレノンは独自のテーマを追求していた。美術展や実験映画を、マッカートニーではなく、ヨーコ・オノをパートナーとして手がけていたのだ。


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